2014年12月30日

紙の月



 原作は未読。 しかし、銀行のお金を横領する宮沢りえの先輩銀行員の役が小林



聡美って、絶対『すいか』へのオマージュだよね!、と予告を見て思ってました。



 これも『八日目の蟬』と同様、NHKのドラマと映画の企画がかぶった作品。 角田



光代は、やはり読んでおくべきなのだろうか(なんとなく怖くて手が出せてないのですが)。



   もっとも美しい横領犯

      真っ当な人生を歩んでいたはずの主婦が起こした、巨額横領事件。

      彼女は何を手に入れ、何を手放したのか――。



 1994年の日本はバブルがはじけて間もない頃。 それでもまだ余波を引きずっている



人たちもいる時代。 しっかり働き、周囲への気配りを忘れない態度が認められ、銀行で



パートから契約社員に昇格し、外回りの顧客営業を任されるようになった梅澤梨花(宮沢



りえ)は、初日に大口の契約を取り付け、一気に上司らから信頼と期待を得る。 しかし



家に戻れば、超一流商社にでも勤めているらしき夫(田辺誠一)の無自覚なモラ夫ぶりに



傷つけられ、しかし夫には自分の言動が無神経であるという意識がないので梨花はいつも



いいかけた言葉を飲み込むような生活。 他人から見ればうらやましがられる暮らしなの



だろうし、あの夫だって人によっては「優しくていい旦那さんね」と言われかねないだけに、



梨花の孤独はどんどん深まる。



 ある日、顧客の孫である大学生の光太(池松壮亮)と駅の改札口で偶然に出会い、一気に



不倫関係に。 彼との付き合いで何かのタガが外れてしまったように彼女は、窓口業務の



相川さん(大島優子)の無責任発言に反発しながらも結局は背中を押されるように、金銭



感覚が狂ったまま銀行のお金に手をつけ、とどまるところを知らなくなる。



   相川さんは多分、梨花の中の悪魔の声の

     具現化。 大島優子、女優としてふっきれた感があるなぁ!



 冒頭から、梨花の少女時代と思しき映像がところどころで挿入される。 カトリック修道院



系の学校に通っていたのだろう、「他者に善行を施す」ということに異様なまでにこだわり、



そこに自らのアイデンティティを見出してしまったような彼女。 だからこそのちの彼女が



あるのだと、それをこれまで振り払えなかった彼女だからこそこんなことをしてしまった



のだという理由づけにはなっていますが・・・少女期のすりこみって怖い。



 銀行の先輩・隅さん(小林聡美)の髪型がかたくななまでにおかっぱなのは、そこに



シスターの姿を投影させているのだろう。 隅さんが常に梨花に警告を発し、最終的には



彼女を追い詰めるのだから。 いやー、小林聡美の底力を見せつけられましたよ。



   となれば隅さんは、梨花の心の中の

      天使の具現化か。 『桐島、部活やめるってよ』の群像劇とは打って変わって、

      登場人物のすべては梨花を輝かせるために存在するかのような描かれ方。



 「ありがち」という言葉がところどころで繰り返される。



 梨花にとっては人生をかけた大きな決断だけど、他人から見たら「若い男に貢ぐために



銀行からお金を横領するなんて、ありがちな話」なのだ・・・。 だから、二人が関係にのめり



込むきっかけも、夫との不和のきっかけも、ありがちな話だから潔いほどに描かれない。



追い込まれた梨花の間違った方向の努力もまた同様(ここはディテールを描くとコメディに



なってしまうからかな。 さわりだけの描写でも笑えたけど)。



   池松くん、『MOZU』のときよりちょっと

     若い印象か。 どっちにしろ身体張る役でがんばってるなぁ。



 “一見、ごく普通の主婦”がこんなにも深い虚無を抱えているなんて。



 となれば、街ですれ違う人々の中にも、仕事場などでよく知っているような気になって



いる人にも、似たようなものを抱えている人はいるのかもしれない。 はっきりした自覚は



なくとも、もしかしたら自分も・・・そんなふうに思わせるこの映画、女性側にフォーカスして



いるけど実は『ゴーン・ガール』と同じものを描いているのかもしれないですね。



 ラストシーンは全力疾走のところで終わってほしかったような・・・それでもあのラストを



描かねばならないのは、彼女がまだ少女時代のことに囚われているから、もしかしたら



あのシーンが彼女自身の解放のために必要だった、ということなのかもしれない。



 紙の月−Paper Moonは「ニセモノ・ありえないこと」と「信じ続ければ叶うこと」みたいな



意味があったように記憶しているけれど・・・この場合、一万円札自体も指していると思う。



紙幣もまたただの紙切れ−通貨本位制度という“信頼”の上に成り立っているものに



過ぎないから。 人間の・個人の足元の、なんともろいことか。



 宮沢りえ、主演女優賞とか獲っちゃうんだろうなぁ、という気がしますが、あたしは小林



聡美の助演女優賞も期待しています。


posted by かしこん at 16:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画 movie | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:


この記事へのトラックバック