2016年03月19日

赤い右手/ジョエル・タウンズリー・ロジャース

 どうしても厚め・長めの本を買ってしまうことが多いあたし。
 しかし通勤時間小間切れの電車の中ではなかなか集中して読みづらい(仮に集中しちゃったら乗り換えポイントを見失う・・・)。 なので最近は短編集や、短めの長編を持ち歩くことが多くなりました。
 ちなみに、個人的な定義では“短めの長編”とは300ページ以内を指します。
 それがまた、1940・50年代の隠れたミステリがちょうどそれくらいの長さのものが多いんですよ! そんなわけで<ミステリ黄金期>後のあたりの作品をちまちまと読んでいます。
 が、ちまちまと読んでいられなかったのがこちら!

  赤い右手.jpeg 赤い右手 原著は1945年、初邦訳は1997年。

 ドクター・ハリー・リドルが思わぬ形で巻き込まれてしまった奇怪な事件を、リドル医師がしたためた手記という形で読者は読まされる、という構成。 普段から冷静沈着であるよう訓練された職業柄か、ドクター・リドルの言葉選びからは知性と落ち着きがにじみ出る(あとで27歳と知ってびっくり!)。 とはいえ、やはり動揺しているので思いつくまま筆は運び、全然時間軸に沿って語ってくれない。 ものすごいことを書いているんだけどそこに至る過程にはなかなか言及してくれない、と露骨な思わせぶりで読者を振り回す。
 「これって、もしや、あのネタか?!」とつい思わずにはいられなくて、余計に一字一句読み落とさずにはいられなくて、それを知ってか知らずかドクター・リドルは読者がドッキリすることをさらりと書き、こっちの妄想をかきたてる。
 勿論、作者としては計算通りなのでしょう、まんまと途中でやめられない術中にはまる。
 <一世一代の超絶技巧>と帯にありますが、時間軸ぐるぐるで読者を引きずりまわす手法がとにかくうますぎる! 筆の勢いとも感じられるけど、全部計算のような気もするし。
 “語りと騙り”というあたしが大好きな展開でした。 勿論、論理的に事件は着地しますし、<あのネタ>ではありませんでしたし、たたみかけるどんでん返しあります!
 なんかもう、この文体に酔っちゃうくらい素晴らしすぎる!
 なのに解説によれば、この作品を「バカミスの古典」ととらえている向きもあるようで・・・ふざけるな!!、とあたしは言いたい(あたしにとって「バカミス」とは、作中のなんらかの謎が解けた瞬間に「は?」と思わずあきれた声が出てしまうような作品のことであって、たとえばジャック・カーリイの『百番目の男』みたいな。 あれと一緒にするな!)。
 あと、やはり時代感と雰囲気が大事ですかね・・・。
 あぁ、気持ちよくだまされた。 というか、心地よいドライヴ感だった。

ラベル:海外ミステリ
posted by かしこん at 23:59| Comment(0) | TrackBack(0) | ☆ 読んじゃいました | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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