というわけで1月5日レイトショーで観た映画はテレンス・マリック監督作『ソング・トゥ・ソング』でした。
しかし兵庫県も緊急事態宣言を要請となり、来週からレイトショー枠がなくなる気配・・・いや、開けてもらえてるだけいいのか、仕事も減りそうだから昼間に行けばいいのだろうが・・・普段動かない時間に動くってどうなんだろう、とか考えてしまう。
音楽フェスが数多く開かれる街、オースティン。 音楽に魅入られ、その仕事をしたいと願いつつも形に出来ないフェイ(ルーニー・マーラ)はいつしか音楽プロデューサーのクック(マイケル・ファスベンダー)の愛人になっていた。 が、あるパーティーで出会った売れないソングライターのBV(ライアン・ゴズリング)と何かを感じ合う・・・。
と、あえて言おうとすればそんな感じなんだけれど、実は説明的な描写や物語的なものが一切ない。 テレンス・マリック×エマニュエル・ルビツキの映像叙事詩。 豪華キャスト起用は、顔がわかる人じゃないとシーンが切り替わったときに誰が誰だかわからなくなるからじゃないかな・・・というか、あたしの知っている人ばかりで助かった。
まさか“音楽フェスの観客になっている”ことがこんなにも幻想的で奇跡のように美しいとは。 というわけで映像は素晴らしいのですが、話の筋を追いたい人にはイライラする展開に・・・『ツリー・オブ・ライフ』以後の映像叙事詩的流れが極まったものだとわかってないとつらいかも(わかってなかったですが、「あ、そっちなのね」と冒頭で納得)。
テレンス・マリック作品は『シン・レッド・ライン』が最初で、それはすごく好きでいいと思ったのですが(ジム・カヴィーゼルもそれで好きになりましたよ)・・・今回は『ツリー・オブ・ライフ』・『騎士たちの聖杯』にもこんな場面なかったかな?、と感じること多々。 絵画のような美しさだから記憶に残ってる――実際にはいろいろ違うんだろうけど、印象として近いというか。
では音楽がメインなのかといえば・・・そこまでではない感じ。 映像の力が強すぎて、楽曲がBGMになってしまった感(個人的に大切な曲が流れていたらまた印象が変わるだろうけど、あたしはそうではなかった)。 “SONG”とは、様々なインスパイアそのものであるということはわかった気がする。
あやういルーニー・マーラはとても美しいです。 フェイはステージでギター弾いてるけどプロミュージシャンではない様子・・・自分探し中のフリーターといった感じか。 ここではないどこか・ここにはないなにかを探している人って定番だけど、それが痛々しく感じてしまうのはもうあたしは若くないってことですかね・・・(でもテレンス・マリック監督は70代後半なはず、すごい)。
マイケル・ファスベンダーの役も『それでも夜は明ける』の農場主や『SHAME』の主人公を思い出させるキャラ・・・同じような役ばかりは少し悲しくなるけど、それも人物説明をしなくてすむためなのだろうか。 ナタリー・ポートマンそんな役なんだ!、と思いきや、ケイト・ウィンスレットは更に「そんな役!」なのでびっくり。
「人生にいろいろ悩んだけれど、結局私はこう選択しました」という話ですよね・・・と思っていたら、ラスト間近でいきなりキリスト教的倫理観というか、女性にかけられる社会的呪いを受け入れているような展開に・・・えっ、なに、価値観の古い説教?!、と愕然とした。
気のせいか、あたしの考えすぎか・・・今年最初の映画なのに、なんだか気分が重くなる。 エンディングの音楽に、助けられたけど。