2020年10月07日

グッド・ドーター/カリン・スローター

 これも下巻途中でしばし放置してた。 『苦悩する男』を読むのが先か、こっちが先かのせめぎ合い。 目論見ではこっちを先に読んでしまうつもりだったんだけど・・・『苦悩する男』の後半には何も止めることができなかったのだ。 だからその次に、こちらを読み終えた。
 痛みを伴う物語だった。 それぞれの過去の傷ゆえに、普通の会話ができなくなってる(質問に素直に答えず質問で返し、爆発する感情を迂回させて言葉にする。 話を進めるよりも意地の張り合いのほうが目的になり、何を話しているのかわからなくなる)、そんな姉妹と父親、もう今は言葉を紡げない母親との関係。

  グッド・ドーター1 カリン・スローター.jpgグッド・ドーター2 カリン・スローター.jpg 姉妹の葛藤と、両親への愛を求める気持ち。
 ジョージア州の田舎町パイクビルにて。 1989年に人権派弁護士ラスティ・クインの家が放火され全焼。 ラスティの妻ハリエット(ガンマ)と娘のサマンサ(サム)とシャーロット(チャーリー)は町の空き家にあわてて引っ越したが、その数日後には散弾銃を持った二人の男がその家を襲撃する。 ガンマは死亡、サムは頭を撃たれて死んだと思われて生き埋めにされ、チャーリーは九死に一生を得る。 ラスティは凶悪犯とされる人物の弁護をし、少し前にもひどい罪を犯したはずの男が無罪判決で釈放されていて、そのために襲われたのだと後遺症に苦しむサムは父を憎み、大学進学と同時に家を出て音信不通に。 チャーリーは町に残り、弁護士となり父とともに仕事をする。
 28年後、チャーリーはその朝、町の中学校にいて、銃乱射事件に立ち会ってしまった。 駆け寄ると、銃を握っているのは18歳の少女。 ラスティはその少女ケリー・ウィルソンの弁護を担当するが・・・チャーリーには過去の記憶がよみがえる・・・という話。

 物語はサム視点で始まり、その後チャーリー視点に。 そしてまたサムになり、またチャーリーに。
 母のガンマは冒頭で死んでしまうが、なんとも強烈なキャラクターなのでいないことがより娘二人への影響を強くする。 きちんと母に認められたかった・愛されたかった気持ちがサムとチャーリーをときに侵食し、二人の認知を歪ませる。 やはり、母と娘の物語だった。
 父親のラスティに関してはいまいち性格が読み切れないのと、弁護士特有のはっきり言わない言い回しのため好感はまったく持てないんだが、傍から見たらそういう父親だからこそ実の娘にとっては愛憎半ばになるのかなぁ。
 とはいえサムもチャーリーもひどい目に遭った過去を清算できておらず、直接会って話すたびにお互いを傷つけることに。 事件はラスト近くで急展開を迎えるが、ページが多く割かれるのはサムとチャーリーのこと。 根底にあるのは女性に押しつけられる不自由さ、抑圧だと二人が心底気づき、理解するくだりは胸が痛い。 なんでそういう言い方しかできないのか、とつい感じてしまってた二人に、そういう風にしか気持ちを表せないのだと気づいて詫びたくなる。 いや、詫びてもしょうがないのだが、一面だけ見て判断しない、読者の価値観を押し付けない、そうしてたら大事な本質を見失う。 あたしの認知の歪みも、ここで矯正する。
 でもこれが、カリン・スローターの醍醐味なんだけどさ。

ラベル:海外ミステリ
posted by かしこん at 03:30| 兵庫 ☀| Comment(0) | ☆ 読んじゃいました | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする