2016年10月20日

ライ麦畑の迷路を抜けて/ジョイス・メイナード

 図書館からやっと、<イベリア・シリーズ>の2作目が届きました!
 さぁ、だったらこっちを先に片づけないと・・・。
 以前、『夏の翳り』を買ったとき、訳者あとがきに、若き日の作者には、当時すでに隠遁生活を送っていたサリンジャーと同棲していた過去があり、そのときのことなどをまとめた手記も出ているらしいとあったので、図書館で探したらあったんですよ。

  ライ麦畑の迷路を抜けて.jpg しかも版元は東京創元社・・・やるなぁ。 表紙写真は19歳頃の作者。

 といってもサリンジャーとの関係がメインではなく、彼女自身の人生の回想録。
 ただサリンジャー(彼女はジュリーと呼んでいたが)との関係性が彼女の人生に与えた影響は大きい、というだけの話。
 いろいろ、痛いです。 娘を自分の思い通りかそれ以上に育てたい母親との関係(姉はそれがイヤでさっさと家を出てしまうが、妹たる自分は「かくあるべきわたし」のイメージをつくり上げてしまって、そこから抜けられない)や、ジュリーとの恋愛(というか支配というか)などなど。 作者ほどではないが、あたし自身にも当てはまる部分(過去に同じようなことをしている・・・)があって、読んでいてかなりつらかった。 だから余計気持ちがウツ気味になっていたのかもしれない。
 でも、母娘関係の問題の先には「母がどのように育てられたか」という問題も横たわっているので、数世代を見ただけではわからない。 しかし、娘の日記を黙って読んで、それに返事を書いて日記に挟んでおく母親って怖すぎるよね。
 それでも根深いのは、「自分が母親になったら自分の子供にはこんなことはすまい」と心に誓ったはずの作者が、実際の自分の子供に口うるさく干渉したり、よかれと思って本人の意志とは違うことにまで手を出してしまうあたり。 ジョイス・メイナードは脅迫観念症のようなメンタルな問題を抱えているようだが、娘は「私にはママのような才能はないから」と母親の完璧を求めるあまりの過干渉をブロックする術を心得ている。 こうして、連鎖が止まるんだなぁ・・・と感慨深い(娘さんが強い!)。
 アメリカの、「家族、万歳!」な価値観はいい部分もあるけれど、度が過ぎると足枷にしかならない(場合によってはもっとひどいこともある)。 彼女もまた被害者であり、ある種のサバイバーなのだろうか。
 彼女が姉との関係を修復していくくだりは、読んでてほっとしました。
 あたしも個人的にいろいろジタバタしましたが・・・今は結構楽です。 そうなっちゃったら、平気なつもりでいた(そう、その当時の自分は問題があることにも気付いていなかった)過去には、もう戻れないし戻りたくない。
 この手記を発表した後の彼女の暮らしが、より穏やかなものになっているようにと、つい願わずにはいられない。

posted by かしこん at 23:59| Comment(0) | TrackBack(0) | ☆ 読んじゃいました | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:


この記事へのトラックバック