2011年06月26日

マーラー 君に捧げるアダージョ/MAHLER AUF DER COUCH



 正統派のドイツ映画なのかなと思ったら、意外にもトリッキーなつくり。



 オープニングクレジットもちょっと洒落てるし、テロップで<起こったことは史実、



どう起こったかは創作>と最初に断言してしまうのもいい。



 グスタフ・マーラー(ヨハネス・ジルバーシュナイダー)は神経症に悩まされ、



先進的な治療をしていると評判のドクター・フロイトを訪ねる。 「あなたの苦しみは



若い奥さんを満足されられてないと感じているからだ」とずばりと言われて立腹した



マーラーは席を立ち、街を彷徨するがついにフロイトに妻・アルマ(バルバラ・



ロマーナー)との日々を語り始める・・・という話。



   おじさん二人。 右:フロイト、左:マーラー。



 マーラーとフロイトって同時代人なんだ!、ということにびっくりです(あたしは歴史の



年表的なものに弱くて)。 で、邦題はいかにも音楽に絡んだ壮大なラブロマンス的な



感じだけど、原題を直訳すれば『カウチに横たわるマーラー』ってところ?



 若干、看板に偽りありかも・・・。



 マーラーが語り始める妻アルマ(バルバラ・ロマーナー)は年下男との浮気をやめない



奔放な女。 だが実は・・・そこにはこの二人だけに通じる“夫婦の本質”が隠されていた、



という話。



 意外にも音楽家としてのマーラーを描いた部分は非常に少なく(音楽としては使われて



いるけれども)、人間関係重視な話。 しかも合間にアルマの母とかにインタビューした



みたいな映像が挟み込まれ、ちょっとドキュメンタリータッチ?! 時代モノでこういうの、



面白いと思いました(笑えるポイントもあるし)。



   アルマは当時の社交界の華。

     クリムトのモデルをやって迫られたりするも軽くいなしていた。 アルマを

     描いたクリムトの絵はその後、アルマの部屋の壁に飾られることになる。



 アルマもまた、ピアノを弾き自分で作曲もする人。 そしてやっぱり出てくる対位法。



この感じ、『ナンネル・モーツァルト』と一緒だぞ、と思っていたら・・・マーラーは「趣味で



ピアノを弾くぶんには構わないが結婚するならマーラーの妻としての義務を全うせよ



(つまり「作曲」はやめろ)」と言うようなやつで。



   しかもプロポーズの言葉、なし。

     出会った瞬間から結婚することに決めてました、的な態度は何様ですか!

     しかもアルマが反対するとはこれっぽっちも思っていない・・・19歳も年上の

     くせに、ちょっとは遠慮というものを知れ。 それとも「自分は天下のグスタフ・

     マーラー」だからなんでも許されると?



 まぁ、やっぱりそういう時代だったからかもしれないけれど、結婚前は「素晴らしい



才能だ」とか言っておきながらそれはなに!、である。 しかしこんな自信満々な



態度も、自らの年齢の衰えとともに失われていくわけですね・・・哀れだ。



   それでも、アルマは彼を愛していたようである。



 愛するが故に相手のために献身的に尽くしたい気持ちと、自分自身の内側から



あふれる「自分の音楽をやりたい」という衝動の両方に引き裂かれるアルマの姿は



とてもわかりやすいのに、男性から見たら全然わからないのね・・・という「偉人と



いえども実は情けない男です」なシリーズにカウントされちゃうかも。



 『君に捧げるアダージョ』の“君”とはグスタフ・マーラーのほうだったのではないか。



アルマがどれほどの犠牲を払ったか(悪妻と思われる部分も含めて)、彼は本当に



その愛の深さを理解したのだろうか。



 女の忍耐ってすごいわぁ(でも一度見限っちゃうと切りかえ早いけどね)、としみじみ。



 驚いたことに監督は『バグダッド・カフェ』の方だそうで・・・恋愛を一筋縄では描かない



ところは共通してる部分あるかも


posted by かしこん at 04:48| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画 movie | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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