2012年03月26日

おとなのけんか/CARNAGE



 オリジナル戯曲の日本版『大人は、かく戦えり』を見たのでやはり比較をして



しまうわけですが、これは舞台と映画の違いを明確に理解したうえで映画に



最適化したプロの仕事でございました。



   顔で笑って、心に殺意。



 映画ではニューヨークのブルックリンのアパートメントの一室に舞台を決め、それに



合わせて登場人物の名前も変えています(舞台版ではフランスだったような)。 台詞も



より刈り込まれ、時代も国も関係なくどこでも翻案できます、という普遍性に挑戦した



かのような、あとは役者の技量に任せます、な圧倒的な台詞劇なのだけれど、言葉だけで



なく身振り手振りや表情までがこんなにも雄弁だとは・・・ということを改めて伝えてくる



内容。 誰が演じるかってのがものすごく重要です。



   で、それがこの4人。



 舞台版では表現できない、きっかけとなった<こどものけんか>と<その後>を



オープニングとエンディングに遠景で付け足したのは最初は蛇足かなと思ったけれど、



エンディングでは「これはあってよかったな」と気が変わりました。 それ故に<おとなの



けんか>の不毛さが引き立つわけで。



 ロングストリート夫妻(ジョン・C・ライリー、ジョディ・フォスター)のアパートメントに



カウアン夫妻(クリストフ・ヴァルツ、ケイト・ウィンスレット)が訪ねてきて、息子たちの



けんかについて穏やかにかつすみやかに合意を取り付けるはず、だった。 しかし



事態は思いもよらない方向へすすみ、おとなたちの本音が炸裂する修羅場と化す



のであった、という話。 とても身も蓋もなくて、とてもおとなげない。



 最近『タイタニック3D』の予告編を見たのだけれど、あの頃と比べてケイト・ウィンス



レットってあんまり変わってないんじゃないの・・・と思っちゃいましたよ(レオナルド・



ディカプリオが変わり過ぎなのか)。 あの当時彼女のことをデブだブスだと言っていた



人々はいったいどう思っているのか。 言った方は案外覚えてないのかもしれませんが、



結果的にケイト・ウィンスレットの勝ちだということですね。



   舞台では秋山菜津子さんが演じた役

    ですが、菜津子さんがやった力技をここでも披露。 それでも美しさが変わらない

    のが二人ともすごい。 物語後半、お酒も入ってしまっております。



 映画的な工夫としては、舞台ではできていないキッチンやバスルームでの各夫妻の



やりとりを近距離で映してあるところ。 それがマンションの一室というシチュエーションに



広がりを与えることにもなるし、それぞれのエゴもより自然にむき出しに。



 タイトルはミセス・ロングストリートがこだわっている“カルフールの大虐殺”から



とられたものだけれど、そのへんが結構さらっと流されていたような、インテリなスノッブ



ぶりがあまり鼻につかないようになっていて、なにせ79分という上映時間なのでテンポ



最優先なのか、ひとりひとりの深みが足りないような気もするんだけど・・・そこは全員



アカデミー賞受賞俳優ばかりだからという満腹感はあります。 個人的には女たちの



共闘をもっと見たかったけど。



   ジョディ・フォスターの素敵な笑顔は

    いっときだけ。 芸術を愛する面やら進歩的な面を強調するものの、

    真のインテリらしさが感じられないミセス・ロングストリート。 すごすぎる。



 ドライヤーと携帯電話、これだけの小道具で笑わせるのもさすがです。



 ジョン・C・ライリー、クリストフ・ヴァルツもまた役柄にはまりすぎ。 男の人ってわかり



やすいのか? 「こういう人、いる!」という説得力ありまくり。 特にミスター・カウマンの



どうしようもなさは(社会的には成功している人物なのだろうけど)、自分自身に正直



過ぎて潔さすら感じますわ。



   かといって、近くにいたら好きになれるか

     どうかわからないけど。 いや、意外に裏がなくて付き合いやすいかも?



 ただコブラーというお菓子についてはもう少し補足説明がほしかった・・・(舞台では



アップルパイとかになっていたような?)。 あたしは『ピーチコブラーは嘘をつく』で



知っていたけれど、そして以前ホテルデザートで見たことがあるけれど、ロングストリート



夫妻が出してきたのはイメージのどれとも違っていたので・・・。



 ポランスキーも含め、全員が肩の力を抜いて(といっても手を抜いたわけではなく)



楽しんでつくりました、みたいな映画。 そのくせ完成度が高いのだから、さすがとしか



言いようがない。 言葉の応酬を、もうちょっと見ていたかったけどね。



 おとなのけんかは不毛だ。 でもまったく関係のない他人から見たら、笑える。



 それは世界共通のことなのかも。


posted by かしこん at 04:38| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画 movie | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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