2013年04月19日

汚れなき祈り/DUPA DEALURI(BEYOND THE HILLS)



 これも152分であります。 最近、長い映画が続くなぁ。



 しかし『4ヶ月、3週と2日』のクリスティアン・ムンジウ監督の新作となれば、見ない



わけにはいかないではないか。 その後のルーマニアについても、知りたいし。



 はじめ、修道院が舞台と聞いて「『マグダレンの祈り』と似てるのかな〜」、と思ったの



だったが、全然違った。 だが題材は変わっても、映画の雰囲気は『4ヶ月、3週と2日』に



通じるものがあったのだ。 音楽で盛り上げるわけでも鋭いカットをたたみかけるわけでも



なく、ごく普通の光景を映している風に見せながら、その映像には緊張感とスリルと不安



感がないまぜになっている。 ショッキングなはずのシーンのほうがむしろ普通で、何気ない



場面のほうが見ていてドキドキする。 だから152分間、心ひそかにドキドキしていた。



 テイストは違うのだが、この監督はあたしの中ではトマス・ヴィンターベアに近いものが



あるイメージかも。



   わたしたちを引き裂くのは、神か、悪魔か――。

    2005年ルーマニアの修道院で起きた実話を基に、パルムドール受賞監督が

                        再びカンヌを揺るがした衝撃作。



 小さな頃から孤児院で一緒に育ったヴォイキツァ(コスミナ・ストラタン)とアリーナ



(クリスティーナ・フルトゥル)との間には強い絆があった。 しかしアリーナが出稼ぎに



ドイツに行っている間に、ルーマニアに残っていたヴォイキツァは修道院に入り、信仰の



道に身を捧げていた。 愛するヴォイキツァを取り戻すために一緒にその修道院に入る



アリーナだったが・・・という話。



 冒頭の、列車横で人の波に逆らってアリーナの姿を探すヴォイキツァの姿からもう



なにか不安の予感。 それは一般社会に適応できないことなのか、適応をはなから拒否



していることなのか。 その後、アリーナを連れて行った修道院の入口には<異教徒は



立ち入り禁止>の看板がある(アリーナは帰依して修道院に入るわけではなく、あくまで



ヴォイキツァの友人という立場のままである)。 それでもう、先行きに悪雲が垂れこめる



のがわかってしまう悲しさ。



   久し振りに会ったのに、

    お土産も渡したのに(「あ、でもここには電気が通っていないの」とアリーナが渡した

    コンセント式キャンドルはあっさりお役御免になる)、彼女の生活は信仰中心かつ

    優先で、アリーナの心はすさむ。 なんだかそれも当然だと思える。



 修道院の院長(司祭)は他宗教を口撃するかなり排他的な人物で、その心の狭さも



また不吉な要素。 ここはルーマニア正教会という設定でしたが・・・ロシア正教と影響



ありそうな感じ。 カトリックもプロテスタントも彼の信じるものとは違うようだ。



   だが、修道女たちは彼を「お父様」と

     慕っており、疑いなど微塵も抱いていない。 貧しいが、静かで穏やかな生活。



 彼らにしてみれば“アリーナ”という異分子が入ってきたということなのだろうが、外の



世界を経験してきたアリーナにとってはこの修道院が異質であり、そもそも孤児院育ちの



彼女にとって外の世界が優しいわけもなく、彼女の救いはヴォイキツァひとりなのに、



その彼女に受け入れてもらえないというのはさぞつらかろう・・・それが引き金にもなり、



アリーナの精神はより不安定になっていく(二人には友情以上のものがあったと暗示



されているし)。 だからそれは精神病だから!、とすぐわかることなのに、修道院に



いる人々にはその知識がない。 神に祈れば解決すると思っている。



   冬が来て・・・隔離された状況下では

       各人の視野はさらに狭くなる。 寒さは人をおかしくするしね。



 近年ではヴァチカンでも悪魔祓い講座では「まず精神病として扱うべし」というお達しも



出ているというのに、2005年の出来事だというのに、アリーナには悪魔が取り憑いて



いるとそこでは判断されてしまう・・・あぁ、情報がないって、哀しすぎる。



 ヴォイキツァが悪いわけではない、司祭だって頭は固いが地位を利用して修道女たちに



悪行をしたりしないし自分たちの食費を削っても孤児院を支援しようとするある意味高潔な



人物である。 他の修道女たちも同様。 それなのに、悲劇は起きる。



 神に祈っても人は過ちを犯す。 その愚かさに、救いはあるのだろうか。



 アリーナとヴォイキツァを演じた二人の若き女優が素晴らしい。 二人とも映画初出演



だと話題になってましたが(PRで来日したときのインタビューを見た)、舞台などで演劇



経験は十分積んでいるらしい。 さぞ!、という感じでした。



 独裁政権が終わって、ルーマニアの中心街は普通の感じなのに、ちょっと引きこもって



しまえばこうなのか・・・とわかるシーンは複雑な気持ちに。



 それは日本でも世界のどこでも、起こりかねない問題だから。


posted by かしこん at 06:22| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画 movie | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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