2020年02月29日

グッドライアー 偽りのゲーム/THE GOOD LIAR

 ヘレン・ミレンとイアン・マッケラン共演、監督ビル・コンドンという布陣。 もうそれだけで職人芸とか名人芸とか言葉が浮かぶ。 さぞ、いい感じのものを魅せてくれるんだろう、という暗黙の期待に、あたしは事前情報をなにも入れずに(最初の予告編だけは観ちゃったけど)、ただ映画館へ。

  グッドライアーP1.png 冷酷な詐欺師 夫を亡くした資産家

 出会い系サイトで会う約束をした二人、ロイ(イアン・マッケラン)とベティ(ヘレン・ミレン)は、レストランで楽しい時間を過ごしたあと、お互いサイト内では名前を偽っていたことを謝罪する。 そのうえでまた会う約束をして、美術館や映画館を訪ねる日々が続く。 だが、ロイはベテランの詐欺師で、資産家の夫の遺産を持っているベティに近づいたのだ。 ベティの孫スティーヴン(ラッセル・トヴェイ)の心配をよそに、ベティはロイに親しみを感じていく・・・という話。

  グッドライアー1.jpg お互い嘘つきであると最初から示される、だから“GOOD LIAR”。
 もうこの二人の共演というだけで、ニヤニヤ笑いが止まらない。 ベティはほんとに気のいい(いささかお節介気味の善意の持ち主で)、ロイときたらやたらチャーミング。 勿論、ロイの裏の顔は徐々に見えてくるものの、中盤過ぎまで「詐欺師」という言葉自体出てこない(ロイを詐欺師と呼ぶ人もいないし自分でそう言ったりもしない)。 彼が仲間とやっているひどいことがただベティの知らないところで展開していくだけ。 あぁ、無駄のない脚本ってこういうのか、とほれぼれ。
 ほんとにロイはひどいやつなのだ。 なのにやっぱりチャーミングでどこかにくめない。 イアン・マッケランだから? それがロイの詐欺師としての才能ならば、天職ということになるのか。

  グッドライアー4.jpg 心配するスティーヴンの気持ちもわかる。
 ベティ、いい人過ぎる! 過去の苦労などを全く感じさせないベティのどこか浮世離れしたお嬢様的な気質がかわいらしくて。 スティーヴンもベティが大好きだからいろいろするし、いいところも見せたいし、でもベティに嫌われたくないし・・・という葛藤もいい具合。 主な登場人物が多くないので脇役もしっかり描かれる感じ、大変あたしの好みです。

  グッドライアー3.jpg ジム・カーター、現代劇でも見慣れてきた。
 要所要所で演劇的手法がとられるのもニヤリ。 そう思うとキャスティングも舞台劇っぽい。 散りばめられる謎と生まれる推測、じわじわと提示される事実。 ミステリとしては完全なるフェアではないんだけど、「そっちへ行くか! でも手掛かりは確かにあった!」の繰り返しに(多少予測はできるけど)気持ちが翻弄されてしまい、ひどい話だというのに明らかになる謎に奇妙な爽快感が。
 あぁ、これぞミステリの本領!
 この語り口、この騙し方、好きです! 『ナイブス・アウト』よりも好みだ。
 それでもやはりロイはチャーミングで、あっけにとられるほど。 老醜を晒すイアン・マッケランに役者魂を見る。
 あぁ、やはり名人芸だった。 ビル・コンドン作品としては『ゴッド・アンド・モンスター』に匹敵する出来栄えだよ。

posted by かしこん at 16:10| Comment(0) | 映画 movie | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年02月28日

長い一日

 たった一日で、状況はがらりと変わる。
 昨日の夕方、大阪市の幼稚園・小中学校の休校が決定、のニュースを受けて仕事場の空気が一気に「とりあえず人が集まる系のものは中止もしくは延期」の方向に動き出した。
 家に帰ってから、全国の公立の小中高校に休校要請が出たことを知る。
 これはお子さんのいる人たちが働きづらくなる。 ニュースでは「子供の世話があるから仕事休まなきゃ、夫と交代でなんとかしないと」と困ったような人たちのインタビューばかり流れ、「それって自分のせいで親が困ってる」とか子供が思うからやめてほしいわ、と思う。
 今日の仕事場は、朝「神戸市はどうすんのやろ」の話題で持ち切り。 場合によっては業務時間の短縮が必要になるかも(あたしはお客さんと接する部署ではないので勤務時間に影響ない・・・)。 友人からお昼に携帯電話にメール、「姫路市教育委員会は29日から3月24日まで休校だと発表しました」とのこと。
 長いな! 姫路市、思い切ったな!
 すると神戸市長の緊急会見の結果、3月3日(火)から15日(日)まで小中高校を休校にするとのこと。 そうか、神戸市はきょう一日では処理が無理なのか、月曜日一日出るのね・・・。

 てことでいろいろ情報収集もしてた一日。
 「マスク増産のため、同じ原料を使っているトイレットペーパー、ティッシュペーパー、生理用品が品薄になる」というデマが出回り、特に熊本県で買い占めが起こっていて在庫が一時カラ、というのを見て「同じ原料なわけないじゃん、ちょっと考えればわかるのに、なんでそうなるの? とりあえず何か行動に移してないと不安になるからやってみた気になってる?」と不思議で仕方なく、まぁそれも「デマです」と製紙会社関連組織が公的に発表しているので大丈夫かな、と思った。 ダサすぎるわ。
 ただ、生理用品買い占めにお怒りの方々が、「男性に生理用品を売るな!」と言うのはちょっと違うかと・・・家族のために買いに来ているかもしれないじゃないですか、見た目男性でも生理のある方かもしれないじゃないですか。 男性だからってすべて転売屋じゃないし、生活必需品を買うために身分証明書を提示しなければならない、というのはどうかと思うし!
 まぁ、仕事もドタバタしてまして、帰りがちょっと遅くなりました。
 予約本が届いているのでぎり図書館に寄ると、「3月2日(月)から16日(月)まで閉館します」というおしらせ。 あぅ、公立学校と同じ扱いか! 神戸市立だもんな!
 「閉館期間中に返却日のものがあるんですけど、大丈夫ですか?」と聞いてみる。
 「えーっと、自動的に14日間、返却予定日を遅らせる方向で調整しています。 いつから実際に反映されるかわかりませんが、システム上で変更を」
 あ、そうなんだ、それはありがたい。
 「臨時閉館中も返却は受け付けます。 予約本の貸し出しもするんです。 書架にある本を見ていただいたり貸し出しはできないんですが」
 え? どういうこと?
 閉館中だが完全に閉めるわけではないようだ。 予約した本が届けばその受け渡しはするけど(知の権利は侵害しないってこと?)、新聞読んだり勉強したり、本を探してうろうろしたりという長時間滞在を断る、ということであるらしい。
 「じゃあ、いったん返却してもう一回借りるということはできるんですか? それとも予約本じゃないから無理ですか?」
 「えーっと・・・」
 「そうですよね、今日決まったばかりですもんね。 2週間延長されるなら大丈夫ですよね、すみません」
 図書館の人を困らせてしまったことを詫びる。

 あぁ、なんか長いような短いような一日だった。
 スーパーマーケットに寄り、週末の食事を考えつつ買い物をする。 もしかして流通が不安定になることを考えて豆乳のストックを一個多めにしておこうか。 めんつゆも予備がないけど今のがしばらくもつからいいか、両方買ったら重いし、と思っていたら、いつもトイレットペーパーとボックスティッシュが積まれている場所が、空白に!
 「・・・マジか」
 デマだと否定されたのに。 それを知らないのか、もしくは買っている人を見たら自分も買わねば、と思う人が多いのか。 家にストックがある人は買わないでください、本当に必要な人たちが買えなくなります。
 なんだか、どっと疲れが出た。 近くの棚を見ると・・・生理用品はあるなぁ。 なんだろう、このトイレットペーパーに対する執着というか、執念というか。 フロイト的な何かに通じるとか?
 でもだんだん腹が立ってきた。
 なんなんだ、オイルショックで日本人は学んだはずではなかったのか! なんなんだ、なんなんだ!
 これはトイレットペーパーがないことへの不安ではない、情報に踊らされている人がこんなにもいることを視覚化させられた不安と怒り。
 あぁ、日本は何も学んでないよ。

posted by かしこん at 23:17| Comment(0) | 日記のようなもの | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年02月26日

リテラシー、希望

 本日の仕事場にて。
 「あーっ、あれ、延期だって」
 「あれ、中止だそうです」
 「じゃあ、これも中止にしないとダメかなぁ」
 続々と様々なイベント類に延期・中止の連絡が来る。 協賛などの場合は主催の判断に従うことになるし、自分たちが主催となれば中止か延期か判断しなければならない。 中止を決めるのは簡単だが、準備や手間がかかっているからできるかぎり回収もしたいわけで。 3月半ばに大きいのがあるので、上としては他を全部中止にしてもそれだけは実施したい気持ち。
 「あと2週間ぐらいで収束しますかねぇ」
 何故それをあたしに聞くのか。 だが一応答える。
 「3月一週目の、発表される感染者の数字次第じゃないですかね。 見かけ上の数字に過ぎなくても、減っていれば可能。 そうじゃなければ感染拡大ってことで4月ぐらいまでかかるかも、もしくは6月」
 「やっぱりそうなるか〜。 わかりました」
 いやいや、あたしは専門家ではありませんよ!

