2016年02月23日

白鯨との闘い/IN THE HEART OF THE SEA

 『白鯨との闘い』というタイトル、予告編での(CGだとはわかっていても)巨大クジラのスペクタクルな動き、海洋生物好きとしては心躍らずにいられようか!、ということで、どうにかこうにか行ってきました。
 しかし原題にはクジラの文字はない! ちょっとイヤな予感もしてはいたのだよな・・・。

  白鯨との闘いP.jpeg 名著『白鯨』の、隠され続けた衝撃の実話。
    伝説の白鯨との死闘。 生き延びる為に、男たちが下した“究極の決断”とは――

 1890年、デビューしたばかりのメルヴィル(ベン・ウィショー)は次回作の構想のため、伝説の捕鯨船エセックス号のクルー最後のひとりにどうしてもインタビューがしたいと苦労の末、どうにか面会にこぎつける。 口の重い彼から1819年の航海の様子を聞く・・・という二重構造の映画。
 当時13歳だった若き見習いトーマス(トム・ホランド)の視点から語られる<エセックス号の悲劇>は、海の男たちの尊敬の念を一身に受ける一等航海士オーウェン・チェイス(クリス・ヘムズワース)と、ただ名家の出であるというだけでエリート育ちだがキャリアのないポラード船長(ベンジャミン・ウォーカー)の二人の物語であるという。 鯨油をどれだけ持ち帰るかという結果が問われる航海でありながら、この二人の関係がそれを左右する。
 そしてクジラの群れを追い求めて長い航海の果てに到達した南氷洋で、ついに“怪物”・白い巨大クジラに遭遇する・・・という話。
 エセックス号が出航するのはマサチューセッツ州のナンタケット島で、捕鯨の歴史を辿ると必ず出てくる重要な場所である。 昨今は反捕鯨の一翼を担うアメリカも、ついに自国の過去に向き合う時が来たか!、と思うと日本人として感慨深い(しかし、ナンタケット島で名家と呼ばれる出とか、たかだか三代続いたぐらいでなんでそんなに大きな顔ができるのか理解不能な面もあり。 海に出ればいざというとき役に立つのは経験と腕しかないことは、一度でも海に出たことがある人間ならばわかるはず)。 そんなわけでロン・ハワード監督の前作『ラッシュ/プライドと友情』では挫折知らずの天才レーサーだったクリス・ヘムズワースが、今回は理不尽さを身を持って押しつけさせられる役。

  白鯨との闘い1.jpg とはいえ、これまでのどの役以上になんかかっこいいぞ! ポスタービジュアルで損してる!
 そして期待のクジラですが・・・普通のクジラや、その手前で出会うイルカたちの動き、海の美しさなど大変心が洗われます。 その分、船員たちにいいかっこして見せたいポラード船長の浅はかさとか、出航前の捕鯨業界を牛耳る老獪なジジイどもの図々しさとか、人間のあさましさを見ちゃっているから余計にね!
 そして捕鯨(というか、鯨油取りというか)の過程も大変リアルで、「大丈夫? アメリカでヒットしなかったんじゃないの?!」と心配になるくらい時代考証に忠実。 やはり<歴史モノ>というバイアスがかかるからなんとかなるだろ、という期待があったから企画が通ったのかなぁ(実際、アカデミー賞にひとつもかすってないし、まだアメリカはこの事実を受け入れる準備ができていないのか)。
 で、肝心の“白鯨”ですが・・・巨大な尾びれが海中から盛り上がってくる感じ、それがたてる華々しい水しぶき(というか、波)のダイナミックさは素晴らしいですよ!
 ・・・でも、闘ってはいない(明らかに、負けている)。
 そもそもこの白鯨の存在が事実なのか、漂流の末に衰弱した彼らが見た幻覚なのかどうなのか、という点についてこの映画ではまったく追求していないし、ストーリー上都合のいいときに現れる存在になってしまっており、神秘性にどんどん欠けていくのがさみしい。

  白鯨との闘い3.jpg トーマスくんにとっては自分が見たものすべてが真実だということなのだろうけど。
 でも、そんな人間の太刀打ちできない存在が現れることによって、つまらないエゴで対立していた人間たちもそのむなしさに気づく・・・というのはやっぱり王道なんですかね(そうならないと気づかないのね・・・)。
 で、どうやらこの映画最大のテーマはいちばん最後まで伏せられているのだけれど・・・あの時代で船が大破して小さな救命ボートで長期間漂流となれば“問題・タブー”は当然推測できる内容だし、21世紀の現代においては倫理的な決着も一応ついています(勿論、個人の信条の自由はありますが)。 だからそこまで引っ張られても・・・困るんだけど、という印象に。 捕鯨・怪物と漂流・禁忌、という三本柱がうまくかみ合わなかったかなぁ。
 逆にきっちりかみ合っていれば、ものすごい傑作になったのでは。 惜しい。
 オーウェンの盟友、という役柄のキリアン・マーフィが妙に年齢不詳だったり中性的な美しさを漂わせていたりと、男ばかりの船の上の描写でも意外にも男臭さは皆無。
 海の男たちの美しさを前面に押し出しているので飽きずに観ていられたのかしら、という効用もあり。 なによりメルヴィルがベン・ウィショーだしね!
 残念だな、と思う部分もあるものの、ダメ映画と切って捨てることももったいない。
 なんとも不思議なポジションにある映画だった。

ラベル:映画館 外国映画
posted by かしこん at 23:59| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画 movie | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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