2012年10月24日

アウトレイジ ビヨンド/OUTRAGE BEYOND

 日仏ヤクザ映画対決、日本編です。
 冒頭、埠頭で海から引き揚げられる車をゆっくりと映す描写から、海の色はもうキタノブルーだし、画面にかぶせて刑事さんたちの会話で状況説明も完了。 これでついてこれない人はストーリーは気にしなくていいから勢いで見なさい!、みたいな宣言がいっそすがすがしい(おまけに刑事さんの一人は中村育二さんだ、うれしい!)。
 前作から5年後・・・という設定だそうですが、あたしはもう組織犯罪対策課(いわゆるマル暴)の片岡刑事(小日向文世)に夢中です! サイコな殺人犯とかはいくらでもやってきた小日向さんが、前作で多分初めて“怒鳴る”ということをやっていて、それが板についてない感がありありだったのですが、なんと今回は恫喝も思いのままなのです♪ 勿論、小ズルイ感じもありありで、変幻自在のトリックスターぶりに惚れ惚れ。

  アウトレイジビヨンドポスター.jpg 全員悪人、完結。

 前作で関東の一大勢力となった暴力団<山王会>は新会長加藤(三浦友和)のもと、大友組の金庫番であった石原(加瀬亮)の経済ヤクザ的知恵を借りて政界ともつながりを深めていた。 結果的には自分もその片棒を担いだ形になっているのだが、片岡刑事(小日向文世)の目的はそもそも彼らの壊滅。 木村(中野英雄)に刺されて獄中で死んだはずの大友(ビートたけし)が実は生きていたとばらし、動揺する<山王会>に関西最大の<花菱会>をぶつけ、両方の壊滅を狙う。 しかし大友の真意は・・・。
 とにかく大友と片岡の会話が陰険漫才みたいで面白い。 「誰が出所してからもヤクザやるって言ったよ!」という多分大友の本心を片岡をはじめ誰もとりあわないところにまず悲劇が。 そして冒頭で死体になった人たちの犯人として誰か小物を差し出してくださいよ、と若い者を自首させて、コヒさん主導で調書をつくっていく様はほとんどコントである(そんなコヒさんに「やばいんじゃないっすか」と言う松重豊さんともども、是非シティボーイズのコントに出ていただきたいぐらい間がステキ!)。 警察側、面白すぎ!

 ※ 追記:完全にギャグなんだけれども、実際の取り調べもこんなものなのかな、という気にもさせられるんですよね。 PCなりすまし事件の大学生なんかもこんなもんだったのかな、みたいな。

  アウトレイジビヨンド3.jpg そして生き残り組でいちばん出世したであろう石原は、地位に心根が追いつかず・・・ブチ切れても迫力も体力もない若頭なのでした。

 こんなのを若頭にしちゃいかんよ、という好例というか・・・現在のヤクザ社会は義理人情なんかより「いかに金を稼いできたか・これから稼げるか」が重要視されていて普通にシビアな会社みたいですよ(そこがドライさであり、監督の皮肉なのであろう。 この前のフランス映画とは大違いっす)。 加瀬亮も前作では「どうやってもヤクザに見えないから苦労した」と監督に言われてましたが・・・今回は結構がんばってる感が。 それでも残る「無理してる感じ」が石原というキャラクターの「なんでこの人、ヤクザになっちゃったんだろ?」というどうしようもなさとつながってダメダメでよかったです。
 あとは前作で、中野英雄がこんなにいい役者になっていたとは思っていなかったので、木村もまた生き残り組として出番も増えて人間として成熟したところも見せたりして、ツボでした。 基本的に生き残り組のみなさんには見せ場がそれぞれあって、よかったです。
 出所させられた大友が着てる服がヨージヤマモトの麻の白いスーツだったのもまたツボで! 前作で出頭するときに着てた服だよ! そういうディテールがちゃんとしてる感じ、好きです。

  アウトレイジビヨンド4.jpg 新加入、関西の<花菱会>のみなさん。

 まぁ、基本的に会話(怒号?)の応酬なんですが・・・殺し合いに使うブツはほとんど拳銃だし、白昼堂々の襲撃とがギャグでしょ?、みたいだし、まさに弾丸トーク自体が撃ち合いのメタファーというか、バイオレンス描写は遥かに前作に比べて減りましたが、それは具体的に死に方を描写しないだけで、静かな映像に死体だけは着実に積み重なってるんですけどね。

  アウトレイジビヨンド1.jpg 「バカヤロー! 撃てるなら撃ってみやがれ、コノヤロー!」

 バカヤロー!、の応酬が気持ちいいって、不思議。
 むしろ会話がない方が、純粋に殺し合いですからね。 オールスターキャストなのに誰がいつ死ぬかわからない、というハラハラ感もちょっと面白かったです。
 と、ここまで娯楽性を高めつつもちょちょちょこ北野映画的美学を残すところも、うまいなぁ、と感心。 一線から退きたがる大友の姿はたけちゃん自ら自分の<老い>のようなものをあえて映画に残そうとしているのか?、と感じてみたり。
 ま、面倒なことは考えず、実力派俳優のみなさんの悪人ぶりを堪能するのがいちばん正しい見方かも。 こんなに怖い塩見三省さん初めて見たし、こんなに抑えた西田敏行も初めてかもしれない。 「北野映画に出たい!」と手を挙げたみなさんだからこそ、他ではしない演技をしているという楽しさがあります。
 それにしても小日向さん、すごかったわ・・・。  

ラベル:日本映画 映画館
posted by かしこん at 06:57| Comment(2) | TrackBack(0) | 映画 movie | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
ルビー奥村さま<br>
<br>
おはようございます<img src="/image/emoji/00.gif" border="0"><br>
そうですねぇ、ヤクザ社会という特別な世界ではなくて、現実の投影そのものでした(そこがまたギャグなんですけど)。<br>
前作の地上波放送分は見てないんですが、まぁ、カットされますよね<img src="/image/emoji/06.gif" border="0"><br>
椎名桔平がかっこよかったですね(死に方はすごかったですけど・・・)。<br>
今回は21時過ぎのレイトショーということもありますが、観客のほとんどが男性で、しかも前作より人数多かったです。<br>
ヒットしてますね<img src="/image/emoji/10.gif" border="0"><br>
前より、「あ、ここ、神戸だ!」とロケ地にも気づくことが多かったです。<br>
是非、劇場で<img src="/image/emoji/08.gif" border="0">
Posted by かしこん at 2016年12月04日 13:13
かしこん様 こんばんは^^<br>
アウトレイジ続編の情報、ありがとうございました。<br>
前回の「アウトレイジ」は、これぞ娯楽映画だ!というキタノ映画でしたから、とても期待しています。<br>
この映画のヤクザの世界は、一般社会の縮図だと思っています。政界も芸能界も会社のサラリーマンも、結局は騙し騙されるヤクザな世界です。<br>
<br>
この間、テレビで「アウトレイジ」を放送してましたけど、さすがにラーメンに具が入るシーン(笑)はカットされていましたね。わたしは、けっこう、ああいうシーンは好きなんです。ストレス解消になりますから。ww
Posted by ルビー奥村 at 2016年12月04日 13:13
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