2020年10月02日

スペシャルズ! 政府が潰そうとした自閉症ケア施設を守った男たちの実話/HORS NORMES

 「『最高のふたり』の監督、エリック・トレダノとオリヴィエ・ナカシュが再び取り組んだ実話」ということで注目。 予告も結構繰り返し見せられてしまったし。 しかしうかうかしているうちに公開が終わってしまいそうな気配・・・急げ、ラストスパート!

  スペシャルズ!P.jpg 愛はどうだ!

 自閉症ケア施設<正義の声>は、他の施設が受け入れない子供たちも受け入れているため、運営代表のブリュノ(ヴァンサン・カッセル)はいつもおおいそがし。 友人のマリク(レダ・カテブ)はドロップアウトした若者たちを教育する団体<寄港>の代表で、<寄港>の若者たちは<正義の声>で働いていて協力し合う関係だ。 しかし<正義の声>は無認可で、ついに当局の監査が入ることになる・・・。
 あっ!、艦長(レダ・カテブ)、いた!! これか、この予告で観てたから「見覚えがある」だったのか・・・でも雰囲気は全然違うんだけど、それを同じ人だと認識できた自分、すごいな(あたしは人の顔があまり覚えられないタイプなので)。 というわけでマリク寄りで観てしまったかもしれない。 でもヴァンサン・カッセルもクセの強さが程よく抜けてきて、いい感じになってきてるなぁ。

  スペシャルズ!1.jpg ヴァランタンは自傷傾向が強いため、安全のためにヘッドギア着用を医師から決められている。
 この映画では、自閉症患者たちのことを詳しく説明しない。 ブリュノもマリクも他のスタッフたちも、患者それぞれに個別に対応して、「これはこうだから」みたいに分類しない。 個性を受け入れている。 むしろ、これまで薬をたくさん投与され病院や施設に閉じ込められてきた彼らに、自分を取り戻してほしいと思っている。 それを観客たる自分が状況を受け入れるのに少し時間がかかった。

  スペシャルズ!2.jpg <寄港>は元不良なやつばかりではなく、様々な事情で居場所を持てない若者たちが辿り着く場所。
 <寄港>の若者たちの個人的な事情にはあまり踏み込んでいないんだけど、察することはできる。 なので、「理解してもらえない」と暴れただろう彼らこそ、どうしていいかわからない<正義の声>の自閉症患者たちの気持ちに寄り添えるんじゃないのかと感じる。 彼らには福祉関係の資格もないけど、現場で学んでる。 またマリクもちょっと言い過ぎたりしてまったく聖人君子ではないのだが、自分の気持ちに正直で表裏がなく、若者たちにも全力でぶつかるし責任は自分が取ると腹をくくっている。 この人はいったいどうしてここに辿り着いたのか知りたくなった(ブリュノと友人になったのはお互いの組織が協力関係になったのがきっかけのようだ)。

  スペシャルズ!4.jpg ブリュノが何故<正義の声>を立ち上げたのかの理由は明かされる。
 自閉症のジョセフへの対応に疲れ切ったジョセフの母親が、たまたまブリュノに会って全部をぶちまけると、彼はジョセフを連れてキャンプに行った。 キャンプから帰ってきたジョセフは見違えるほどになっていたので、母親はブリュノを心底信頼している。 無認可なのも問題ない。 その分、ジョセフはかなりブリュノに頼り切っている・・・。
 ジョセフには少し知的障害があるのか、それと対人関係の距離感がわからない。 そういう人が仕事場にいるとしたら自分はどう振る舞えばいいのか・・・あまり経験はないけど、そういう人は「ちょっとクセがある」と思って「どういえば通じやすいか」を考えていたつもりだけど、仕事場でやり取りするだけだから。 ブリュノやマリクのように体当たりはしてないし、多分できない。

  スペシャルズ!3.jpg ヴァランタンの担当ディランの困惑と葛藤が<寄港>の若者を代表して描かれる。
 助けを必要としているのは<正義の声>の患者たち、<寄港>の若者たちだけでなく、ブリュノも。 頼まれたら断れず、施設の定員オーバーになるくらい患者を受け入れて(他に行くところがないから)、常に資金不足でスタッフへの給与も遅れがち。 いつも誰かが電話をしてくるから、プライベートの時間が皆無。 そこまでしないとできない、でも本来、それは行政側がやるべきことなんじゃないの? 摘発する前に助成すべきなんじゃないの?
 邦題は説明を過度にしないこの映画に反して説明調でダサいが、原題“HORS NORMES”は「規格外、枠から外れた」の意。 そもそもその「基準・規格」って正しいの?、というのがブリュノやマリクの主張であり、監督たちの想いでもあるのかな。
 「こんなん、日本では考えられへんわ」と映画館を出るときに喋っている人がいた。 それは、専門の勉強もしてなくて資格のない者が世話をすることか? トラブルを起こしかねない自閉症患者を町に一人でうろつかせること?
 いやそうなるべきなんじゃないの、日本でも。
 窓から落ちるのは電子レンジでよかった・・・。 そして観てよかった。

posted by かしこん at 23:59| 兵庫 ☀| Comment(0) | 映画 movie | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする