2015年11月24日

ヒトラー暗殺、13分の誤算/ELSER

 ドイツ映画界からは定期的にヒトラー関連映画が出てくるような・・・まぁ、日本だって似たようなものか。 時間が経つにつれ描けることも増えてくるし、自虐史観以外の視点も出てくるし、逆に創作の余地が出てくるということもあるのでしょう。
 しかしこれは事実ベースらしい。 最近まで公式にも認められていなかった人物の存在を『ヒトラー 〜最後の12日間〜』を撮ったオリヴァー・ヒルシュビーゲル監督はいろいろ調査中に知ったのであろうか。

  ヒトラー暗殺P.jpg あの時、目を開けていたのは僕だけだった。
    ヒトラーが最も恐れた暗殺者は、平凡な家具職人だった。

 1939年11月8日、恒例のミュンヘン一揆記念演説を行っていたヒトラーは、濃霧で飛行機が飛び立たないため列車で移動せざるを得なくなり、いつもより演説を13分早く切り上げることに。 彼が去った会場でその後、仕掛けられていた時限爆弾が爆発、聴衆や警備の者たちに死者・けが人が多数出た。 早速調査を開始したクリポ(刑事警察局)だが、爆弾は精密かつ確実で仕掛けられた場所などから単独犯説を主張するものの、秘密警察ゲシュタポ側としては単独犯などではありえない、チャーチルの指図ではないかと英国のスパイが入り込んでいると考えた。
 が、逮捕されたのはドイツ人の平凡な家具・時計職人、ゲオルグ・エルザー(クリスティアン・フリーデル)36歳。 彼は特定の政党や主義主張に加担したこともない、ただの自由を愛する男であった。
 邦題が『13分の誤算』になっているので、そこらへんのタイムリミット的スリリングを期待すると肩すかしにあう。 原題が“ELSER”となっているように、<人間:ゲオルグ・エルザー>を明らかにしようとした伝記映画、という位置づけの方が近いかも。

  ヒトラー暗殺1.jpg 勿論、ゲシュタポの洒落にならない尋問描写が出てきて観ていて大変気分が悪くなりますよ。

 この映画のポイントは、1939年に、まだ多くのドイツ国民がヒトラーやナチスの危険性に気づいていなかった時期にエルザーが暗殺計画を実行していた、ということ。 何故彼だけがその予兆に気づけたのか、を解き明かす内容であるともいえる。
 エルザー本人は職人としていい腕を持ってはいるけれど、女性関係にはだらしないし、ときには仕事をさぼって友人たちと海に行き音楽に興じるような勝手気ままな生活を送っている(勿論、友人関係に人種その他は関係ない)。 誰よりも自由に生きている男だからこそ、自由が締め付けられる気配を誰よりも早く察知した、ということなのかもしれない。 坑道のカナリアのように。

  ヒトラー暗殺3.jpg 彼がもし自分の友人だったら、気まぐれすぎて付き合いきれないかも。

 自由を愛し、諍いを好まない男が究極の手段:テロに手を染めていく過程はきっと予測なんだろうけど、でも考えることと実際に実行に移すまでにはかなりの壁があると思うので、彼がその壁を乗り越えてしまったと考えられる決定的なシーンとか、動機があたしには読み取れなかった・・・そこがキモだと思うんだけどなぁ。
 このままでは危ない、と多数の人が気づくためには一国民としてどうしたらいいのか。 そこが今後の国際社会において自国の舵取りを誤らない処方箋となるであろうに(ただし、民主主義国家に限る)。
 それに歴史に言及するには基本的には後出しじゃんけんなんだけど、現在ひたすら<テロとの戦い>が言われている世の中で、エルザーがしたことは間違いなくテロ行為なわけで。 「とにかく相手がヒトラーであればなんでも許される」のか?
 なんか納得できない・・・。
 エルザーの単独犯説を自ら検証したクリポ長官アルトゥール・ネーベ(ブルクハルト・クラウスナー)の垣間見える誠実さが救いだったけど、彼の迎えた最期はひどすぎる・・・。 だったらゲシュタポの人のもっと悲惨な最期も是非観たかったよ。

ラベル:映画館 外国映画
posted by かしこん at 04:22| Comment(1) | TrackBack(0) | 映画 movie | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
かしこん様<img src="/image/emoji/103.gif" border="0"><br>
<br>
お忙しい中、コメントを頂き本当にありがとうございます<img src="/image/emoji/108.gif" border="0"><br>
とてもわかりやすい解釈で納得出来たと同時に、<br>
読み物のように楽しく拝見させて頂きました。<br>
とくに〈解釈1〉のラストの主人公の安堵の表情<br>
対する意味合いがなるほと〜と、すっきり消化出来ました。<br>
なんとなく解ってても、言葉で整理することって難しいのに、<br>
ここまで読み込み、自分の言葉でアウトプット出来ている<br>
かしこんさまを尊敬します。<br>
<br>
頂いた〈解釈1〉のコメントだけ、公開になっており、<br>
うっかり公開をクリックしてしまったのですが、大丈夫<br>
でしょうか??(せっかちでクリックを早押しして<br>
しまいました<img src="/image/emoji/113.gif" border="0">)<br>
せっかく非公開でとご配慮して頂いたのに、申し訳ございません<img src="/image/emoji/82.gif" border="0"><img src="/image/emoji/113.gif" border="0"><br>
<br>
私の記事のほうに、『複製された男の関してネタばれがあります』<br>
等追記されて頂いたほうがいいかな……とか考えております。<br>
<br>
もうすぐ師走で、いつも以上に忙しくなるかと思いますが、<br>
お風邪などひかれまぬよう、どうぞご自愛ください<img src="/image/emoji/00.gif" border="0"><br>
いつか旧マドマドでお会いできる日を夢見ております<img src="/image/emoji/10.gif" border="0">
Posted by ヤマちゃん at 2016年12月04日 13:16
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