2020年06月06日

ハリエット/HARRIET

 3月27日公開予定だったのである。 が、前日に公開延期が決まり、十日後ぐらいには映画館もほぼ営業自粛による休業に入った・・・というかなしいめぐりあわせの映画。 アカデミー賞授賞式でフッテージを観たり主題歌を聴いた記憶もやや薄らぎ、「あれ、19世紀の話だよね?」と不安になってきた。 6月5日(金)が出勤なので木曜の夜に映画館のホームページをざっくりはしごしたら『ハリエット』が公開になると知り、急遽最終回18時25分からに行った。 神戸国際松竹、悲しいほどにガラガラであった・・・。

  ハリエットP.jpg 彼女は一度も失敗せずに奴隷から英雄になった。

 1849年、アメリカ、メリーランド州。 ブローダス農場の奴隷ミンティ(シンシア・エリヴォ)は奴隷の母から生まれ、奴隷として生きていた。 結婚し自分も子供を持つことを考えたミンティだが、農場主(奴隷主)から「お前の子供も私の奴隷だ」と言われ、「自由か死か」と逃亡を決断、北のペンシルバニア州を目指す・・・という話。
 そうあってはいけないのだが、タイムリーな映画になってしまった。 所属の違う奴隷同士が結婚して、子供が生まれたら母親の奴隷の持ち主のものになるという発想(?)にびっくり。 子供は母親の従属物という考え方なのか? それとも押しの強い農場主が自分のものにするための屁理屈なのか。

  ハリエット1.jpg 序盤のミュージカル演出に驚愕。
 歌がね、とにかく素晴らしいのです。 ミンティの歌も、牧師さんの歌も、<黒人霊歌>ってこういうものか!、という。 悲惨な奴隷の窮状も歌を介すことで目を覆わなくて済む(それがいいかどうかはわからない)。
 映画自体はなんというか・・・『あぁ無情』みたいな感じがした。 すごく長い話を一本の映画にまとめたんだろうな、という(それでも125分あるのだが)。 うまくいきすぎるというかいい部分だけつないだようなところはあるんだけど、ミュージカルテイストな分、リアルタッチじゃなくても気にならなくなってくるから狙い通りなのかな。
 とにかくハリエット(自由になったミンティが改名)を演じるシンシア・エリヴォあってのこの映画。 本人が歌うことも含めての、ハリエットになり切った存在感ですよ。

  ハリエット2.jpg ミンティに執着する農場主の息子ギデオン(ジョー・アルウィン)もなかなかよろしい。
 登場人物はわかりやすく類型的なれど、たまに笑いをとる場面があり、人間くささがほの見える。 そんなところも舞台のアドリブっぽく感じたり。
 社会派ではあるんだけど大河ロマンの趣きもあり。 とはいえ、自由黒人や地下鉄道といった当時の背景についての説明は最小限なので、事前に多少の知識がないとちょっと厳しいか。 でも「あぁ、南北戦争のきっかけってそういうことか!」と腑に落ちました。

  ハリエット3.jpg 南北戦争のあたりはかなり駆け足。
 ハリエット・タブマンはアフリカ系アメリカ人として初めて20ドル紙幣の肖像に採用されることが決まっているそうで・・・アメリカではある程度知ってて当たり前なのかな。 それにしても奴隷制度って・・・人種差別って二百年ぐらい前の感覚を今も引きずってるっていうことなのかと。 あの当時のことを知っている人はもう誰もいないではないか。 なのにそんな感覚だけ残っているってなんなんだ。
 あたしが知っている範囲でも、「白人警官による黒人への傷害致死」は何件もある。 そのたびにデモが起こったり暴動が起こったり・・・多少は変わっているのだろうけど、本質的な何かは変わっていないのか。
 そんなところにエンディングの“STAND UP”、じわじわと涙がこみ上げる。

  
 あぁ、音楽に込められた希望ってすごい。

posted by かしこん at 19:14| Comment(0) | 映画 movie | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする