2011年12月25日

ロマンス/柳広司

 読み始めたらあっさり読み終わってしまった・・・270ページは少ないよ、もっと書きこんで500ページぐらいの分量があってもいい物語なのに。
 舞台は昭和八年、若き子爵麻倉清彬は幼馴染であり親友の多岐川嘉人(伯爵家の長男で帝国陸軍中尉)にある日突然呼び出された。 そこには親友とともに、見知らぬ死体が・・・それから始まる一連の出来事と、否応なく時代を見つめることになる一人の男と“ロマンス”の代償の物語。

  ロマンス柳.jpg この時代感が好きなのよねぇ。

 出世作『ジョーカー・ゲーム』のみで語られてしまうことが多いこの作者ですが、あたしは個人的に『饗宴‐シュンポシオン‐』が今のところいちばん好きだったりして。 裏切りだのどんでん返しだのというより、過去のある時代を描きだすのが非常にうまい人なのではないかと思っていて、そこは当然史実を下書きにしながらもあくまでフィクションであるという形。 小説や映画から歴史を学ぶ身としてはありがたい。
 というわけで単独のミステリとして見たらちょっと弱いというか、展開や解説も非常にクラシカル(というかあの時代に詳しい人にとっては明らかにネタバレ?)。 しかし祖母がロシアの没落貴族という“混血児”の宿命を持つ主人公のキャラクター造詣とかシリーズ化できそうなんだよね!(ある意味、『摩利と新吾』の摩利と共通の屈折感あり)。
 あと、日本の華族を描いた物語って結構好きなんですよね・・・“滅びゆくもの”の美学めいたものを勝手に感じるからでしょうか(勿論、高圧的なアホばっかり出てくるなら論外なのですが)。
 そして昭和八年を描いておきながら実は現在の空気感をも描いていたりとか(当然そこは意図的なんだろうなぁ、ちょっとあからさまではあるけれど)。 フィクションとしてあたしはこれをとても面白く読んだのだけれども、今の日本というものを考えたらひたすら哀しくなってくるというか、あぁ、日本がなくなる前に死にたいなぁ、と考えている自分もいるのだった。 “歴史”の前には国も個人も大した力も持たないはかない存在なれど、小さな積み重ねが流れを作ったり変えてしまうというものまた事実。 どう転がるかは誰にもわからない。
 だからこそ、清彬くんのその後が気になります。

ラベル:国内ミステリ
posted by かしこん at 04:10| Comment(0) | TrackBack(0) | ☆ 読んじゃいました | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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