読書会つながりで発見したノンフィクション。 一年間の記録なので結構長く、かといってストーリーとして大きくつながっているわけではないので、途中まで読んで結構放置してしまった。 でもこれは月に一章ずつとか、実際の読書会のような日程で読むのがいちばんいい形なのかも。 季節の移り変わりとかも追体験できるし。
友人のキャロルに誘われて、ジャーナリストのアンはボランティアとして一年間、2つの刑務所での読書会運営に携わった際の出来事、読書会であがった会話、受刑者たちとの交流などをまとめたもの。 受刑者たち(その後、刑務所を出た者もいる)の名は一部変更されている。
読書会の課題図書がなかなか幅広く・・・キャロルは人間の素晴らしさとか向上心とかが書かれている本を選びがちで、でもそれは受刑者が立ち直ることを信じているから的な図太いまでの性善説。 一方、アンはかつて自宅近くの路上で強盗に遭ったことがあり、いまだにそのときの恐怖感はトラウマで、そんな自分が読書会とはいえ刑務所に足を踏み入れることに躊躇する。 ボランティア側にも多数の事情があるように、受刑者側の事情も本を読んだ感想を聞くことで漏れ出てくる。
そして次第に気づく。 「刑務所は受刑者同士が孤立している場所だというのに、 この読書会でなら、人種や民族や暴力団の派閥の壁をやすやすと越えられる」 、読書会の意義を感じたら、アンから恐怖心はだいぶ薄れる。 そして受刑者とはいえ、本の感想を述べる姿は“人間”、どんな犯罪を起こしたにせよ、アンにはその姿が想像できない。 過去はどうあっても、今、自分の目の前にいるのがその“犯罪者”だということを忘れてしまうとか、意識しなくなったり。 読書会を通じて順調に更生の道を歩む人、更生しかけたけどまた舞い戻ってくる人、様々でリアルだ。
また、扱われている本が王道の『怒りの葡萄』から、マーガレット・アトウッドの『わが名はグレイス』とか、ベストセラーのノンフィクション、話題のビジネス本とか、多岐にわたっているのがすごい(またそのうち8割ぐらいが日本語訳が出てる・・・日本って翻訳文学頑張ってるなぁ)。
さすが読書会の本場! 『ガーンジー島の読書会』も題材に上がってて、ニヤニヤした。 読んだことのある本もあるけど、読んでない本もあるから、読んでない本が読みたくなる。
翻訳の向井和美さんはプライベートでも読書会を開いているようだ。 しかも彼女を誘ったのが東江さんだという・・・あたしも遠回しに東江さんに誘われている気がする・・・こういうつながりが意図しないところに現れて、あたしは人と人とのつながりを感じて驚く。
ラベル:ルポルタージュ