2014年07月29日

コリーニ事件/フェルディナンド・フォン・シーラッハ

 『犯罪』のシーラッハによる初の長編。 とはいえハードカバー200ページほどなので<長編>と呼んでよいものやら。 テイストは『犯罪』にかなり似ていて、乾いていて硬質な、感情をできるだけ排除した文体。 長くなった分は新米弁護士である狂言回しのライネン氏の苦悩に少し踏み込んだせいである気がします。
 ドイツは「ニーチェとヘッセの国」という自負があるためあまりエンターテイメント小説が評価されにくい(上質のミステリは北欧から翻訳がどんどん入ってくるので国内であまりミステリを育てる土壌がない)と聞いたことがありますが、なるほどシーラッハがドイツでも受けるのは、ある種の格調の高さを備えているからでしょうか。
 語りすぎず、行間が広くて。

  コリーニ事件.jpg このダークな表紙とエピグラムが、思い返せばすべてを物語っているようだ。

 きっかけは2001年の5月、ベルリンで起きた殺人事件。
 イタリア人で67歳のコリーニと名乗る男が罪を認め、殺人容疑で逮捕された。 被害者はドイツ国内大手企業の代表取締役であること、手口が残忍であることから世間にセンセーションを巻き起こす。 国選弁護人を引き受けたライネンは、被害者が実は自分の幼馴染の祖父であることを知り弁護人を降りようとするが認められなかった。 いったいコリーニにはどんな動機があるのか・・・という話。
 ドイツ、老人、とくれば浮かぶモチーフはひとつですが・・・その悲劇性を過剰に煽っていないところが余計響いたり(“戦時中における合法的な殺人”を裁判で陳述する専門家の内容に戦慄するのはあたしだけではあるまい)。
 この小説がきっかけになって、ドイツ連邦法務局はある委員会を立ち上げたそうだから、もしかしたらそれがシーラッハの目的だったのかもしれない。 そしてそれは見事に達成されたわけだ。

ラベル:海外ミステリ
posted by かしこん at 04:57| Comment(0) | TrackBack(0) | ☆ 読んじゃいました | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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