2016年02月21日

ブリッジ・オブ・スパイ/BRIDGE OF SPIES

 あ、またスピルバーグがアカデミー賞獲りの映画をつくってる!、というのが予告を観たときの正直な感想。 でも最近、あたしはスパイ小説を読むようになってきているし、東西冷戦下の地味ながら実は白熱しているスパイ合戦に興味はある。 おまけに例によって実話ベースだという。 この際スピルバーグ作品であることは無視、純粋にその時代に踏み込むつもりで観てみよう、と思った。

  ブリッジオブスパイP.jpg その橋を踏み外せば世界が終わる。
    冷たい戦争を止めたのは、ひとりの男のやさしさだった。

 とはいえ、実は観たのはだいぶ前なので、細かいところ忘れています(今回、記事を書くために写真を集めていて、思い出してきました)。
 米ソ冷戦真っただ中の1950〜60年代。 ソ連のスパイと目されたルドルフ・アベル(マーク・ライランス)はアメリカ当局に捕えられるが、ソ連とは違うことをアピールするために裁判にかけられることになるが、弁護士が見つからない。 そこで白羽の矢が立ったのが敏腕弁護士と名高いジェームズ・ドノヴァン(トム・ハンクス)。 しかし彼の専門は保険関係で、そんな仕事は引き受けられないと断るものの、弁護士倫理に負けて引き受けることに(そもそもスパイ弁護の専門家も経験者もいないのだ)。 敵国ソ連のスパイを弁護する彼もまた国民の敵と見なされ、ドノヴァンの家族も肩身の狭い思いをすることになる(それがわかっていたから家族ははじめから反対していた)。
 が、被告人には弁護士を立てる権利があり、弁護人を引き受けたならば被告人に誠実に対応するのが務め。 いつしかドノヴァンとアベルの間には信頼関係が芽生えていた・・・という話。

  ブリッジオブスパイ3.jpg 真ん中がアベル。
    失礼ですが、こんな人が有能なスパイだと信じられるか?

 5年後、今度はアメリカがソ連に送り込んだ偵察機が撃墜され、乗組員がソ連に拘束される事態が起こる(いわゆる“U−2撃墜事件”)。 CIAは拘束されているアメリカ側のスパイ・パワーズ(オースティン・ストウェル)とアベルとを交換しようと画策、その交渉をドノヴァンに一任すると言い出す・・・という話。
 冒頭、鏡に映る自分を見ながら、更に反転させた自分をキャンバスに描いているアベルの姿に「あぁ、この人は最終的な目的のためにはどんな地道で時間のかかる方法でも音を上げずに最後までやり遂げる人だ」というのがわかる。 そして画家というのがあくまで隠れ蓑であったとしても、絵を描くことに彼の許される範囲で愛着を持っている。 なんともいえない、「フツーの、むしろちょっとしょぼくれたおじさん」的風貌が、まさにリアルなスパイ、という感じ。
 対するドノヴァンは、久し振りにやってきたトム・ハンクスらしいトム・ハンクス−人情味にあふれ、常に正義と信条に生きる男。 ともに愛国者であり自分の職業に忠実という意味で、この二人はよく似ている。 そりゃ、友情も生まれますよね。

  ブリッジオブスパイ1.jpg 全体的にグレーのトーン。
    それがこの時代の色ということか。

 人質交換のため舞台がベルリンに移ってから、画面はますますダークに、そして雪も相まって寒々しくなるのだけれど、それがなんかすごくいい雰囲気だったなぁ。 結構えげつないことが展開されているのだが、どこか乾いたユーモアが全体を包んでいるようで、とてもスピルバーグらしくなかった(エンドロールで脚本がコーエン兄弟になっていたので納得。 というか、コーエン兄弟が監督したらどうなっていただろうか、というのにも興味ある)。 ユーモアがありつつも、ときどき<その先>に待っているかもしれない恐ろしい予感でそれをぶった切るあたり、まさにコーエン兄弟っぽい(あたしは何度、心の中で「ひえーっ」となっただろうか)。
 でも最悪の予感は、エンディングの“その後”コメントに救われた。 あぁ、よかった。
 国境が陸続きの場合、そこが橋になっているというのは『エロイカより愛をこめて』でもおなじみのイメージ。
 そこでスパイたちの橋渡しをする、というタイトルはダブルミーニングでしょうか。

  ブリッジオブスパイ2.jpg あぁ、ベルリンの壁。

 何度か繰り返されるドノヴァンとアベルの会話、
 「不安じゃないか?」
 「なってどうする?」
 は、最後のほうは合言葉というか、掛け合い漫才のようになっている面白さ。 それが、互いを理解していく過程の象徴であるように見えた。
 それにしても・・・冷戦って、実は当事者たちにとっては実際の戦争以上に厳しいものだったのではないか?、という疑念が消えない。 国と国(現代においては必ずしも国という体裁ではない場合もあるが)が覇権を争う限り、そういうものは消えないのだ・・・あぁ、恐ろしい。

ラベル:映画館 外国映画
posted by かしこん at 23:59| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画 movie | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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