本編始まる前の予告放映時、『さらば愛しの大統領』で客席は爆笑で包まれて、あたしは唖然とする。 ナレーションの遠藤憲一さん同様、「(東京生まれの私には)何が面白いのかさっぱりわかりません」だったからである。 関西の笑いに対する空気をこんなところで実感するとは・・・。
おかげで、ちょっとしたコメディの『ヤギと男と男と壁と』、ものすごいゲラ青年が一人いたおかげで笑いの渦が起こります。 でもあたしとはツボが違うのね・・・あまりに笑いすぎる人が近くにいると、なんだか醒めてしまうあたしなのだった。
ジャーナリストのボブ(ユアン・マクレガー)は妻に捨てられたことで自暴自棄になりイラクに。 途中でリン(ジョージ・クルーニー)という男と出会い行動を共にするが、実は彼は米軍の極秘任務を帯びた超能力部隊の一員で・・・という話。
冒頭からすごい目力の持ち主のアップで、あたしはおかしくてしょうがない。
その人物が次にしでかすことがおかしいのではなく、真剣で大真面目な佇まいがおかしいのです(しかもよく見たらそれはスティーヴン・ラング氏で、『アバター』のときとはまったく違うし)。 ユアン、ジョージ、ジェフ・ブリッジス、ケビン・スペイシーなどなどビッグネームが揃いも揃って大真面目にこんなおバカをやっている、というのが本作の肝です。
ジェダイ計画について熱く語るジョージをぽかんと見詰めるユアン、という構図も笑っちゃうね!(ジェダイの騎士本人の前で言うのか、的な)
そして基本的に会話劇なので、台詞がすごく面白い。 また間がかなり活かされているのでなかなか楽しいのだ、ちょっとユルめだけど。 一応実話ということでドラマティックさには少々欠けているかもしれないけれど、そのテンポは捨てがたい。
けれど、超能力でイヌやネコは殺すのに忍びないけれどヤギならばOKって・・・それもなんだかなぁですが、欧米キリスト教では家畜は持ち主の財産として捉えられるので、日本人の「確かに日本人はクジラを食べるが、あななたちだって牛を食べるじゃないか」という主張は理解してもらえないらしい。 牛は家畜だから所有物、所有物は食べるのが当たり前だけどクジラは天が遣わした海の恩寵だから、ということらしい。 海産資源を海の恵みとしてありがたく頂いてきた日本とは根本の考え方が違うのね・・・わかりあえるのかしら。
とはいえただおバカなだけかといえばそれは違って。 時代的にラブ&ピースのヒッピー文化やニューエイジ思想を扱ってはいるけれど、「自分たちの価値観が正しいもしくは善である」という発想の恐ろしさについて堂々と告発した作品。
洗脳 = ダークサイド。 どんだけアメリカ人はスターウォーズが好きなのか。
ただ、あまりにつくりがユルいために、LSDがピースなヤクであるかのように感じてしまいそう(勿論、それで身を滅ぼすと描かれてもいるのだが)。 そういう意味でもとても毒にあふれた話だなぁ。
ちなみにあたしにいちばんツボだった台詞は、「アンジェラ・ランズベリーに聞け」。
エンドロールでボストンの曲が流れたのにはダメ押しで笑ったし。
いささか結末が「ありがち」に流れたけれど、でもなんかキライになれないのよねぇ。よく考えたらひどい話なんだけど。 それもまた、力ある役者たちの化学反応?