2011年09月24日

未来を生きる君たちへ/HAEVNEN(IN A BETTER WORLD)



 再びデンマーク映画。 前回のアメリカゴールデングローブ・アカデミー賞外国語



映画賞受賞作。 配給にWOWOWも噛んでいるのでそのうちやるだろうなぁと思い



つつ、見たかったのでシネリーブル神戸へ。



   悲しみを越えたその先で どんな世界を見るのだろう



 医師のアントン(ミカエル・ペルスブラント)はアフリカの難民キャンプで医療に



従事する。 母親をがんで失った少年クリスチャン(ヴィリアム・ユンク・ニールセン)は



父親とともに祖母の家があるデンマークに引っ越してきたが、彼の心の中には怒りが



くすぶっている。 まったく関連のない二人の描写を交錯させながら、物語はいつしか



“二人の関わり”へと結びつく。



 アントンの長男エリアス(マークス・リーゴード)は学校でいじめられているが、



クリスチャンが同じ学校に転校してきて隣の席に座ることに。 エリアスの受けている



いじめが陰湿かつ執拗であり犯罪要素もありそうな中で、「よろしく」とお互いを笑顔で



見かわすエリアスとクリスチャン。 そのシーンだけで、あたしの目からぶわーっと



厚みのある涙が。 いちばん心揺さぶられた場面です!



 実はクリスチャン、母親の病状を正しく教えられてなかったようでそのうち治るのだと



信じていただけに実は手の施しようのない状態だったことに怒りが渦を巻いている。



母を助けられなかったこと、真実を知らされなかったこと。 だからエリアスをいじめる



やつらにも容赦なく対応し、「やられる前にやるんだ!」とばかりに荒っぽい手で



いじめてるやつらをやっつける。



 あたし、この考え方は否定はしないが(えらそうに手下にやらせて態度がでかいやつ



ほどいざ自分が殴られたり痛い目に遭えばひーひー泣きだすやつが多いからである)、



うまくやらないとまた仕返しされるし、仕返しする気がなくなるほどやっつければ親や



教師の介入が来る。 かといって殺したら警察に調べられるし、まったくめんどくさい



のである。 大人は簡単に「相手にするな」などというが、おとなしくしているからこそ



いじめる側は調子に乗るのだ。 そして子供は大人ではないので、そういう相手と



うまく付き合うなんて器用なこと、できはしないのだ。



   それでも子供たちとの時間を持ち、語りかけるアントン。



 だが、と思う。 アントンが難民キャンプで遭遇する理不尽な、不条理な暴力を



引き合いに出して考えなければならないほど、デンマークでもまた暴力は蔓延して



いるのか? そこまで極端なものと比較しなければ自分たちを取り囲む理不尽さに



説明をつけることができないのか? <暴力の連鎖を止めるのは赦しだけ>という



ことはわかるが、明らかにそれでは通じない相手に対してはどうしたらいいのか。



 エリアスとクリスチャンにあたしは同調しつつ「もっとうまくやれよ!」と応援したくなり、



彼らを理解しようとしない学校側の茶番劇に呆れて口が閉じない。



 そしてエリアスがついに発したSOSに気づくどころか自分のことで精いっぱいの



アントンに、失望する。 そう、大人は解決してくれない。 だったら自分たちで解決して



何が悪い?、と考えてしまうのは責められないと思う。 ただ彼らはその行動の先に



何が待っているか想像が足りなかっただけ。 そのあとを支えるのは大人の役割。



 なんとも、感情の持っていきがたい映画である。



 アフリカの描き方はあまりに類型的すぎる感じだし、エリアスとクリスチャンが通う



学校の対応も紋切型である。 二人の少年とその父親に絞ればまた変わってくる



ような気もするし、“理不尽な暴力”を振るう側も記号化されてしまって誰でもよいような。



 それでも心を動かされるのは、エリアスとクリスチャンの二人の存在故に、である!



 あたしはそれに、完敗(泣いちゃった・・・)。



 その年のデンマーク映画界ではこの映画よりも『光のほうへ』のほうが評価が高かった



ようだし、映画としての完成度もあたしは『光のほうへ』が上だと思う。 けれどこの映画を



デンマーク代表としてアメリカのアカデミー賞に出したってことが、デンマーク映画界の



したたかさというかアメリカ的映画の評価をよくわかっている感じがしてすごいと思った



(実際、外国語映画賞獲ってるし。 スサンネ・ビア監督のハリウッドでの評価がすでに



高いせいもあるだろうが)。 スケール大きい感じがしますし。



 ひどい状況を描きながらも最後には救いが見える。 甘いと言われようが、そんな



希望があると信じたいではないか。


posted by かしこん at 05:18| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画 movie | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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