 さてさて、あたしは仕事場の公式ツイッターの中の人ではないが、ときどきチェックして何が呟かれているのか把握するのもあたしの仕事の一部(その件で急に問い合わせが来たときに、担当者不在の場合あたしに回ってくる)。 なので今日も気がついたときに開いてみたが・・・トレンドワードに #マスクパトロール というのがあって、「あっ、ついに「あんた、なんでマスクしてないんだ?!」と取り締まられる日が来たんだ!」、と瞬時に驚いてクリックした。

  マスクパトロール.jpg  思ってたのと違った・・・。
 マスクパトロールとは・・・ドラッグストアを巡回し、「マスクはいつ入荷するのか」と店員さんに聞いて回る行為を指していた。
 ・・・ええっと、そういうことしてたら感染リスクは余計高まるんじゃないですか。
 もっと合理的にいきましょうよ・・・。
 全国の本屋さん、「特集・ウイルスパニック」としてそういう小説集めてフェアをしてもらえませんかね。

posted by かしこん at 23:59| Comment(0) | 日記のようなもの | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年02月25日

パニックSFの世界

 三連休後、仕事に行くのはだるい。 まして新型感染症が蔓延しつつあるとわかっているので尚更。
 今日もいつもより一本遅らせた電車で向かう。 ラッシュ時の満員電車がつらいので、可能な日は時差出勤を利用しているが三ノ宮までは結構ぎゅうぎゅう、でも一本あとにするだけでかなり乗客は減る。 今日は更に減っていた。 乗り込んだ瞬間から座席に空きがあり、座れる状況(ドア近くに立っている人もいるが、それほど多くない)。
 連休に合わせてもう一日休もう的な? それとも自宅待機とか、不要不急の外出を避ける的なことに?
 すると、普段聞きなれない内容の車内アナウンスが。 いまいち言っていることが聞き取れないが、どうやら「ラッシュ時を避けてください」みたいなことを言っているようだ。 そりゃみんな、避けれるなら避けたいでしょう・・・あたしのように避けたい人は避けられる。 でも仕事によっては時間を動かせられない人がいるわけで。 まぁ、「お願いしないよりまし」という気分的なアナウンスなのかな・・・夕方の電車では何も言われなかったよ(夕方のラッシュもなかなかなときがあるんですけど、それでも朝よりはずっとましなのでしょうか)。

 駅から出て、目的地まで歩くのだが・・・ちょうどあたしの視界に入った人たちがみな、マスクをしてうつむきがちに黙々と歩いていた(電車の中でのマスク装着率は50%ぐらい)。 これで、もし新型コロナウィルス(COVID-19)の致死率が50%以上だったら・・・リアル『コンテイジョン』、いやいや、『復活の日』じゃないか!
 と、自分がパニックSFの世界の入り口に立っていることに気づく。
 ちなみにあたしはマスクはしていない。 手持ちのマスクは残り少なく、いざというときのために取っておきたいし、それに今あたしは元気だから。
 そして驚くことに、世間の人々はそんな世界のことはあまり知っていなくて、レトロウィルスについてもあまりわかっていなかったり、検査してないから見かけ上の感染者数が増えないこととか、季節性インフルエンザと一緒でもう近くにウィルスはいるが付け込まれない自分になることがいちばんの自衛になることなどがピンと来ていないようだ。 マスクやアルコールジェルがなくても、石鹸で丁寧に手洗いなどでカバーできると思考や行動のシフトチェンジができない。 それだけ混乱し、おそれを抱いているのか? だから「お湯を飲めばウィルスは死滅する」みたいなデマに振り回されてしまうのだろうか(それでほんとにすむなら感染は拡大しない・・・)。
 『夏の厄災』や『エピデミック』、『天冥の標U 救世群』など感染パニック作品は国内作家のだけでもいろいろあるのに(勿論、映画もゲームもあるでしょう)。 ちょっとでも読んでいたら自分の中でシミュレーションできるのにね。
 でもいちばんシミュレーションができてないのが厚労省でありWHOだ・・・というのがあまりに悲しい。 現実がフィクションに追いつけない哀しさ。

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2020年02月24日

夫・車谷長吉/高橋順子

 まぁ、こういうのも縁ですよね、と思って読み始める。
 そしたらもう、車谷長吉さんの言動がコワすぎて引く・・・怖いもの見たさで、読んでしまった。
 詩人・高橋順子がファンレターのようなひとりごと、十一通の絵手紙をもらってからの出会いとその後の話。

