2020年03月14日

エピデミック/川端裕人

 電子書籍にて、十数年ぶりの再読。
 誤植が多くてイライラするが、「あぁ、そうだった!」といろいろ思い出す。 そして書かれていることは今の知識で十分理解ができる内容(今回の新型コロナウイルス騒動で追加された理解含む)で、現実が情報の整理と理解をこんなに助けるか、まさに百聞は一見に如かずですな、と妙に納得してしまった。

  エピデミック20200307電子版.png この絵はペストかコレラのときかなぁ。
 東京に近いC県のT市で、インフルエンザで重症化する患者が続出。 国立集団予防管理センター員でフィールド疫学が専門の島袋ケイトは現地入りし、インフルエンザとは違うものを感じる。 彼女を案内した現地の高柳医師も何かおかしいと感じる。 何もはっきりしないまま肺炎症状で重篤化する患者が増加、死者も続出。 市民たちは感染者が多い崎浜地域を封じ込めようとする・・・。

 序章からいろんな伏線・ヒントがちりばめられていて、「感染源にあたるものがいっぱいあるよ!」とドキドキする。
 だが、タイトル通り『エピデミック』=ある特定地域での感染爆発、のため、現在のCOVID-19を知った今となっては手ぬるいというか(症状は致死率が高いので全然手ぬるくない)、一般の人のパニック度合いが「おとなしすぎる・・・」と思ってしまいます。 かつて読んだときは「ひどいな」だったはずなんだけど。
 そのかわり、何が感染源なのか、そもそも病原もわからない状態で探していく<フィールド疫学>の過程がすごく面白い。 たくさんの手がかりから絞り込んでいくのはまさにミステリ的(第三部のタイトルは“疫学探偵”だし)。 予備情報としてインフルエンザ・SARSなどの感染症について詳しいことがわかる! 病院での集団感染などはリアリティ感じる! こうして医療崩壊になるのね! 飛沫感染においては手洗い・消毒・顔を触らないが最強の防御だとわかります。
 そっちの描写がしっかりしているため、小説のキャラクターの深みが弱いと感じる部分も。 川端作品に頻出する“少年”もここでは消化不良感がいなめない(終盤や後日談をもっと書いてもよかったのでは)。 でもこのもやっと感が感染症にまつわることなのかも。 多く描かれていないけれど、現在でも解決していない(というかそもそも想定されているのか?)「もし親が感染した場合、誰がその子供を見るのか」についてすごく考える・・・日本の様々な不備についても。

 だからこそ、誤植の多さが!
 文字を間違えているわけではないんだけど、地の文なのに頭に「がついていたり、文字下げできていなかったり、・が突然出てきたり、文の最後が消えていたりと、「日本語認識ソフトにかけて、文字化けだけ取り除いただけでは? チェックしてないのかよ!」という・・・紙の本を自炊にかけたほうがよかったんじゃないの、というレベルは電子書籍への信頼を損ねるものですよ。
 そういえばグラフなかったな・・・2×2表はあったけど。 単行本から文庫になる過程で省かれたのだろうか? でも筆者の謝辞は2007年だからベースは単行本なはずだけど・・・あたしの記憶がおかしいのか?

posted by かしこん at 20:35| Comment(0) | ☆ 読んじゃいました | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする