2020年02月22日

AI崩壊

 去年の秋ぐらいから映画館にポスターとチラシ(載っている情報は少ない)があった。 入江悠監督の新作がやたら大作の気配、しかも原作なしの監督オリジナル脚本で。 これは成功してもらわないと困る、でも微妙にダメ感があるな、と思っていた。
 別に日本映画の未来を考えて、とかではなくて、入江悠監督結構好きだからなんだけれど、いざ公開され二週連続一位という結果はよろこばしかったが、韓国映画『パラサイト』がアカデミー賞作品賞を獲ったために「日本映画の今後」を観客も思わないといけない感じになり・・・このタイミング、よかったのかそうじゃないのか。

  AI崩壊P2.jpg その日、AIが命の選別を始めた。

 AIを専門とする科学者の桐生(大沢たかお)は人類を救う目的で医療AI<のぞみ>を開発したが、国の審査に落ちる。 <のぞみ>の運営を義弟の西村(賀来賢人)にまかせて娘とともに国を出た桐生だが、7年後の2030年、日本は<のぞみ>を国家インフラのひとつとして利用するまでになり、桐生に総理大臣賞が贈られることになり、桐生は久し振りに帰国するが・・・という話。

  AI崩壊6.jpg まずは<のぞみ>の新設された千葉のデータセンターへ。
 10年後の日本の“リアル”を描こうとした序盤(地方との格差拡大、AIに職を奪われた人々のデモなど)に寂しい気持ちになるが、人手不足や移民問題はスルーされているようだ。 脇役のキャスティングについニヤリとしてしまうバイプレイヤー好き(野間口さんにマギーとか、お約束すぎだが)。 ただ桐生の娘・こころの描かれ方が「死んだ母親を慕う娘」という記号でしかないのが大変不満。

  AI崩壊1.jpg 桐生さん、そのスーツどこから。
 『22年目の告白』ほどではないにしろ、ミステリ的謎解きのための描写は押さえてある(むしろ親切すぎるほどに)。 その分、それ以外の説明は結構飛ばされていて・・・「えっ、そこに行くまでは!?」と何回か絶句する。 え、えーっと、それでいいんですか?

  AI崩壊5.jpg それから大沢たかお版『逃亡者』に。
 うわぁ、撮影するの大変だっただろうな、とすごく感じてしまうのですが・・・物語的にはのめり込めないまま。 あたし自身が「AI(機械)は暴走しない(するとしてもそれもまた人間の仕業)」と昔から思っているせいもあるんだけど、“AI崩壊”をすぐそこにある危機として感じることはできませんでした。
 いや、むしろ“AI”という実現していないものについて描くことで、その手前のもの(監視社会や社会的・個人的ネット依存など)によりリアルな警鐘を鳴らしているのではないか、便利なものに頼り切り自分で判断することを放棄している人間の姿だよ・・・と考えることでガッカリ感を払拭する。 <のぞみ>のビジュアルは『ハーモニー』(Project Itohの映画版)を思い出し、そういうものの描き方はアニメのほうが先行しているのかもしれないと思う。 スズメバチのようなドローンは不気味でよかったです。 <のぞみ>の外部探知センサーがだんだん『2001年宇宙の旅』のHALみたいに見えてきたし。

  AI崩壊3.jpg 三浦友和は叩き上げ刑事として安定の存在感。
 結構な豪華キャスト揃いなのですが、豪華すぎて出番の少ない人も・・・特に芦名星や高嶋政宏もったいない。 でもキャラクターを深く描く余裕がないので、俳優陣のイメージを利用するしかないのか(勿論それがミスリードにもなっているのだが)。
 だけど今時「犯人はお前だ」的名指し・・・堂々と古くてドキドキするわ。
 入江監督、こんなんでいいのか・・・ともやもやして席を立つが、若いカップルが「すっごく面白かったね!」とはしゃいでいる。 大きなマーケットを相手にしようとすればこうしなければならないものなのか・・・と納得しそうになる。 いやいや、しかし。 最近の日本映画としては破格のスケールと予算でしょう、それが実現したのはすごいことですよ(それも東宝ではなくワーナー・ブラザーズ)。 だからこそもうちょっとなんとかならなかったのか、と思ってしまいましたわ。

  AI崩壊P1.jpg 最初のチラシ。
 大沢たかお、ほぼ出ずっぱりなんだからこのビジュアルでずっと押してもよかったのにな・・・まぁ、これだと完全に『逃亡者』か。
 実はあたしがすごく気になったのが、大沢たかおのショルダーバッグの肩ベルト。 調節金具のところを裏返しにかけてて・・・スタッフ誰か気づいて!、と思えども何度もあるので、「いや、むしろカバンをいつも裏返しにかけちゃう人なのか! 天才的科学者だからこそ身支度は気にしない、みたいな!」と納得しかけたが、ある場面でカットが切り替わった瞬間ベルトが正しい方向に(カバンの位置を直すなどの描写は一切なし)。 別に意図はなかったのか! がっかりだ!
 すみません、細かいことが気になりました。

posted by かしこん at 23:59| Comment(0) | 映画 movie | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする