2020年03月15日

黒い司法 0%からの奇跡/JUST MERCY

 もうタイトルから内容は大体わかってしまったようなものだが・・・マイケル・B・ジョーダンとジェイミー・フォックス共演につられて。 『フルートベール駅で』の彼がこんなスターになっちゃうとは思ってなかった。 それに、日本よりアメリカの法廷もののほうがわかるような気持ちになってしまっているので・・・。

  黒い司法P1.jpg 今こそ、【真の正義】を問う
  1980年代アラバマ州。立証不可能な冤罪に挑んだ男の、心揺さぶる“奇跡の実話”

 1980年代のアラバマ、仕事帰りのウォルター(ジェイミー・フォックス)はまったく身に覚えのない罪で逮捕・拘留され、ろくに捜査もなされないまま死刑を宣告されてしまう。 一方、ハーバードロースクールの学生研修として死刑囚の聞き取り調査に訪れたブライアン(マイケル・B・ジョーダン)は、多くの黒人が不十分な捜査で起訴され、個人の権利についても伝えられないままであることを知る。 時がたち、弁護士資格を得たブライアンはアラバマ州で死刑囚を支援する団体に就職し、ウォルターの存在を知る・・・という話。
 80年代でも「黒人だから」というだけで犯人と決めつけられている・・・ということに改めて衝撃。 50年・60年代ならまだしもと感じるけれど、それが南部だからということなのか。 『アラバマ物語』を“アメリカの正義”と称える割に、それを現実とつなげない人が多すぎる。

  黒い司法2.jpg エバ(ブリー・ラーソン)は法律事務所の事務方担当、思いのほか出番は少ない。
 ブライアンとエバは仕事上の同志、不当な待遇にある・得られるはずの援助のない人たちを助けたいという気持ちの上で一致している。 まったく恋愛が絡まないのが清々しい。 ウォルターだけじゃない死刑囚たちのことも描かれているため、上映時間は少々長め(137分)・・・でもそれがドキュメンタリータッチというか、<based on a true story>の重みになっているように思う。 劇的な脚色はあまりしてなそうな感じ。

  黒い司法3.jpg ウォルターの実家で歓待されるブライアン。
 ウォルターのお母さんがいかにも肝っ玉母さん系で・・・このファミリー感、特に家の外見などが『評決のとき』のサミュエル・L・ジャクソンの役柄とすごくかぶる。 あれも南部だったから似たような感じというか、それが当時の普通だったのか。 電気椅子での死刑執行シーンは『グリーンマイル』を思い出し、「頭、ちゃんと濡らしてよ!」とドキドキする。 死刑も減り、薬物注射による執行に変わってきた昨今、電気椅子での処刑のディテールを描くことは今日的に意味のあることかもしれない。

  黒い司法4.jpg 冒頭以降、満を持しての登場のジェイミー・フォックス、オーラ消しまくり。
 なんでこんなことになったのか全く分からない中、あきらめと絶望に沈み、けれども「それでもおれはやってない」の心を燻ぶらせているウォルターの屈折加減が大変いい感じでした。 ブライアンに対しても「黒人だから」と心を開かないし。 ブライアンはブライアンで、弁護士なのに死刑囚官房の看守に屈辱的な目に遭わされたり(彼は南部の出身ではないのでそこまでの理不尽すぎる黒人差別にはあったことがなかったようだ)、「ろくに取り合ってもらえない」囚人たち(これがすべて黒人というわけではない)への共感を学ぶ。
 ジェイミー・フォックスが地味めな分だけ、マイケル・B・ジョーダンの輝きが引き立つ。 青くさい理想を抱えて現実を知り、それでも誰しもの上に平等であるべき法と正義のために立ち上がる。 検察や裁判所は既得権益を守るほうに寄るが、『60ミニッツ』に取り上げてもらい世論を盛り上げ、とマスコミを有効に使うところが時代であり、いろいろ問題はあってもアメリカが信じる自由は有効であるということ。

  黒い司法1.jpg ウォルターの静かな激情が終盤を引っ張る。
 最重要証人を演じるティム・ブレイク・ネルソン、「なんか口元がゆがんでる?」と思ってたらモデルになっている人物に似せているのだった。 今回のキャストの中でいちばん激似。
 こういう作品があるから「弁護士は正義の味方」みたいなイメージができてしまうのだろうが、ブライアンのモデルであるブライアン・スティーブンソンはまさにそのタイプ。 またそういう人が少ないから脚光を浴びるんだろうな、と・・・。 また、冤罪を晴らすことが目的になってしまうことが大半の中、ウォルターが犯人とされた殺人事件の真犯人に迫ったことまで言及するのはこの映画の良心だと思う。
 地味だけど、描くべきことはちゃんと描いている。 まさに良心的。

posted by かしこん at 17:52| Comment(0) | 映画 movie | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする