2012年09月30日

きっと ここが帰る場所/THIS MUST BE THE PLACE



 カンヌ映画祭で意気投合したというショーン・ペンとパオロ・ソレンティーノ監督が



「一緒に映画を作りましょう」という約束を口約束で終わらせなかった一本。 なんとなく、



それで傑作なのか趣味に走りすぎるかどっちかなぁ、という予感はありましたが。



   人生は美しさで満ちている だけど、時々、何かが変だ・・・



 これもロードムービーに分類されるんでしょうね。 てっきりショーン・ペンはゲイ設定



かと思っていたのに、ビジュアル系ロックアーティストという設定だったのでびっくりだ



(しかも消防士の女性と結婚してるし)。



   コピーの「何かが変だ」を体現しているのは誰よりも彼。



 伝説の元ロックスターのシャイアン(ショーン・ペン)はアイルランドのダブリンで長いこと



すっかり引きこもり生活。 生活はしっかり者の妻が支え、しかも何故かシャイアンには



株の才能があってその収入で十分遊んで暮らせるので、安心して毎日ふらふらできる。



町には彼が伝説のスターだと知る者もいるが、もっぱら話し相手は地元のロック少女



メアリー(イヴ・ヒューソン)だけ、しかも会う場所はショッピングセンターのフードコートだ!



 庶民派なのか世間知らずなのか、喋り方のトーンもどこかずれているシャイアン(だから



最初はおかま系の方なのかと)は、結局のところ繊細な魂の持ち主であるアーティストだ、



ということなんでしょう。 見慣れるまではその姿は非常に痛々しいです(あたしが勝手に



『ミルク』のときのようなキュートな彼を期待してしまっていたからかも)。 その割に妻



(フランシス・マクドーマンド)は実利的なしっかり者で、この二人が何故結婚したのかと



いうのもなかなか謎だ。



 そんなのんびりした日々の中、シャイアンの父が危篤という報が。 なんと30年ぶりに



アメリカに戻ることになったシャイアンだが、飛行機が苦手な彼は船でアメリカへ! 当然



臨終の席には間に合わず、たまたまずっと自分を否定してきた父がナチの残党を追って



いたことを知ってしまう(このあたりから、唐突すぎる展開に妙に慣れてきてしまっている



自分に気づく)。 葬儀の最中に抜け出し、“その男”をいつの間にか追いかけることに



しているシャイアン。 もはや意味がわからないのですが、それが妙にツボにはまると



いうか、「そういうこともあるかもね」と納得したりしている。 なんかだまされてる、あたし?!



   なんとなく自然に知り合ったような

           シングルマザーも、実は“その男”の孫娘だったり。



 孫娘レイチェル(ケリー・コンドン)、どこかで見たことがあるよなぁ、とずっと考えていた



が、『終着駅』でジェイムズ・マカヴォイを惑わせてた女だ! イメージがずいぶん違う



わぁ(女優さんなのだから当たり前なのだが)。



 シャイアンが元スーパースターだと知っている彼女は息子に彼を紹介するのだが、



ああいうビジュアルの人にもすんなりなつく子供ってやはり人の本質を見抜く存在なので



あろうか。 年を重ねるほどに人の見かけにだまされる気がする、自戒。



   彼のギターで少年が“THIS MUST BE THE PLACE”を歌う。



 「それ、アーケイドファイアだよ」



 「もともとは、トーキング・ヘッズが歌ってる」



 そんな会話で、へー、アーケイドファイアが“THIS MUST BE THE PLACE”をカバー



してるんだ〜、と知ってみたり。 シャイアンの目的はともかく、この親子のシーンは



美しくて穏やかなものが多かったです。



 他にも、ハリー・ディーン・スタントンがチョイ役で!、とか、デイヴィッド・バーンが



本人役で!、といったサプライズがあり、いろいろな人との出会いがあり、シャイアンの



交通手段も変わり、と、一体この話はどこへ向かうのだろう?、と心配になった頃、実に



思いもかけない結末が待っていた。



 たとえば『青い鳥』みたいに、「幸せは追い求めると逃げていくが、気がつけばすぐ



そばにいる」というのに似ているけれどもちょっと違う。 悲しみはその立場によって



違うけれども哀しみはもしかしたら誰もが近い感覚を持てるのではないか、とか、



そして哀しみは裏返すと笑いに通じるのでは、などを考えさせられました。



 ラストシーンの意味は実はちょっとよくわからなかったんだけど・・・(え、この人と



そんなに深い関係性があったっけ?)、なんとも奇妙で、けれど映像の中で水と光が



とても美しい映画でした。 



 <イタリアの新しき巨匠>と呼ばれるパオロ・ソレンティーノ監督、今後もチェックかな〜。


posted by かしこん at 09:03| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画 movie | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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