  夫・車谷長吉.jpg 表紙が絵手紙の一枚。
 表紙に使われているのはまだいいんだけど(一部口絵としてモノクロで収録)、ハガキ一面隙間もなく文字がびっしりのやつなど、書きこんでいる気持ちがあふれてこっちに迫ってきそうで、漢字や句読点もないので一読では意味がわからないときもあって怖い。 ご本人も会ったこともない人からこんなものをもらって「薄気味悪かった」みたいなこと書いてあった。
 人との距離感がおかしいというか、よくつかめない人なんだと思う、車谷長吉という人は。
 のちに重度の強迫神経症を患い、「このままではあなたを殺すか、自殺するか」を繰り返すような人と結婚しちゃったんだから著者はすごい!
 「これは結構ひどい、いまならモラハラだよ!」みたいなところいっぱいある・・・けれどご本人はさらりと流し、気にしていない感じ・・・そこに愛や情があるからなのでしょう。 二人だけに感じられた合う波長とかあったのでしょう。
 しかしあたしにはないので、「この人、コワすぎる!」としか思えないです。
 なんとなく記憶では、車谷氏は「土下座して結婚してもらった」と思っていたので・・・なんで順子さんにこんなに上から目線な言動をするのか納得いかない。
 仕事場のおじいさんは作家としての車谷長吉を高く評価しているようなので、その観点があればまた違うのかもしれないけど。
 すごく詳細に書かれている時期とそうでない時期がある。 日記を書けてない時もあって記憶にないこともあるそうだが・・・記憶にないって。 よほどすごい時期だったのでは・・・覚えていられないほど、時系列でまとめられないほど。 そんな“書かれていないこと”の存在もまたコワい。

 しかし、小説のモデルにされたからと名誉棄損などで訴訟になるってのもすごい・・・いくら私小説といったって、事実をベースにしたとしても“作者”というフィルターを通せば描かれるものは100%事実ではないので、モデルがいたとしてもすべてその人のことだとはあたしは思わないんだけど・・・世間には思う人がいるのか。 もしくは実物よりひどく書かれてイメージ悪くなったとか? 車谷長吉は姫路の出身だそうで、高橋順子さんは文庫版の付録の講演起こしの中で「姫路で車谷の話をするのは怖い」とも言っている。 訴訟内容は表に出せないのかもしれないけれど、いったいなにをそこまで?、と不思議で仕方ない。
 ううむ、これは車谷長吉を読めということか・・・。

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2020年02月23日

今日は6冊。

 急に雨が降ったり、晴れたら気温が下がったり、どうなってんの? 着る服に困るじゃないのよ。

  ザ・チェーン連鎖誘拐1 エイドリアン・マッキンティ.jpgザ・チェーン連鎖誘拐2 エイドリアン・マッキンティ.jpg ザ・チェーン 連鎖誘拐/エイドリアン・マッキンティ
 初の上下巻!、と思ったら一冊が薄い! 二分冊する必要はあったのでしょうか。 でも帯に日本の若手ミステリ作家、警察小説書いている人からのコメントを複数掲載。 翻訳ものを読まない人たち相手に売り込もう、というハヤカワの強い意欲を感じます。 だったら一冊薄いほうがいいのか。 ドン・ウィンズロウ、スティーヴン・キング、デニス・ルヘインの賛辞は帯裏に、というのも配慮ですかね。
 しかしシリーズもたまってきて、そろそろ読むかと思うと一作目が家の中で行方不明だという・・・別のシリーズが見つかったので、先にそっちか。

  書架の探偵 ジーン・ウルフ.jpg 書架の探偵/ジーン・ウルフ
 ジーン・ウルフの遺作ということですが・・・。 作家のクローンが図書館に住み、訪れてくる謎を解く、というシチュエーションがSFだけど古典の意匠なのよね。 シュールレアリスム的だわ。

  七つの墓碑.jpg 七つの墓碑/イーゴル・デ・アミーチス
 サンドローネ・ダツィエーリ(『パードレはそこにいる』の作者)の名前のほうが帯に大きく書いてあるので、新作かと思ったらダツィエーリが強力に推薦する新人作品だった。 イタリアン・クライム・サスペンスも増えてきて、イタリアについて全然知らないことばかり・・・だということを知る。 その国の本質、影の部分を語ってくれるのがサスペンスでありノアールなのだ。

  宇宙兄弟37.jpg 宇宙兄弟 37/小山宙哉
 まったく手を付けておりません。 前巻からもう一度読むか・・・。

  ストロベリー02 サライネス.jpg ストロベリー 2/サラ・イネス
 義理の親子の日常生活、2巻目・・・と思ったら最終巻ですか! 早くない?!

ラベル:マンガ 新刊
posted by かしこん at 23:59| Comment(0) | ☆ 買っちゃいました | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年02月22日

AI崩壊

 去年の秋ぐらいから映画館にポスターとチラシ(載っている情報は少ない)があった。 入江悠監督の新作がやたら大作の気配、しかも原作なしの監督オリジナル脚本で。 これは成功してもらわないと困る、でも微妙にダメ感があるな、と思っていた。
 別に日本映画の未来を考えて、とかではなくて、入江悠監督結構好きだからなんだけれど、いざ公開され二週連続一位という結果はよろこばしかったが、韓国映画『パラサイト』がアカデミー賞作品賞を獲ったために「日本映画の今後」を観客も思わないといけない感じになり・・・このタイミング、よかったのかそうじゃないのか。

  AI崩壊P2.jpg その日、AIが命の選別を始めた。

 AIを専門とする科学者の桐生(大沢たかお)は人類を救う目的で医療AI<のぞみ>を開発したが、国の審査に落ちる。 <のぞみ>の運営を義弟の西村(賀来賢人)にまかせて娘とともに国を出た桐生だが、7年後の2030年、日本は<のぞみ>を国家インフラのひとつとして利用するまでになり、桐生に総理大臣賞が贈られることになり、桐生は久し振りに帰国するが・・・という話。

  AI崩壊6.jpg まずは<のぞみ>の新設された千葉のデータセンターへ。
 10年後の日本の“リアル”を描こうとした序盤(地方との格差拡大、AIに職を奪われた人々のデモなど)に寂しい気持ちになるが、人手不足や移民問題はスルーされているようだ。 脇役のキャスティングについニヤリとしてしまうバイプレイヤー好き(野間口さんにマギーとか、お約束すぎだが)。 ただ桐生の娘・こころの描かれ方が「死んだ母親を慕う娘」という記号でしかないのが大変不満。

  AI崩壊1.jpg 桐生さん、そのスーツどこから。
 『22年目の告白』ほどではないにしろ、ミステリ的謎解きのための描写は押さえてある(むしろ親切すぎるほどに)。 その分、それ以外の説明は結構飛ばされていて・・・「えっ、そこに行くまでは!?」と何回か絶句する。 え、えーっと、それでいいんですか?

  AI崩壊5.jpg それから大沢たかお版『逃亡者』に。
 うわぁ、撮影するの大変だっただろうな、とすごく感じてしまうのですが・・・物語的にはのめり込めないまま。 あたし自身が「AI(機械)は暴走しない(するとしてもそれもまた人間の仕業)」と昔から思っているせいもあるんだけど、“AI崩壊”をすぐそこにある危機として感じることはできませんでした。
 いや、むしろ“AI”という実現していないものについて描くことで、その手前のもの(監視社会や社会的・個人的ネット依存など)によりリアルな警鐘を鳴らしているのではないか、便利なものに頼り切り自分で判断することを放棄している人間の姿だよ・・・と考えることでガッカリ感を払拭する。 <のぞみ>のビジュアルは『ハーモニー』(Project Itohの映画版)を思い出し、そういうものの描き方はアニメのほうが先行しているのかもしれないと思う。 スズメバチのようなドローンは不気味でよかったです。 <のぞみ>の外部探知センサーがだんだん『2001年宇宙の旅』のHALみたいに見えてきたし。

  AI崩壊3.jpg 三浦友和は叩き上げ刑事として安定の存在感。
 結構な豪華キャスト揃いなのですが、豪華すぎて出番の少ない人も・・・特に芦名星や高嶋政宏もったいない。 でもキャラクターを深く描く余裕がないので、俳優陣のイメージを利用するしかないのか(勿論それがミスリードにもなっているのだが)。
 だけど今時「犯人はお前だ」的名指し・・・堂々と古くてドキドキするわ。
 入江監督、こんなんでいいのか・・・ともやもやして席を立つが、若いカップルが「すっごく面白かったね!」とはしゃいでいる。 大きなマーケットを相手にしようとすればこうしなければならないものなのか・・・と納得しそうになる。 いやいや、しかし。 最近の日本映画としては破格のスケールと予算でしょう、それが実現したのはすごいことですよ(それも東宝ではなくワーナー・ブラザーズ)。 だからこそもうちょっとなんとかならなかったのか、と思ってしまいましたわ。

  AI崩壊P1.jpg 最初のチラシ。
 大沢たかお、ほぼ出ずっぱりなんだからこのビジュアルでずっと押してもよかったのにな・・・まぁ、これだと完全に『逃亡者』か。
 実はあたしがすごく気になったのが、大沢たかおのショルダーバッグの肩ベルト。 調節金具のところを裏返しにかけてて・・・スタッフ誰か気づいて!、と思えども何度もあるので、「いや、むしろカバンをいつも裏返しにかけちゃう人なのか! 天才的科学者だからこそ身支度は気にしない、みたいな!」と納得しかけたが、ある場面でカットが切り替わった瞬間ベルトが正しい方向に(カバンの位置を直すなどの描写は一切なし)。 別に意図はなかったのか! がっかりだ!
 すみません、細かいことが気になりました。

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2020年02月21日

接触を減らす方向に

 読みかけの本がちょうど面白くなってきたので、仕事帰りに途中下車、駅から近いスタバへ。
 でももう夜の時間帯なため、カフェインは抑えようとほうじ茶ラテ(豆乳)をオーダー、ちょっとハチミツを入れようかなと思ったら・・・コンディメントバー(砂糖やミルクなど、自分で好きなものを好きなように入れられるところ)がない・・・きれいさっぱり片付けられていた。
 「新型コロナウィルス対策として」の札が出ていた。 ドリンクを渡してくれる人に言えばくれるらしい。
 「すみません、ハチミツ入れてほしいんですが」
 「はい、どれくらい入れましょう?」
 瓶をカウンターの下から出し、にっこりされる。 どのくらいの加減を言葉で説明するのは難しい。 糸のように細いハチミツの線でフォームミルクの上に大きく円を描いてくれたので、二周半ぐらいでストップをかけさせていただきました。
 不特定多数が触れる、でも常々消毒していられないということなんだろうなぁ。 ブッフェレストランとかどうしてるんだろう。

 その帰り、駅近くのスーパーを覗いてみたら・・・ばら売りの天ぷらや焼き鳥などのコーナーがなくなり、数個ごとに詰められたパックが積み上げられている。

  20200222自由選択休止.JPG 随所にこの看板が。
 当面自粛・・・自粛という言葉を使ってしまうのか。
 兵庫県は今のところ感染者は出ていないが、大阪京都和歌山と出てるから時間の問題だろう(ただ検査できてないだけかもしれないし)。
 神戸市はインフルエンザが流行しているとも聞くし、目に見えないウィルスとの戦いは警戒するに越したことはない。
 でもいちばんの問題は個人の意識だ・・・人は一日で顔を2000回触っているという。 電車の吊り革や手すりや扉、エスカレーターや階段の手すりなども触らないように(触ってしまったらその手を洗う前に顔を触らないように)意識していると、顔(特に口や鼻周辺)は触らないようになってきたけど伸びてきた前髪をつい寄せてしまっていることに気づかされる。
 今日もマスクはどこにも売っていない。
 朝の通勤電車を一本遅くした。 時間的にはギリギリだが、込み具合が少し減る。 みんなで感染リスクを減らす心がけをするしかないよね。

posted by かしこん at 23:59| Comment(0) | 日記のようなもの | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年02月20日

だから殺せなかった/一本木透

 鮎川哲也賞受賞作だからといって読まなくなったのはいつからだろう。 かつてはちゃんと読んでいたのに、賞に関係なくとも東京創元社からデビューする新人だというだけで読んでいたこともあるのに(その頃読んでた人たちは、今でも新作が出ると読んだりしているのに)。 好みの作品が続いた時期か、自分の年齢か。
 『ジェリーフィッシュは凍らない』を久々に読んだのが数年前で、それ以来かも。
 これは“あの『屍人荘の殺人』と栄冠を争った”として第27回鮎川哲也賞優秀賞受賞となった話題作だが、タイトルのインパクトがずっと頭に残っていて・・・図書館で予約したらやってきたので急いで読む(他の予約も詰まっていた)。 普段翻訳物中心に読んでいるせいか、日本人の書くものはやはり読みやすく、ほぼ一気読みだった。

  だから殺せなかった単行本.jpg 「新人離れした筆力」、確かに。
 クオリティペーパーと呼ばれる大手新聞社に届いた手紙は、首都圏で起こっていた三つの殺人事件を自分の犯行だと、無差別連続殺人だと伝えるもので、新聞紙上での公開討論を要求してくる。 指名された新聞記者は、これまでの連載で自分もまた過去に犯罪者の家族と関係があって報道と正義に対し割り切れない思いを告白していた。 人間を駆除すべきウィルスだと断言する犯人は「おれの殺人を言葉で止めてみろ」と記者に挑戦状を叩きつける。 そして始まる報道合戦の行方は。

 作者は新聞社関係の人なのかな?、と思わせるディテールは素晴らしい。 斜陽になってきている新聞という産業を描いているところもいい(ペンは剣よりも強し的な理念では通用しない部分)。
 ミステリとしても大変フェアなのだが、枚数が少ない&登場人物が少ない故に途中でわかってしまう!、のが残念。 せめて視点人物をもう一人増やしていたら、もしくは三人称視点なら、もっと盛り上がったかもしれない。 しかしモノローグ形式だから最後まで畳みかけを続けられたのかもしれないし・・・。
 面白かったのだけれど、「もっと面白くなったのに!」という感覚が拭えない、なんかもったいない感じが残って世界にのめり込めなかったのがほんとに残念だ・・・大きなテーマであるが故に、やはりもっと枚数が必要だったよ。
 しかし装丁(裏表紙も)が内容(特に結末)とリンクしていて味わい深い。 作品として作り手に愛されている感じがする、それ故に読者も不足分を含めてこの作品を愛してしまう。

ラベル:国内ミステリ
posted by かしこん at 22:00| Comment(0) | ☆ 読んじゃいました | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年02月19日

ナイブズ・アウト 名探偵と刃の館の秘密/KNIVES OUT

 「ネタバレ厳禁」といわれたら、どんでん返しがあるのだろうと否応なく期待してしまう。 ミステリとして正しい、きちんと手順を踏んでくれるやつであろうと期待する。 でもその期待って一歩間違うと予断になるのよね! むずかしい、すごくむずかしい!

