2015年08月20日

フレンチアルプスで起きたこと/TURIST

 わー、雪だ〜、ということでよろこび勇んで観にいく。
 フレンチアルプス、といいつつ実はスウェーデン映画だったのも意外なヨロコビ。
 舞台はあるフランスのスキーリゾート地。 夫・妻・娘・息子という典型的家族構成のスウェーデン人一家がバカンスにやって来た。 一日中スキーを楽しみ、ひとつのベッドで仲良くぐったり眠る、という理想的な休暇のはずが、2日目の昼食のために景色のよいテラスでテーブルを囲んでいると人工的に起こした雪崩が轟音を立てて目の前で起こる。
 それが思いのほか大きなものだったので、テラスにいた人々はパニックに。 結果的に大事には至らなかったものの、夫トマス(ヨハネス・バー・クンケ)の取った行動のため、家族の“絆”はバラバラなってしまうことに・・・という話。

  フレンチアルプスで起きたことP.jpeg 僕が、君たちを守るから・・・
   スウェーデンからやって来た幸せな一家をおそう突然の危機。
   バカンスは5日間、彼らの運命は?

 ヨーロッパのスキーリゾート地って、設備とかすごいなぁ、とまず度肝を抜かれる(雪国出身のくせにスキーは学校の授業でしかやっていない・ウィンタースポーツあえてする気がないあたしには、知っているスキー場の印象は本、ドラマか映画しかないけれど、こんなのはこれまで全く見たことがない)。 特に息子が行った男子トイレ(子供用?)の美的センスと性能の融合は、さすがヨーロッパ!って感じ。
 スキー場からホテルへの帰りがチューブ状の通り道になっていたり、リフトのゴンドラもちょっとお洒落だったり・・・。 ホテルの客室も、通路からはすべて同じに見えるけど中は何室あるのか、というくらいの広さ(洗面台の鏡の広さもすごいけど、これは映画的演出のために必要だったような気もするし、ロケ現場がそうだったからこその追加演出なのかも)。
 スキーはしないけど、単純にリゾートホテルには泊まってみたいかも!
 そんな素敵ホテルを擁するスキー場なので、常にスキーとお客に問題が起こらないように積雪量も適度にコントロール。 人工的に雪崩を起こす設備もばっちり。
 勿論、自然は完全にコントロールできないので、不慮の事故は起こり得るんだけど、事故の程度の具合を軽減させることはできるだろう(特にホテルのすぐ近くならば)、と雪国育ちのあたしとしては思う訳なんですが・・・(あ、規定コース外とか山スキーとかだったら無理ですよ)、このお父さん(含む他の客)には無理だったようで。

  フレンチアルプスで起きたこと1.jpg テラスにまで迫りくる雪崩。
   多分あたしなら「おーっ」っと言いつつその場に座ってるな(料理が来ていたならば皿の上をナプキンで覆いたいところ)。
 ただ、このシーンは短時間に一気にたたみかけるような演出なので、あえて観客にもパニックを伝染させようという意図が見える感じにはなっているんですけどね。
 おかげで、その後のなんでもないシーンですらも「何かが起こるのではないか」という不穏な空気がすぐそばにある感じで、この映画のジャンル分けを難しいものにしている(ジャンル分けをする必要は別にないのだが、「どういう映画?」と人に聞かれて一言では答えられないという・・・)。
 映画の中的にいちばんの問題は、夫トマスが自分のした咄嗟の行動を覚えていないこと(覚えていないどころか完全否定する)。 最初は認めたくなくてなかったことにしたいのかなと思っていたのだけれど、どうもほんとに覚えていない・もしくはそんなことはなかったと思い込んでしまっているらしい。 ある意味、男性的な脳の防御機能である。 しかし妻エヴァ(リサ・ロブン・コングスリ)は典型的女性脳で、完全に覚えているしそのときの感情も一緒に記憶に。 子供たちもその場にいて見ているから、一晩眠って詳細がわからなくなっても、両親の間にあるぎくしゃくしたものを感じ取って神経過敏に。 あぁ、これはつらい。

  フレンチアルプスで起きたこと2.jpg 揃って眠ることはもうない。
 トマスが認めて謝罪すればすんなりおさまる話なのに、それができないから話がこじれ、エヴァの気持ちのもやもやはますます募り、子供たちに伝染する。
 うーむ、小学校以下?の子供を持つ夫妻にとっては最も避けたい状況ではないだろうか。あたしには直接関係ないシチュエーションですが「トマス、何故認めない?」とついイライラしちゃったので、お子様のいるご夫婦などは結構身につまされるのではないか(女性側は過去のいざこざなどを思い出してしまって夫婦喧嘩のもとになるのではないか)、と気になってしまうほどのリアリティを醸し出しております。

  フレンチアルプスで起きたこと3.jpg だから、友人の部屋で「この人、私たちのこと見捨てたのよ」とあっさり爆弾発言するエヴァ。 そんなこと言われた方も迷惑・・・。
 なんとなく不思議だなぁと思ったのは、スウェーデン含む北欧は人権意識も高いし、当然男女同権の考えも進んでいるだろうに、「男が女(子供も含む)を守る」という意識もまた強く刷り込まれているのだ、ということ(これはレディファースト的観点?)。 トマスの記憶捏造は自尊心保護のためだったんだろうけれど、エヴァは容赦なくそれを打ち砕く。 それは「何故認めてくれないのか」という怒りからくるものなのだけれど、それ自体が実はかみ合ってないという恐るべき心理スリラーなのでした。
 そんな二人がいかにして関係を修復するのか・・・それは観てのお楽しみですが、ラストシークエンスから見てとるにエヴァの恐怖心は完全に取り払われたわけではなく、この先の日常生活でもトマスは夫として、父として更にがんばらなければいけないことを象徴しているようでした。
 でも、ある調査によれば「とっさの危険を感じたとき」なりふり構わず逃げるのは女性より男性の方が圧倒的割合で多いそうです。 きっと本能的なものなんでしょうね(男は遺伝子を守り、女は家や子供を守る)。 現代社会においてはいかにして本能を抑え込み、理性的に行動するかが求められているから、ほんのちょっとしたきっかけで責められ、居場所を失くす危険がありますよ、という警告の映画だったのかな、これ。
 あたし個人的には、雪を満喫できましたよ。

ラベル:外国映画 映画館
posted by かしこん at 23:59| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画 movie | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:


この記事へのトラックバック