2014年02月27日

シスターズ・ブラザーズ/パトリック・デウィット

 メインストリーム文学が大好き!、というわけではないあたしだが(むしろミステリやSFなどのジャンルを愛する)、ブッカー賞最終候補作と聞くとちょっと期待する。 自分があまり読まないジャンルの作品でも、面白いと思えるものが多いから。 いや、最近はブッカー賞作品がジャンル小説の要素を強く含んできているといえるかも。
 凄腕の殺し屋として名高いシスターズ兄弟(シスターズ・ブラザーズ)。 語り手は弟のイーライ。 彼から見て兄のチャーリーは粗野で狡賢く、冷血漢で知性にも欠けるが、イーライも普段は穏やかで心優しいのに一度キレると大変なことになるらしい。 二人の雇い主である“提督”の命によってある山師を消しにサンフランシスコへ向かうことになるが、イーライにはその理由がわからないまま、チャーリーに従わざるを得ない。 <家族>という呪縛を感じながら。

  シスターズ・ブラザーズ.jpg けれどイーライの語り口にはドライなユーモアがある。
 第一章の『馬の問題』というタイトルに冒頭から深く納得!
 なにしろ<ゴールドラッシュに沸くアメリカ西海岸>が舞台なので、モラルとか法の精神みたいなものはどこにもないよ! 自分さえよければ主義が大手をふるっており、そんな時代の流れからはぐれたような人々に兄弟は旅の途中で次々と出会う。 勿論、はぐれているのは兄弟も同様で、ヘンでちょっと壊れかけっぽいけどにくめないような人たちばかりが妙なエピソードを紡ぎ、結構ひどい話なのだが陰惨にならず、むしろユーモラス。
 いわゆるロード・ノベルなのだけれど、“旅の途中で出会う人々との心の交流”みたいなものとはかなり遠い。 それなのに、イーライの内省的な思索とコメントがしみじみさせてもくれる。
 ・・・なのに、ハッピーエンド?!
 いろんな意味で、びっくり。 面白かったけど、結局“家族”を描いたものだったのかな。
 この時代のアメリカに生まれなくてよかった〜、とか、普段考えないようなこともついでに考えてしまった。

ラベル:海外文学
posted by かしこん at 23:59| Comment(0) | TrackBack(0) | ☆ 読んじゃいました | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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