2015年03月26日

フェイス・オブ・ラブ/THE FACE OF LOVE

 エド・ハリスはある種の理系男子の理想形を体現する男である。
 『ライトスタッフ』『アポロ13』を観ればよくわかる(なにしろ完璧なキャリアの宇宙飛行士だから!)。 あとはまぁ、硬派な(場合によっては融通が利かなそうな)軍人の役とかよく似合う。 そんな強面&生真面目さがにじむ男なのに、どうやらご本人は芸術家気質らしく(自らのプロデュースでジャクソン・ポロックを演じたぐらいだから)、どうも謎の多い人である。
 が、最近はすっかり老けこんでギャングのボス的役柄が多くなってしまっている彼が久々に挑戦するらしき直球のラブストーリー。 なんだかんだ言いつつあたしはエド・ハリス好きなんだな、と思って観に行った。
 まったく、恋というものはとんでもない病ですよ、という話だった。

  フェイスオブラブP.jpg これは、あなたと出会えた奇跡――。

 結婚後30年、連れ添ってきたギャレット(エド・ハリス)とニッキー(アネット・ベニング)は周囲の誰もがうらやむ仲睦まじい夫婦だったが、5年前に不慮の事故でギャレットは他界し、ニッキーの時間は止まったまま。 隣人のロジャー(ロビン・ウィリアムズ)もまた妻を亡くした過去があり、そんな近所づきあいや大学生の娘の支えもあって、なんとか少しでも元の生活に戻ろうと前向きになるニッキー。 かつてギャレットとよく訪れた美術館に足を運んでみるが、浮かぶのは夫との思い出ばかり。 そんな彼女の前に夫と瓜二つの男が姿を表し、思わずあとを追いかける。 彼は画家で美術教師のトム(エド・ハリス)だったが・・・という話。
 もしかして、みなさんノーメイクですか?、というくらい、<老いること>に正面から取り組んでいる。 特にアネット・ベニングは夫を亡くしてふらふらで空虚な時間を首の深々としたシワやくすんだ肌で表現、これって女優としてはかなり勇気のいることでは、とハラハラするほど。 ロビン・ウィリアズも抑え目の演技で“普通の人”をさらりと、彼だと言われないと気づかないくらいのさりげなさで。 そんな中、エド・ハリスは一人二役を極端な差をつけず、ナチュラルに演じ分けている。

  フェイスオブラブ3.jpg 伊達男ギャレットに比べて、自然派&無頓着路線で。 トムと知り合ってからニッキーもイキイキと若返る。
 設定自体はドラマとしてありがちながら、ドラマティック性はなるべく抑えて、淡々と描いているのが印象的。 だから余計に物語がリアルに思えてくる不思議。
 相手がそっくりであればある程、些細な違いが浮き出てくるような気がするんだけど、理屈抜きでトムに惹かれてしまうニッキーの喪失感はそれくらい深かったのか。 そして理由はわからないけれど自分をキラキラとした恋慕う瞳で見つめ続ける存在に気づけば、孤独を感じつつある男はころっといってしまうものなんだな(多分、逆もあるでしょう)、と、あたしにもそのうち訪れる<老い>に対する心構えを迫ってくるようで。 一人が楽だと思っていても、そのうち一人がつらくなるんだろうか、とか。
 そう思うとトム側の方に感情移入してしまい、「トムと亡き夫が瓜二つ」であるという事実を隠したままのニッキーがひどく勝手というか残酷に思えて(そこが「女はこわい」という部分でもあり、「恋は病である」という部分でもあり)。 もしくは精神的に病んでいる状態が同時に進行しているあやうさが大変怖かったです。 同じような恋の病にかかっていた経験がある身としては、その身勝手さが自分にぐさぐさ突き刺さってきて他人事じゃないからか? ニッキーに対する気持ちは同族嫌悪か?
 たとえそっくりでも、内面に共通したものがなければニッキーはトムに惹かれ続けただろうか? 外見が似ていなければ彼女は彼を追いかけなかったかもしれないけれど、別の形で知り合ったのならまた別の関係になったかもしれないのに。

  フェイスオブラブ2.jpg この二人の関係もまた、いろんな可能性があるのだろう。 こんなに静かで穏やかなロビン・ウィリアムズを観るのもこれが最後なのだろうか・・・という別の切なさもあり。
 <大人の恋愛>のは若者の恋愛以上にいろいろな形があるのだとは思うが、うおー、なんだかトムがかわいそう・・・と最後はウルウルしてしまいました。
 ちなみに、トムの元妻のアンとしてエイミー・ブレネマンが出てきたのには驚きました(『プライベート・プラクティス』以来!)。
 そして理系男子というよりも、やはり画家のほうがエド・ハリスの本質に近いのかも、と思わされてちょっとさみしかったかも。

ラベル:外国映画 映画館
posted by かしこん at 23:59| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画 movie | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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