  ナイブズアウトP.jfif 殺したのは誰だ!?この騙し合いに世界が熱狂!!
  空前絶後のハイテンション・ノンストップ・ミステリー誕生

 ニューヨーク郊外の古風な館で、巨大な出版社の創設者にて世界的ベストセラーミステリー作家のハーラン・スロンビー(クリストファー・プラマー)の85歳の誕生日パーティーが開かれた。 しかし翌朝、スロンビーは遺体となって発見された。 高名な名探偵ブノワ・ブラン(ダニエル・クレイグ)は匿名の人物からこの事件の調査を依頼され、館にやってきて・・・という話。
 パーティーに参加していたのはスロンビーの娘一家(ジェイミー・リー・カーティス、ドン・ジョンソン、クリス・エヴァンス)、息子(マイケル・シャノン)ら家族たちや雇われている看護師(アナ・デ・アルマス)に家政婦(エディ・パターソン)ら、その日館にいた全員が容疑者だった。

  ナイブズアウト3.jpg 名探偵と警部補(キース・スタンフィールド)と巡査(ノア・セガン)のやりとりが楽しい。
 明らかにアガサ・クリスティー世界へのオマージュなのに、舞台がイギリスではないことに違和感(しかもニューヨーク郊外)。 名探偵ブノア・ブランって名前はフランス風なのに喋り方はアメリカ南部訛り(訛りだとは気づかず、「ダニエル・クレイグ、これまで聞いたことない喋り方だよ!、どうしたの?」っておののいた)。 名探偵が視界に入るたびにちょっと笑いが込み上げそうになって、事件ものなのにシリアスな空気が薄い。 だから館の仕掛けがどれほど大袈裟で無茶であろうとも、そう感じさせない雰囲気がある。

  ナイブズアウト1.jpg 肩から腕の筋肉がつきすぎだよ!
 白いニット着てると、特にそう見える・・・孫息子は定職も持たずにふらふらして遊んでばかり、というわりにカラダが出来上がりすぎ! クリス・エヴァンスはキャプテン・アメリカのすぐあとの撮影だったのかな、とかつい考えちゃう(ダニエル・クレイグが007体型ではなかったので余計に)。
 オールスターキャスト映画って、ほんのわずかな描写でも何か意味がありそうに映るから本格ミステリにはふさわしいのだけれど、場合によってはキャスティングでバレるのよね・・・特に原作がある場合。 完全オリジナル脚本でロジック的にも正しいミステリ、豪華キャストというのは大正解だった。 またみなさんそれぞれにあやしさ全開で、楽しませていただきました。
 しかしあたしはあまりにも穿ちすぎ、説明されていないと感じたあるひとつのことに振り回されてしまい、もっとひどい結末を想像してしまっていたのだった。 自分で勝手にレッドへリングを作ってしまったようだ・・・。

  ナイブズアウト2.jfif 名探偵、全員集めてさてと言い。
 驚いたのは、人間の本質として持ちうる“善”を全肯定しているところ・・・。
 なんていい人なんだ、ブラン。 勿論、犯罪は肯定されず、摘発される。
 映画としてもラストシーンでプロローグからの伏線がきっちりとまとまり、美しい着地。 そうか、これはゴシックミステリでもあったのか、と納得。
 でもあたしはもっとひどいことを想像していたので・・・きれいにおさまりすぎてちょっと不満。

posted by かしこん at 23:59| Comment(0) | 映画 movie | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年02月18日

今日は8冊(半分マンガで)。

 油断してたら今月はどんどん本が出る・・・。

  開かれた瞳孔 カリン・スローター ハーパーブックス版.jpg 開かれた瞳孔/カリン・スローター
 祝・復刊! ハヤカワミステリ文庫で2002年に出たものの、絶版。 あたしも知らずに買い逃してて、のちに<ウィル・トレントシリーズ>を読み始めてから遡ってこっちを読んだ(もう売ってなかったから図書館で)。 見事なハードスリラー。 ウィルの苦悩でいまいち話が進まない<ウィル・トレント>よりも、『開かれた瞳孔』が一作目となる<グラント郡シリーズ>のほうが今のあたしは好みかも(ほんとに容赦がなさそうだから・・・)。 未訳の<グラント郡>、続きをハーパーBOOKSで出してくれそうな気配なので、これは揃えよう!
 あぁ、どんどん性格悪くなるわ、あたし・・・。

  鉄の門 マーガレット・ミラー.jpg 鉄の門【新訳版】/マーガレット・ミラー
 「心理的純探偵小説の曙光」と江戸川乱歩が感嘆した、と帯に・・・えっ、マーガレット・ミラーってそんなに古いの?!
 新訳版ですが日本語訳としてはこれで三度目の訳だそうです・・・なのに入手困難だったってどういうこと?

