2011年06月29日

コメットさんにも華がある/川原泉



 わーい、久し振りの川原泉の新刊だ〜!、と、小躍り。



 なんというか、この人も独特というか、独自の地位を築いているマンガ家だよなぁ、



と思う。 だからもう、一度はまったら抜けられないんですよ。



 『レナード現象には理由がある』に引き続く、超・進学校私立彰英高校シリーズ。



 とはいえ出てくる高校生たちは偏差値85とは関係ないほどにお気楽。



 そう、個人個人で様々な事情を実は抱えていたとしても、川原ワールドの登場人物



たちはみなそれぞれに“お気楽”なのである。 これか、ハマったら抜けられない理由は



これか・・・弱音を吐かないのも世の中を怨まないのも、我慢強いとか意地っ張りだから



とかではなくみなさん「さりげなく気遣いの人」だからだ(しかも本人は気遣いだとか思って



ないところがまた素晴らしい)。



 そんなお気楽な人たちの間で起こる『ボーイ・ミーツ・ガール』物語なれど、恋愛という



言葉はどこにも出てこない。 お互いの気持ちを確かめあったりもしない。 ごく自然に、



当たり前の日常の延長の中にある。 その加減がまた奥ゆかしいのです。



   表紙見てびっくり。 「え、ゾンビ?」



 連作短編方式なので主人公は変わるけど、クラスメイトや先輩後輩の関係で



前作の登場人物も引き続き姿を見せてくれるのもうれしい限り。 まぁ、だんだん



題材が過去の作品に似ているぞとか、今作者が興味のあるものを使ってるな、とか



いう部分もありますが、それがわかるのもまた長年川原作品の読者である証拠!



 タイトル作であり表紙を飾る少女はゾンビ映画が大好きで、「何故ゾンビ好きか」の



理由もまた切ない(そもそもロメロがゾンビ映画作り続ける原動力も、本質的には



“人間嫌い”ですし)。 なんかわかるわー、と共感(しかしその熱意は彼女に完全に



負けているあたしなのだが)。



 そして例によって蘊蓄を通り越した説明も健在で、楽しい。



 今回は化合物としてのペプチドについてと、グレシャムの「悪貨は良貨を駆逐する」の



話と近年ではハイエク氏が「反グレシャムの法則」を提唱しているらしいという補足知識



までいただきます。



 それはもう、「役に立つか立たないかわからない知識なんて持っていてどうする!」に



真っ向から反対する、「無駄な知識などない! 役に立つか立たないかなどという次元で



見るものではない」という静かな主張である。



 あたしはそれに賛同しております。



 基準は“役に立つか立たないか”ではなく、“面白いか面白くないか”のほうが面白いに



決まっているではないか。



   是非、併せて『レナード現象にも理由がある』も読みましょう。



 高偏差値高校の話といえば『バビロンまで何マイル?』もそうですが、川原ワールドでは



偏差値の高さは「サバイバル能力」や「不測の事態に対して素早く順応する能力」や



「知っている断片的な知識をつなげて考えることができる能力」などに変換されている。



 つまり、“真の教養人”への道、なのである。



 あたしの目指したいのはそこなのか? だから、やめられません。


posted by かしこん at 00:54| Comment(2) | TrackBack(0) | ☆ 読んじゃいました | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
懐古庵さま<br>
コメントありがとうございます。<br>
わーい、同じく川原イズムファンなのですね、うれしいです。<br>
私は『笑う大天使』あたりがリアルタイムで読み始めたかな・・・で、<br>
それから遡って単行本全部揃えました。<br>
最近の作品はMacで描かれてるみたいなので、この『〜には(にも)<br>
・・・がある』シリーズは以前に比べたら絵のタッチが結構変わっていて、<br>
違和感を持たれるかもしれません。でも中身は、健在です。<br>
食べるときの擬音は当然、「もぎゅもぎゅ」です!
Posted by かしこん at 2016年12月04日 12:51
おはようございます。<br>
川原泉。なつかしい。学生の頃に大好きでした。絵の方は決して技巧派ではないけれど。とぼけたキャラクターの味とか根底に流れる川原哲学のようなものがツボでした。最近は漫画自体から少し距離をおいてしまっているので読んでいませんでしたが、記事を読んでいてムズムズ食指が動きだしたので近々、読んでみようと思います。
Posted by 懐古庵りゅうこ at 2016年12月04日 12:51
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