2015年12月26日

ローマに消えた男/VIVA LA LIBERTA

 イタリア映画といえば最近は「私の人生と家族と友情と恋愛」みたいなのか「バックには常にマフィアがいる、というイタリアの闇」的な映画ばかりだったので(たとえばジュゼッペ・トルナトーレ的ミステリは『鑑定士と顔のない依頼人』以来ご無沙汰な気がするし、あぁ、『題名のない子守唄』は素晴らしかったなぁ)、政治を扱いながら予告ではコメディ色が強い印象を受けたのです。 邦題はサスペンスっぽいけど、原題“VIVA LA LIBERTA”=「自由って素晴らしい/自由万歳!」ってところだろうし。

  ローマに消えた男P.jpg あなたが 愛したのは、 どちらの「自分」だったのか――消えた”ことで手に入れた人生の休息  “現れた”のは25年振りの恋人と、一人の男
  (↑ 最初このチラシを見たとき、上の男の人は絶対マイケル・ケインだと思っていました)

 イタリア最大野党の党首エンリコ(トニ・セルヴィッロ)は低支持率に悩んでいて、打開策を見い出せなかった。 彼の側近であり参謀でもあるアンドレア(ヴァレリオ・マスタンドレア)はエンリコの様子が少しおかしいことにわずかに気付いていたが、野次を飛ばされたりされたせいだろうと思って深く考えていなかったが、エンリコはある朝突然姿を消し、重要な会合に現れなかった。 彼の家には「しばらく一人になりたい」というような書き置きがあり、ひとまず緊急入院をでっち上げたアンドレアはエンリコの双子の兄ジョヴァンニ(トニ・セルヴィッロ:二役)を探し出し、急場をしのごうとする。 しかしイタリアでも有数の有名政治家が双子であることが何故知られていないかといえば、ジョヴァンニは妄想性の精神病歴があり、ずっと専門の施設にいたから。 最近になって退院したが、薬の服用は続けなければならないという医師の指示が出ている。
 ジョヴァンニは人を煙に巻きながら相手を魅了する天才で、必死で作ったアンドレアの想定問答集をゴミ箱に投げ捨てて、「真実を語ろうじゃないか」とマスコミの前でも歯に衣着せぬ物言いで注目を浴び、彼の演説は拍手喝采で迎えられる。
 その頃、エンリコはフランスにいて、25年前にカンヌで出会った昔の恋人のダニエル(ヴァレリア・ブルーニ・テデスキ)のもとに身を寄せており、誰にも注目されない静かな生活を送っていた・・・という話。

  ローマに消えた男1.jpg ウツ気味の党首エンリコ本人。 髪の毛をちょっと黒く染めているのが見わけポイントのひとつ。
 『イル・ディーヴォ 魔王と呼ばれた男』で怪物的な存在感を発揮していたトニ・セルヴィッロが、今回は一人で躁(ジョヴァンニ)鬱(エンリコ)病患者を演じているかのような自由自在感がそりゃーもうあやしさ全開。 実は『湖のほとりで』の刑事さんでもあると知り、驚愕! 確かに言われてみると同じ人!
 あの役にはあやしさなんてなかったのに!
 カメレオン俳優って世界各地にいるんだな、と納得。
 ジョヴァンニの言っていることは「これって野党だから成立するのかな? いや、与党でも一緒か?」と思わず悩んでしまう<口当たりがよく含蓄にあふれているっぽいが、中身はまったくない>内容。 なのに人々は熱狂する。 ちょっと狂っているぐらいのほうが今の世の中はうまく渡っていけるという皮肉なのかしら。 でもジョヴァンニはとても饒舌であるが故に心の中はまったく見えず、まわりの人たちが彼に心酔していけばするほど「この人、怖いよ〜」っていう気持ちになる。
 でもジョヴァンニの得体の知れなさを緩和するのはアンドレアの存在。
 政治家のブレーンをやっているくらいだから彼だってそれなりに腹に一物ある人物なんだろうけど、なんだか彼が普通の人に見えてしまうのですよね。 アンドレアがエンリコの振りしたジョヴァンニの言動にハラハラしたり、でもジョヴァンニがうまいことやればしてやったりとニヤニヤしたり、やたらキュートなのです。 攻めと受け、ツッコミとボケ、といった奇妙なコンビ性がとても面白い。

  ローマに消えた男2.jpg 奇妙な同盟関係というか、共犯関係というか。
 逆に、必要最小限しか喋らないエンリコの想いは透けて見えるよう。 わかりやす過ぎる!
 しかしそんな<入れ替わりコメディ劇>はラスト近くで雰囲気が一変し、突如不条理劇になる。 えっ、どういうこと?!、と一瞬パニックになるくらい。
 自由になったのはエンリコなのかジョヴァンニなのか。
 あ、やっぱりミステリ・サスペンステイストの邦題は間違ってなかったか!
 なんかすごく面白かったぞ。

ラベル:映画館 外国映画
posted by かしこん at 23:31| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画 movie | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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