2011年03月27日

クリスマス・ストーリー/UN CONTE DE NOEL



 アルノー・デプレシャン監督作品でマチュー・アマルリックが出る!、となれば



見ないわけにはいかない一本。 しかもドヌーヴも出る! が、2時間半の作品を



神戸アートヴィレッジセンターで見るのは少々きついのも事実である(だって座席が



パイプ椅子にクッション敷いただけなんだもん)。 しかし他の映画館でやってない



のだから選択肢はないのよ。



   クリスマスには魔法が?



 ある年のクリスマス前後のヴュイヤール家で起こる数日間の出来事。



 まず前段として、ヴュイヤール家の人物紹介とその確執やらを影絵風紙芝居で



表現(ここ、すごく楽しかった!)。 幼少の長男が白血病で余命いくばくもないことが



わかり、母ジュノン(カトリーヌ・ドヌーヴ)は妊娠中の子供の臍帯血に望みをつなぐが、



生まれた次男アンリ(マチュー・アマルリック)とは適合せず、長男は死亡。 その後、



長女エリザベート(アンヌ・コンシニ)、三男イヴァン(メルヴィル・プポー)と



夫妻は子供に恵まれるも、アンリは“みそっかす”扱い。 いつしか家族の厄介者と



なった彼はエリザベートから絶縁を言い渡され、姿を消す。



   ヤク中なのかアル中なのか、

            突然ぶっ倒れるアンリのシーンは印象的すぎる。



 しかしその年は事情が変わった。 ジュノンの病気がわかり、夫であり父親の



アベルは家族全員を揃えたいと願う。



 一見、穏やかなクリスマスの夜。 ついにアンリがあらわれて、さざ波が大波を



誘うようにいつしかそれぞれの心に潜んでいた気持ちがあらわになる。



   資産家一族なんでしょう、いろいろゴージャス。



 さすが、フランス映画オールスターキャストです。 章立てっぽくなってるせいも



あるけど、長いのに飽きない。 しかも大した話があるというわけでもないのに、



ひとりひとりのキャラクターがしっかりしているので(それぞれが主役で一本映画が



できそうなぐらい!)ひきこまれて見せられてしまいます。



 特にマチュー! これでもかというほどのダメ男、好演。



 最初のイメージでは顔見せ的な役柄なのかなと思ってたんだけれど(デプレシャンの



映画なんだからマチュー出て当然でしょ、的な友情出演かと)、がっちり出てます!



すごくうれしい! そして一家の父アベルを演じるジャン=ポール・ルシヨン氏、



カトリーヌ・ドヌーヴの夫にしては貫録不足か・・・と思っちゃったけど後半に



向かって彼の静かな包容力がじわじわときいてきて、失礼なこと思っちゃって



ごめんなさい!でした。



   この二人の会話が短いし地味なれどいい!



 そしてアンリを病的なまでに忌み嫌うエリザベートは、『華麗なるアリバイ』の



美人さんではないか! かなりイヤな女に描かれてますが、でもその神経質で



潔癖症な感じ、共感できないわけでもなく・・・そう、どの人物もそれぞれいい



ところもよくないところもしっかり描かれ、その場面場面で感情移入できたり



できなかったり。 まるで現実に交流を持つ相手に対するように印象が変わります。



 明らかに、“普通ではない家族”。



 けれど自分の家族はひとつだけ、何を基準に比較したらいいんだろう。 どこの



家とも違うのは当たり前なんだけど、それでも共有できる普通さとはなんだろう。



せめてそれがわかれば、「おかしいのは自分じゃない、この家族なんだ」って



わかるのに(現実にもそれで多くの子供たちが救われるだろうに、悲しいかな



そのことに気がつくのは大人になってからだし、場合によっては気がつかない



ままの人もいるし)。 なんだか考えさせられる〜。



 どんな家でも、家族は家族。 それは自分を縛る鎖であり、でもときには



自分を支える棒にもなる。 そんな複雑さに苛立つよりは、黙って受け入れる



べきなのかしら。 そのほうが、自分自身の心をすり減らさないですむのかしら?



   フランスでもクリスマスは特別なのね〜。



 デプレシャンの前作『キングス&クイーン』はまだ見ていないのですが(WOWOW〜、



お願いだから放送して〜)、『エスター・カーン めざめの時』よりも表現手法が



ぐっとわかりやすくなってると思う。 結論をぼかす曖昧さは健在ですが、それでも



随分とエンターテイメント化しているというか、難解さはあるんだけどそれが



そんなに気にならないというか。 カットの切り替えの際に周囲を黒にしながら



ある部分に丸のフォーカスだけ残したり、また別の丸から画面の黒を取っ払って



明るくしたりといった奇妙に古典的な手法(アイリス・イン、アイリス・アウトと



いうそうです)の多様が、物語の寓話化をより強めている気がしたり。



 それが彼の円熟さを表しているのか、それともオールスターキャスト映画だから



このへんで手加減しといてやろうという感じなのかはわかりませんが。



 やっぱりフランス映画は独特だなぁ、と思いつつ、こんな濃い映画ばかりつくる



からデプレシャンは寡作なのかなと考えたり。 やはり彼は只者ではないわ〜。



 この映画に結論はありません。 それでも希望は見える。



 だって人生は続いていくのだから。


posted by かしこん at 16:43| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画 movie | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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