2016年12月30日

ハンズ・オブ・ラヴ 手のひらの勇気/FREEHELD

 ジュリアン・ムーア新作、となれば観ずにはいられない。
 小規模系映画かつドキュメンタリー作品を劇映画化という流れなれど、趣旨に賛同した彼女が出演を快諾したというおまけつき。 そりゃ彼女のファンなら観るしかないでしょう!

  ハンズオブラブP.jpg 愛があなたを強くする。
     ニュージャージー州、オーシャン郡
     一人の女性の願いが、全米の人々の心を動かした――。

 ニュージャージー州オーシャン郡で、有能なベテラン刑事として働くローレル(ジュリアン・ムーア)だが、警察という男社会で生きてきたが故に、自分がレズビアンであることは誰にも告白できないでいた。 刑事という立場上、“発展場”のようなところで相手を探すこともできない。 しかしある日、休日のバレーボール練習サークルでステイシー(エレン・ペイジ)という若い女性と出会う。 彼女はボーイッシュな外見で同性愛者であることを隠さず堂々としていた。 年齢も生活環境も違う二人だが、いつしか惹かれあい、ついには<パートナー制度>(同性婚は認められていないので、それが法的にできる精一杯)に申し込んで一緒に家を買って暮らすことに。
 が、幸せな日々はあまり長く続かず、ローレルが肺がんであることが発覚。 遺族年金の受取人をステイシーにしたい、そうすれば家のローンが払えるし思い出の詰まったこの家を彼女は手放さずに済む、と行政委員(FREE HOLDER)に訴えるローレルだったが、正式な婚姻手続きをとっていない相手には不可能、とあっさり却下されてしまう。
 ローレルの仕事上の相棒・デーン(マイケル・シャノン)が後押しするが、同僚をはじめ警察組織は表立って動くことはなく、だがローレルの訴えは同性愛者支援団体代表スティーブン(スティーヴ・カレル)の耳に入り、いつしか大きな運動に発展していくのだが・・・という話。
 意外に見たことがある人たちが沢山いて、そういう意味でも面白かった。

   よく考えたらスティーヴ・カレルとジュリアン・ムーアって『アヴ・アゲイン』で夫婦役してたなぁ。 それつながり?

 基本、シリアスタッチなのに、スティーヴ・カレルは結構やりすぎ演技になっていてちょっと困るんだけど、キュートだから仕方がない(スティーブンはユダヤ教のラビという設定なのだけれど、かぶっている帽子が毛糸の手編みで、ピンクで「同性婚成立を!」と縫い込んであるのもおかしいし、デーンに「俺のことをハニーと呼ぶな」と真剣に怒られても「じゃあね、愛してるわ〜」とさらりと返すところなど、いろいろお茶目すぎ)。
 どうしても後半の、訴えとその戦いがメインになってしまうので、ローレルとステイシーの関係描写は最低限なんだけれど、二人が惹かれあって信頼と愛情を深めていく過程はしっかりと描かれていたと思う。 ただ、スティーブンが持ち込む騒ぎより、二人の穏やかな時間のほうをもっと観たかった。
 でもいちばんの功労者はデーンである気がする。 相棒に長年ひそかに思いを寄せながら同性愛者だということに気づかず、でもそれを知ってからも彼女を支える気持ちはより強く。強面だけどいい男!、の見本のような人で、彼に誰かいい人紹介してあげて!、みたいな気持ちになる(不器用だけどいい男なので、きっといい相手と巡り合えることでしょう)。

  ハンズオブラブ2.jpg またマイケル・シャノンがいい人役ってのも珍しくて新鮮でした。 悪役、多いからなぁ。

 またスティーブンは「これを契機に同性婚成立の大きなムーブメントにしたい」という下心を一切隠さず、ローレルとステイシーを利用したいと堂々と言う。 それに対してローレルは「私が求めているのは平等に扱われること。 同性婚を認めてほしいとまでは思っていない」と毅然とした態度。 お互いを利用しつつも対等な関係、というところがいかにもアメリカだなと思いつつ、そう割り切れる強さをうらやましいと思う(勿論、互いに信頼関係があるからそう口にできるわけですが)。
 ゲイであることをカミングアウトして以来、あまり大作映画に出なくなった印象のあるエレン・ペイジですが本作ではプロデューサーも兼任。 思い入れのある物語なのでしょう。

  ハンズオブラブ5.jpg 『JUNO』の頃と変わってないな!、と思う部分もあれば「あ、やっぱり彼女も歳をとっている」と感じるところもあり・・・複雑な心境。

 同じ同性愛者でも男性より女性側への差別がきついと聞くので、彼女があまり映画に出なくなったのもそのせいなのかな・・・と感じていたから。 この映画自体も実話ベースですが、出演者の実話も重なってより現実味が。
 誰かさんのおかげで「個人のセクシュアリティー」がまたちょっと微妙な扱いとなってしまっている今の日本ですが、あたし自身はLGBTだという自覚はないけれど、LGBTではない、と自信満々に言える根拠はない。 なので同性婚賛成派(むしろ反対派の気持ちがわからない。 個人の幸福権を追求すれば当然の権利では? 公共の利益に反するとは思えないし、少子化が進むというのならそういう人たちは家族を持つことに人一倍憧れをもっている場合が多いので、養子をとる確率はかなり高くなると思う。 養子制度が充実し、中絶や虐待で消える命が救われるのならかなりの少子化対策になると思うのだが)。
 差別意識が彼らを追い詰めるのだということを、他の場合と同じように誰しも考えてみるべきだ。

  ハンズオブラブ1.jpg しあわせな時間は思い出として一生消えない。

 邦題は主題歌であるマリー・サイラスの曲名から。
 この曲が泣かせる、というか胸に詰まるので、エンドロールは視界がゆがんだ。
 あぁ、やっぱりジュリアン・ムーア素敵、と思うのでありました。

ラベル:映画館 外国映画
posted by かしこん at 23:59| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画 movie | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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