2015年05月17日

砕かれた夜/フィリップ・カー

 読みかけの本は何冊もあるのですが(つまみ食いしすぎ?)、そのときどきのブームや勢いでやたら早く読むものもある。 というわけで、<ベルリン三部作>のベルニー・グンターものが今のブームです。
 図書館から借りだしてきた日から、ちまちまと毎日の通勤時間の電車の中で読んできました(先週はあまり読書にまとまった時間が取れなかったのがもどかしい)。
 400ページそこそこの量なのに、読み終わるのにこんなに時間がかかるとは・・・(でも先週は、この本にのめり込み過ぎてあやうく何度も電車の乗り継ぎを忘れそうになった)。 そんなわけで、前作からの期待を裏切らない内容。

  ベルリン三部作1砕かれた夜.jpg タイトル『砕かれた夜』は、1938年にあった実際の事件“水晶の夜”にかかっている模様。 原題は“THE PALE CRIMINAL”

 1983年の夏、私立探偵のグンターは富豪の未亡人からゆすり事件の解決を依頼されると同時に、かつて所属していた刑事警察からある困難な事件を捜査するために戻って来いという脅迫的な申し出を受ける。 ナチ党の支配がより強まり、戦争を回避できないのではという気配とともにベルリンは緊迫した空気に満ちている。 恐喝犯を首尾よく見つけたグンターだったが、事件は後味の悪い結末を迎え、警部として刑事警察に戻った彼は、アーリア人少女連続殺人事件の指揮を執る。
 グンターの減らず口は若干減ったものの、ユーモアのセンスは健在。 冒頭で探偵としてのグンターに相棒がいて、前作からの時間の経過に驚かされる(相棒を立てるような性格じゃないのに、それを受け入れる理由なり事情が存在したのだろう、と読者に推測させるから)。 そのあたりのキャラクター造形や構成が、うまいなぁ、と思うわけです。
 探偵小説でありながら同時に警察小説でもあり(部下となった3人の刑事たちも性格がまったく違って、グンターとの掛け合いが意外に楽しい)、というちょっとした反則技もこの時代を考えれば必然と思えるし、失踪人探し専業だったグンターがシリアルキラー探しという事件のグレードアップさ加減もまことに自然です。
 そこに<リアルタイムのベルリン>の状況や実在の人物(今回はヒムラーも登場!)、歴史的事実が絡み、読んでいてなんとも言えない気分に。
 歴史のうねりの中で、個人の努力や抵抗がいかにちっぽけなものか!
 前作で行方が謎のままだったある人物(ベルニーにとってとても重要な人物)の顛末が東江さんの予告通り本作で明かされますが・・・そりゃないんじゃないの?、という展開で・・・大変ブルーです。
 さて、次はこのまま『ベルリン・レクイエム』に入るか、一呼吸置くか、ちょっと考え中。
 『変わらざるもの』と『静かなる炎』が部屋のどこにあるのか、探さないといけないわ。

ラベル:海外ミステリ
posted by かしこん at 18:37| Comment(0) | TrackBack(0) | ☆ 読んじゃいました | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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