前作『おかあさんとごいっしょ』のあとがきで、「今回は娘視点だったので、次は母視点の物語を・・・」みたいなことが書いてあったので、新刊案内でこの本の存在を知ったとき、「ついに来たか!」と思い、ドキドキしながら開きましたら・・・認知症のお話でした。
75歳の母、最近どうも物忘れが激しいというかうっかりが多くなったなぁと思えば、突然彼女はハタチになって過去の思い出を現在形で話しだしたり、また元に戻ったり・・・それを息子視点で描くのがうまいなぁ、と思うわけです。 そして母の姿が絵としては精神年齢で表現される。
息子には妻子がいて、妻は「あぁ、これは」と認知症を早々に受け入れ、対策を考えるのですが、息子とその父(つまり夫)はつい、「これは一時的なちょっとしたうっかりで、すぐにまた元に戻るんじゃないか」と根拠のない希望に頼りがち。
勿論個人差はありますが、男の人ってだいたいそういうところあるよな〜、と(あたしは健康診断でひっかかり、二次検査の予約を入れて待合室で待っている間、「もしなにかひどい病気だったらどうしよう」と考えたら怖くなって検査を受けずに帰ってきてしまった男性を知っている。 バカじゃないかと思いました)。 早く結果を知った方が早く対策が取れるし、そもそも病気なのかはっきりしてないのにもやもやしている方が非生産的というか、むしろほっといて手遅れになったらどうするのか、とあたしは考えてしまうほう。
なので今作の息子の妻、えらい!、と思ってしまいました(夫や義父の行動・態度に不満はあれど、その表現は最小限にしてサポートに徹するあたり)。
しかし現在75歳の方にとっての青春とはどんなものだったのか。
この話では映画『ローマの休日』とオードリー・ヘップバーンに象徴させてますが、想像がつかない・・・。 親の子供時代とかあまり考えたことないように、自分よりずっと年上の方の若き日って時代の違いも考慮にいれる必要もあるけれど、わからない。
そういう方々とそんな会話をする機会に恵まれなかったってことだな、あたし・・・。
またしてもあとがきによれば、これは作者の義母の実体験からインスピレーションを受けたものとか。 その1ページに込められた言葉が深くて、あやうく泣きそうになった。