休館明けの市立図書館からの比較的早い呼び出しのメール。 予約本が来ましたよ、とのこと。 出掛ける日に合わせて取りに行く。 本年度本屋大賞受賞作として一躍脚光を浴びていますが、あたしが予約を入れたのは受賞よりもずっと前。 だからこのタイミングで借りることができたのだろうと思う。 本屋大賞が決まってからなら、予約も相当待たされることになってるかも・・・。
日本人の初めて読む作家には躊躇いがなくもないんだけど、ひいきの出版社である東京創元社がイチオシだということで気になってました。
これはあらすじを言うのが非常に難しい。 何を言ってもネタバレというか、先入観になってしまいそうだから。
それぞれの事情により孤立する魂が出会い、互いに救いを求めるのだけれど、社会情勢や世間の目がそれを許さず、更に孤立してしまう人たちによる、「孤立したって、一緒にいられればそれでいい」という結論に辿り着くまで。
本作は佐々木丸美『雪の断章』・桜庭一樹『私の男』・V.C.アンドリュース『屋根裏部屋の花たち』らの系譜につながる位置づけになるのではないか・・・勿論物語は同じではないですが、心の傷(トラウマ)を抱えた主人公がカウンセリングなどものともせずに自分の信じるところにまっすぐ向かっていまう・・・というところに通じるものがある。 これらを読む年齢・自分の状況によりぐっとはまってしまい、忘れられない一作になるタイプ。
あたしは、思春期に『雪の断章』を読んだので・・・これがあたしに与えた影響は書ききれないくらい。 うまく言語化できないほどに自分の中に入ってしまっているので、あたしには『流浪の月』は『雪の断章』ほどではなかった。 でも、思い出させてくれた。 だから、そういう作品を読んだことのない人にとっては、『流浪の月』はあたしにとっての『雪の断章』になるくらいのポテンシャルを秘めているのではないか。 内容もネット社会の生きづらさが描かれてますし、若い人向け・あまり文芸書を読んでいない人向けか。
まぁ、それこそ本屋大賞にふさわしい作品なのかもしれません。
もうおばさんであるあたしにはちょっと物足りなかった・・・現実のいちばん厄介な部分をスルーしてる感じがあったから。
『流浪の月』というタイトルも、もうひとひねりほしかった。 「目立ってどうする」なのかもしれないけれど、他のどれにも似ていない、唯一無二のタイトルだったらまた印象が変わったかもしれない・・・。
結局、3・4時間ぐらいで読んでしまった気がする。 類型っぽいところがあったので早く読めた。 書かなくてもわかるところは書かなくてもいい、書いていないところをもっと掘ってもよかったのでは?、と思ってしまうのは長い海外ミステリばかり読んでいるせいか・・・。
そんなに親しくはないけど、それなりに会って話す人についてどういう距離感がいいのか、割と考えているつもりだったけど、これ読んで更に考えてしまう・・・。
ラベル:国内文学