2016年08月30日

静かな炎天/若竹七海

 前作『さよならの手口』からずいぶん早く帰って来た葉村晶シリーズ新作。
 今回は7月から12月までの半年の間に、彼女が巻き込まれた(基本は依頼だが、結構巻き込まれちゃってるよ、この人は)事件を描く連作短編。 おかげで鋭い切れ味が、尚更鋭くなっているというか、最後の一行の後味の悪さときたら!、というのが長編以上にある。
 まぁ、それが、葉村晶モノです。

  静かな炎天.jpg 今は8月なので彼女が暑さに文句を言うところには共感。
    しかし寒さに対する苦情は今のあたしには受け入れられない。

 気づけば、彼女との付き合いも20年以上なのである。 初登場作『プレゼント』では三人称だったような気がするからなんとなく初対面感が強かったけれど、『依頼人は死んだ』で一人称になってから一気に知り合い感が増し(といってもお友だちっぽいわけではなくて・・・)、『悪いうさぎ』でいつしか親近感がわく。 こっちの年齢が彼女に追い付いてきたので、同世代感が出てしまったせいかもしれない。
 そのあたりは『さよならの手口』にもあったけど、かつては普通にできた“ちょっとした無理”が、いまやったらあとをひくとかいった体力面の衰えや、若者とのジェネレーションギャップに唖然とするところとか。 本作でも彼女は四十肩に悩まされ、無茶な上司にこき使われてぐったり・げっそりしているところに電車で席を譲られて逆にショックを受けたり、かといってシニア以上の老練な女性陣には太刀打ちできず、という中途半端な年齢に四苦八苦している様がクールに描写されるのだけれど、その減らず口の中にあるものを思うと他人事とは思えない。
 と言っているとこのシリーズの魅力は探偵・葉村晶だけみたいだけど、そういうことではまったくない。
 長編であろうと短編であろうと、人間が持ってしまう悪意の底なし具合が容赦なく抉られて、人間不信になってしまいそうだ(富山店長の天然を通り越した「自分はまったく悪くない」っぷりにも時折殺意を覚えてしまう)。
 ネット検索と電話だけで解決できてしまう事件もあるけれど、基本葉村晶は身体を張り、満身創痍になりながらも謎に立ち向かう。 その決して逃げない姿勢が好きなのだ。 多分自分もそうありたいし。
 あぁ、短編集なのでサクッと読んでしまった。 また早い帰還が待たれる。

ラベル:国内ミステリ
posted by かしこん at 23:59| Comment(0) | TrackBack(0) | ☆ 読んじゃいました | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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