2012年11月20日

湿地/アーナルデュル・インドリダソン



 <北欧の巨人、ついに日本上陸>というコピーとともに紹介されたこの本、北欧



ミステリブーム真っ最中のあたしとしては見逃すことができず。 なんと作者はアイス



ランド人です! アイスランドの小説読むの、初めてかも〜。



 そもそもアイスランドについての知識も乏しいあたし(ヴァイキングに狙われるのを



避けるため、氷の島を“グリーンランド”と呼び、自分たちの住む島を“アイスランド”と



呼んだ、という話を聞いたことがあるくらい)。



 なんと、アイスランド人にはファミリーネームという感覚がなく(存在としてはあるけど)、



誰もがお互いを親しさ度合いに関係なくファーストネームで呼ぶのだそうだ。 人口は



30万人、うち首都レイキャビク周辺で20万人が住むというこじんまり感が、地方出身



者のあたしとしてはどこか懐かしさを感じる。



   が、そんな田舎でも事件は起こる・・・

      いや、むしろ狭い社会だからこそ起こる犯罪はある。 日本ならば横溝的な。



 先行する北欧作品にならい、ここでも主人公は刑事である。 エーレンデュルという



50歳ほどのレイキャビク警察犯罪捜査官は、20年前に妻と離婚して以来音信不通。



いいトシの娘と息子がいるが、どちら二人も問題児という・・・ヘニング・マンケルの



ヴァランダー警部以上に私生活は悲惨(というか、日本の常識から言って「それ、ヤバ



すぎますよ!」、と言いたくなるほどヤバい)。 これがアイスランドの常識なのかしら・・・。



 それはともかく、事件は10月のレイキャビクで起こった老人撲殺事件。



 始めは<典型的なアイスランド的殺人>:金品目当ての行き当たりばったり殺人と



思われたが・・・死体に残されたメモ「おれはあいつ」が、これはただごとではないと



エーレンデュルに思わせる。 年若き同僚エーリンボルクとシグルデュル=オーリと



共に、被害者ホルベルクの過去を探っていくと・・・という話。



 北欧ミステリの敷居が高いのは、多分、名前にまずなじみがないこと。 しかし何冊か



読んでいくと、ありがち名前とか一定のルールが見えてくるので面白くなります。 ぜひ、



おためしあれ!



 いやー、この季節独特の陰鬱な空気感、好きだわ。



 事件のおおかたや犯人がどんなやつかというのは中盤手前ぐらいでわかってしまうの



ですが、そんな読者の勘で捜査は進みませんから、しっかり証拠を取り、根拠を取り、



裁判を維持できるように慎重な調査が要求されるわけで・・・大変おつかれさまです!、



という感じ。 しかも事件自体が<アイスランドだから起こること>になっていて、それも



好感触でした。



 殺される側にはそれなりの理由があり、殺す側にはだから当然理由がある、という



現代を描いているんだけれども“古き良き時代のミステリ”的なお約束に、ちょっと



ほっとします(殺される理由の原因については「ほっとする」どころではないのだが)。



 「誰でもよかった」じゃないのがね、いいんですよ。



 何年か後、アイスランドでも無差別殺人事件が起こるようになったら世界社会の



秩序は間違いなく歪んでいっている証拠になるかもしれません(『湿地』の原著は



2000年の発表ですが)。 次の作品も刊行予定だということなので、アイスランドに



ついてまた見守っていきたくなる。 ますます北欧について(局地的だけど)、詳しく



なりそうだわ〜。


posted by かしこん at 05:28| Comment(0) | TrackBack(0) | ☆ 読んじゃいました | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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