2014年07月20日

私の男

 原作既読。
 花を二階堂ふみがやるということと、監督が『海炭市叙景』の熊切和嘉だということでひそかに期待(北や雪の描き方がすごくいいんじゃないかと思って。 監督が北海道出身だと今回初めて知った)。 しかし原作とは違って時間軸通りに展開していく物語に、「うーん、これは原作を読んでいない人には難解じゃないかな・・・」という不安がよぎる。 花の一人称ではじまる原作とは違い、淳悟(浅野忠信)を主役(語り手的視点人物)に据えたことでなんだか花が魔性の女のように描かれてしまっているような・・・。
 『私の男』が桜庭一樹による佐々木丸美の『雪の断章』へのアンサーソングだと思っているあたしにとっては、予想外の解釈の映画になってました。 それってもしかして、脚本も監督も男性だから・・・かしら。

  私の男P.jpg 誰にも、言えない

 北海道南西沖地震で甚大な被害を受けた奥尻島。 津波によって家族をすべて失い、孤児となってしまった10歳の花(山田望叶)は避難所で遠い親戚だという淳悟(浅野忠信)に出会う。 淳悟の強い希望と、地元の名士で遠縁でもある大塩(藤竜也)の計らいもあり、二人は養子縁組をし戸籍上の親子となる。 まるで「世界にたった二人だけ」というように振る舞う花(二階堂ふみ)と淳悟に、淳悟と付き合っていた小町(河井青葉)、そして大塩が次第に不審の目を向けるようになり・・・。
 冒頭、真っ暗な画面の中、何かの動物の唸り声のような、大きな枝がきしむような音がずっとしている。 それが流氷のたてる音だとわかった瞬間の映画への取り込まれ方はすごい。 地味で小規模な(つまり予算の少ない)日本映画を愛する浅野忠信と二階堂ふみが熊切監督の作品に出たがる気持ちがその場面だけでよくわかった。

  私の男06.jpg私の男04.jpg 相容れない二人がよい。
 それにしても全体的に説明不足というか・・・『海炭市叙景』では説明しないことが吉と出たけれど、今回はどうだろう。 淳悟と花が実の親子だということがあれだけの台詞と描写だけですべての観客に伝わるだろうか(伝わらなければ二人の関係の解釈はまったく別のものになる)。 直接血が繋がっている関係だからこそ、血が二人の象徴なのだ。
 あぁ、二人はヴァンパイア最後の生き残り、というような気持ちなのか。
 その気持ちを強くするのは、ラストシーンのレストランで。 厚いカーテンに閉ざされ、ろうそくの炎がともり、花瓶には大輪の深紅の薔薇があふれんばかりに。
 できるかどうかわからないけど“ストックホルム症候群”からの離脱を意識していた原作の花とは違い、こっちの花は自ら主導権を握り二人の関係を操っているように見えた。 それはつまり、淳悟から見た花、ということだったのか。

  私の男02.jpg これは、高校生。
 メガネと髪型、服装で中学生から20代半ばまでを演じ分けている(しかもそのときどきの情緒不安定・安定度も変えつつ)二階堂ふみ、すごい。 浅野忠信の徐々に、でも確かに“崩れて”いく感じもいいけれど(でももともと淳悟はどこか壊れている人なんだけど)、もうこれは二階堂ふみの映画です。 『さよなら渓谷』が真木よう子の映画として評価されたのなら、二階堂ふみも主演女優賞とるくらいじゃないと釣り合いが取れん!
 流氷に象徴される北海道時代の風景の説得力が圧倒的で、二人が行方をくらまして東京の片隅に落ち着いてからはまるで別の映画のような(だから後半、ヴァンパイア映画だと思っちゃったんだけど)。 なんだかちょっと、残念なところがあるのは、やはりあたしが先に原作を読んでしまっていたからかなぁ。
 でももう一度、原作を読みたい気持ちにさせられた。
 これ以外に映画化する方法があるのか確認したいから。

posted by かしこん at 17:20| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画 movie | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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