2015年07月20日

悪党に粛清を/THE SALVATION

 マッツ・ミケルセン主演で西部劇?! しかもデンマーク・イギリス・南アフリカ制作というアメリカ関係ない映画となれば、ますます気になるじゃないですか。
 というか、マッツ・ミケルセン主演というだけでまずあたしは観たいというか、観ますけど(あまり西部劇は個人的に得意ではないんだけど)。
 1870年代のアメリカ。 祖国デンマークで兵士として戦ったジョン(マッツ・ミケルセン)と兄のピーター(ミカエル・パーシュブラント)は、戦争に嫌気がさし、新天地を求めアメリカに移住して7年がたった。 ようやく生活の足固めができ、祖国から妻子を呼び寄せることができるように。 が、感動の再会も束の間、ならず者たちによって妻子を奪われてしまったジョンはならず者たちを全員殺す。 しかしそのならず者のひとりはジョンの家のいちばん近くにある町の用心棒を名乗る無法者のリーダー・デラルー大佐(ジェフリー・ディーン・モーガン)の弟だった。 弟を殺した者を差し出さなければ町の住人を殺す、と脅された保安官は殺害犯を探す。 孤立無援となったジョンとピーターは・・・という話。

  悪党にP.jpg 神はなぜ、復讐という業を背負わせたのか

 ジョンの妻子が乗ってくる機関車がやってくるシーンから、「おぉ!」と思わず声が漏れそうなほど時代感たっぷり。 風に乱れる砂埃まみれの髪もリアル。 音楽も極力使わず、生活音や日常の音がそのまま響くような感じもなにもかも、「アメリカがつくった西部劇ではありません!」という宣言のような。
 全体的にダークだし、復讐という大義名分はありながらもジョンはヒーロー然としてないし、ならず者たちが死んでもまったく爽快感はない。 物語に意外性はないけれど、それでも息を詰めるように見入ってしまったのは、アメリカ映画だったら絶対死なないだろうキャラクターが死んでしまうなどの予定調和の無さと緊迫感、そして侍のように黙して語らないマッツ・ミケルセンのせいでありましょう。

  悪党に5.jpg 髪が長いから最初気づかなかったけど、お兄さんは『未来を生きる君たちへ』のお父さんではないか。 デンマーク実力派役者そろい踏み!

 一方で、デラルー大佐に逆らえず、仕方なしに仕事を手伝っている(しかも弟の妻にさせられていた)マデリン(エヴァ・グリーン)はアメリカ先住民との戦いの折に舌を切られたということで、一言も話せない役柄なれど目力のみで多くを語る絶世の美女。 彼女もまた生活は保障されているとはいえ、デラルー大佐に一矢報いたい一人。 この二人がいつ共闘するのかしないのか、というのもハラハラする要因。

  悪党に3.jpg 目で人を殺すことができれば、彼女には容易そう。

 悪役のデラルー大佐も先住民との戦い前はいい人間だったという保安官の言葉もあり、善悪をきっちり分けられない複雑さが北欧的です。
 監督のクリスチャン・レブリングという名前、微妙に聞きおぼえが・・・と思ったら、あの奇作『キング・イズ・アライヴ』の人! デンマークのドグマ95に名を連ねたおひとりでした。 なんだかんだいってみなさん、才能あふれる方々だったのですね。
 原題の意味は“救済”
 たとえ人を殺しても自由を勝ち取ることが過去からの救済になりうるのか、かつてとは違う自分になってしまった自分から逃れるためには死が救いになるのか、他にも宗教的な意味合いとかがいろいろあるのでしょうが・・・やはり「よく考えないとわからない」宗教観の薄い日本人には“復讐”を前面に押し出した邦題のほうがインパクトがあるのは確かかな。
 ラストシーン、ただの荒れ地に石油開発の手が入っていく過程を二重写しにする場面は『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』へ繋がる時代の流れというか、アメリカの歴史の一部である、というものを暗示しているというか・・・法と秩序が機能している世の中っていいなぁ、としみじみしてしまうのでした。

ラベル:外国映画 映画館
posted by かしこん at 23:59| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画 movie | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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