2016年02月18日

神々の山嶺/谷口ジロー

 最近よくやっている映画『エヴェレスト 神々の山嶺』の予告やCMを見ていて・・・、「あれ、こんな話だったっけ・・・?」と疑惑が湧き起ってきたのだが、夢枕獏の原作をまたいちから読むのは時間がない。 と、そんなときに、マンガ版が新装版で(しかも3冊でまとまって)発売されるというではないか。 一回読むのを悩んだやつだし(そのときは文庫版で、冊数ももっと多かった)、これはいいチャンスでは!
 サイズも大きめだし、山とか風景が描かれている内容なら文庫サイズよりはこちらの方がいいよね、という判断もあり。

  マンガ神々の1.jpg そしたら、一冊がすごく分厚いんだよね・・・。
 持ってみたらその分厚さに比べると思ったよりも軽いのが救いなのだけれど。
 マンガ読むのは結構早いあたしですが、これはなかなか進まなかったよ・・・それだけ一冊が厚いということですが。 でも、小説版を読んだ時のことをつぶさに思い出しました(ということはかなり原作に忠実ということか)。

  マンガ神々の2.jpg 勿論、“絵”ならではの表現・構成はありますが。
 で、すぐに予告編での違和感の正体に気づいたのですが・・・「そうか、映像に長谷恒男がいないからか!」。 羽生(阿部寛)と深町(岡田准一)しか出てきてなかったからでした。
 でも彼のことまで描くと一本の映画として常識的な時間では終わらないであろうし・・・そこをカットするとなるとこっちもカットしなきゃいけなくなるし、じゃあ一体どこをメインとして使うのか?、と思わず脚本家のような視点で途中から読んでしまいました(そして羽生の少年〜青年時代は誰がやるのか、とかもね)。
 あと、予告編で気になっていたのが「世界的ベストセラー、山岳小説の金字塔、ついに映画化!」ってところ。 世界的ベストセラーって、その“世界”が指しているのはどこ?

  マンガ神々の3.jpg 夢枕獏と谷口ジローの対談が巻末についていたのでわかったのですが、<世界的ベストセラー>なのはマンガ版の方でした。
 フランスで大ヒットして、そこからヨーロッパ各国に翻訳され、最終的に英語版も出たとか。 予告の佐々木蔵之介のワンカット、このマンガのカット割りと構図が同じなんだけど?、と気づいたことに合点がいくが、そうなると、原作(というか映画が参考にしたの)はどっちなんじゃ!、という気持ちになってくる。
 ま、映画についてはともかく・・・。
 作中でも語られていることだけれど、「山に自分のすべてをかける」という生き方がもう古いというか、それが許される時代ではもうない、ということが2016年現在しみじみとわかります(劇中設定は1970年代ですが)。 未開の地、というものがほとんど存在しない以上(人間が実際に入ったことがない場所でも、衛星写真でだいたいわかる、という点で)、そしてフロンティア精神が必ずしも褒め称えられる状況ばかりではない、という世の中になってしまった以上、いたしかたのないことかと。
 単に「昔はよかった」ではなくて、「そういう時代があったんだ・・・」とある種の戦慄を感じさせる、という部分が、この作品の優れたところではないかと思います。
 ただ、「何故山に登るのか」という問いに対する答えはなく、そんな問い自体が無意味であると言わんばかりの生きざまには、門外漢にはもう黙って見ていることしかできないです。

ラベル:マンガ
posted by かしこん at 23:59| Comment(0) | TrackBack(0) | ☆ 読んじゃいました | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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