2015年06月28日

駆け込み女と駆け出し男

 先日仕事場にて、別部署の方ではあるが(パワハラお局様のことで)ずっとあたしとEさんのことを心配してくれていたIさんとたまたまお昼休憩が一緒になる。
 「あ、昨日、『駆け込み女と駆け出し男』、観たんですよ」と報告。
 「それって大泉さん出てるやつ? 新聞かなんかで映画評見て面白そうって思ってたわ。 お目当ては大泉さん? 私もあの人、好きだわ〜」

  駆け込み女と駆け出し男6.jpg 大泉さん、長台詞がんばってましたよ。
 「大泉さんも好きですけど、監督さんが好きなんですよね〜」
 「あぁ、なんか、その監督さん、かしこんさんが好きそうって気がしてた」
 えっ!、そんな話、前にIさんにしたっけ? あたし、見抜かれてる?、とドキドキする。 好みというものは、本人が意識している以上にだだ漏れなのかもしれない。
 そんなわけで、遅ればせながら観に行ってまいりました。
 上映時間が長いため(なにしろ143分。 舞台での井上戯曲なら3時間越えは当たり前だが)うまいことタイムスケジュールが合わなかったのと、どうせしばらくやっているだろう、という油断が、ぎりぎりの鑑賞になった理由でございます。
 原田眞人監督が好きなのは、群像劇をきれいに捌いていくところ(例:『クライマーズ・ハイ』『魍魎の匣』)。 勝手な認識ですが、原田監督は作家性と職人技がバランスよく同居した方だと思っているので、それも理由かな。 ご本人、役者もできるし、というのも大きいかも。 井上ひさし自体は実はそんなに好みではないんだけど、脚本は原田監督が書いてるし、井上戯曲にある言葉遊びの部分は映画的流れをぶちぎらない程度になるんじゃないかな、と期待して。 実際、かなり舞台的な部分と、リアル江戸時代な描写とがバランスよく構成され、結果的に大変面白い悲喜劇になっております。

  駆け込み女と駆け出し男P.jpg駆け込み女と駆け出し男P2.jpg 泣いた後には、笑いましょうよ。

 時は江戸時代後期、男から三行半を叩きつけることができてもその逆は不可能であったため、離縁を求める女たちは縁切寺に駆け込むしかなかった。 なかでも家康公の肝入りとして幕府公認の縁切寺として名高い東慶寺には、複雑な事情を抱えた女たちが沢山駆け込んでくる。
 豪商の愛人・お吟(満島ひかり)と夫の暴力から逃げだしたじょご(戸田恵梨香)はたまたま別に東慶寺に向かっていたが、お吟が追いはぎに襲われ撃退しつつも怪我をして動けなくなったところにじょごが通りかかり、二人は一緒に駆け込むことに。

  駆け込み女と駆け出し男3.jpg 目的が同じとなったら女同士の連帯感は強い。
 駆け込み成就したら、女たちの聞き取り調査を行う御用宿にしばし身を置く決まり。
 二人は近くの柏屋に住み込み、三代目柏谷源兵衛(樹木希林)を調停人として信頼、甥の医者見習いながら戯作者志望の信次郎(大泉洋)もまた女たちに協力する。
 リアルタッチ・江戸なのは描写だけでなく台詞も。
 「にんさんばけしち(=人三化七)」など、若い人は漢字変換もできないんじゃない?、意味不明じゃない?、みたいな言葉が説明なしにぽんぽん飛び出す。 しかし人としての感情の発露は結構現代的でもあって、やはりそこはバランスなんだろうなぁ。 笑えるばかばかしいところとシリアスな部分とがいい感じで配置され、2時間以上をまったく長くは感じなかった。
 満島ひかりがすごくいいなぁ。 というか、うまい。 描き方によってはすごくいやな女になりそうなのに、全然そんなことがなくて。 とにかく粋で、芯が強くて美しく、艶っぽい(眉を剃ってお歯黒もしているのに)。 戸田恵梨香は鉄練り女にしてはかわいらしすぎる&華奢なのがリアリティを少々損ねているのではあるが、あたしが観たうちでは彼女のベスト、と言っていい演技ではないか。

  駆け込み女と駆け出し男4.jpg お吟さんにはそりゃ豪商(堤真一)も惚れこみますなぁ。 こんないい女、いないよ。
 お吟さんとじょご、この二人の友情というか同志愛に、胸が熱くなるどころじゃないよ!
 大泉さんもよかったけど、あたしのぐっとくるポイントはここでした。
 あとは『クライマーズ・ハイ』に出ていた人たちが出ているとニヤリとしてしまう・・・監督、気に入っているのね!、みたいな(次作『日本のいちばん長い日』にも出ている人たちも結構いるから余計に。 あぁ、堺雅人はスケジュールが合わなかったんだろうなぁ)。
 あらすじだけだとフェミニズムっぽい映画と思われそうだが(そういう感覚がゼロとは言えないけど)、男ばかりが悪者として描かれているわけではないし、寺に駆け込んでいる女たちの事情はすべて説明されるわけではないものの、困った厄介な人がいることも描かれているし。
 “縁”はお互いさまなのだから、縁を切るものまたお互いからでいいじゃないか、ってことですよ。
 今のところ、今年の日本映画ではベストかも!

ラベル:日本映画 映画館
posted by かしこん at 17:47| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画 movie | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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