  レイトショー1 マイクル・コナリー.jpgレイトショー2 マイクル・コナリー.jpg レイトショー/マイクル・コナリー
 マイクル・コナリーによる新シリーズ、ハワイ出身のロス市警30代の女性刑事レネイ・バラードが主人公。 レイトショーは深夜勤務を指す警察内の隠語とか。 とはいえ舞台はロスなので、このあとの作品ではハリー・ボッシュと競演しているらしく・・・コナリー世界のレギュラーが増えたってことですね。

  おかあさんの扉09.jpg おかあさんの扉 9 謎の九歳児/伊藤理佐
 他人の子供の成長は早いというが(なんか毎年思っている気がするが)、もう9歳ですか!
 着々と、一足飛びにしっかりしていく過程が、微笑ましいですなぁ(子供はうっかりしたり抜けてるところがあって当たり前)。 一般的に、女の子は男の子よりも話が通じる傾向にあるから。

  ミステリと言う勿れ6.jpg ミステリと言う勿れ 6/田村由美
 6巻目。 でも整くんの登場は序盤まで。 それ以降は整くんが広島に行っている間にガロくんが何をしていたのか・・・の半ば番外編。 

  七つ屋10.jfif 七つ屋志のぶの宝石匣 10/二ノ宮知子
 ついに十巻、ある程度キャラが出揃った感じ・・・でも話は進みそうで進まない。
 志のぶの思い切りのよさ(?)にはびっくりするけど、それで物語がぐらつくことはないんだ・・・。

  東京タラレバ娘2−2.jpg 東京タラレバ娘 シーズン2−2/東村アキコ
 シーズン2の2巻目。 相変わらずオーナーのキャラは意味不明だが、意外と近くに実在したら取り扱いしやすいかもしれない。 若者への叱咤激励がそこにはある;

ラベル:マンガ 新刊
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2020年02月17日

勘違い、もしくはフライング

 先週半ばぐらいから、「寒さの底は打ったのかな?」と感じてしまうくらいの暖かい日々が続いていた。 この週末などは「上着、いらなくない?」というほど(実際、コートは着ずにマフラーだけ巻いて出かけたりとか)。
 しかし昨日、日曜日の夜半過ぎから急激に冷え込んできた。 ごみを出しに行ったら風の勢いも強かったし。 今朝、家を出たときは「これは雨? それとも雪?」と、雪まじりの雨のようなものがパラパラと落ちていた。 気温が一気に7・8℃ぐらい下がってる。 今日はコートを着ました。
 仕事場最寄駅で降りると空は晴れており、雪も雨も降っていなかった。 局地的なものだったのだろう。
 てくてくと仕事場まで歩いて行ったら・・・桜が咲いていた。

  20200217早すぎる桜の開花.JPG 小さい樹ですが。 そして切られて接ぎ木された感じ?
 前の日まであったかかったから・・・積算温度をクリアしてしまったのか、あったかいから勘違いしてしまったのか。 でも残念ながら今日からまた数日寒いですよ・・・。
 でもなんか、気持ちはほっこり。 樹の勘違いは、なんだかとても微笑ましい。

ラベル:季節もの
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2020年02月16日

出会い系サイトで70人と実際に会ってその人に合いそうな本をすすめまくった1年間のこと/花田奈々子

 「出会い系サイトで本をおすすめする」とは一体どういうことなのか。
 それが知りたくて読み始めるが、いきなり語り手は結婚生活をもう続けられないと家を飛び出し、ファミレスやスーパー銭湯を渡り歩く“宿なし”として登場し、まず人生に迷っていることにどよめく。
 これは、「本をすすめる」ことが描かれているだけでなく、「他人に本をすすめることでいつしか自分が救われる」というある種の王道ものでもあり。

  出会い系サイトで70人と実際に会ってその人に.jpg なんでこんなガーリーなイメージ?
 宿なし生活に「なんでこんなことに」と呆然とする筆者は書店員。 しかし仕事も以前に比べるとうまくいってはおらず、日々疲労がたまる。 そんなときに「知らない人と30分だけ会って、話してみる」というWEBサービスXを知り、一念発起、「1万冊を超える膨大な記憶データの中から、今のあなたにぴったりな本を1冊選んでおすすめさせていただきます」ととプロフィール欄に書き込む。

 X(仮名)というサービスは出会い系とはいえ異性の恋愛関係だけに限っていないようなので・・・いろんな人がいるが、勿論ヤバい人もいる。 読んでた最初はXがSHOWROOM的なものかと思って、「あぁ、動画配信というか、スカイプ的なもので会って話すのかな、それならありかも」と解釈したが・・・タイトルは「実際に会って」。 しかも読み進んでいったら実際に会っているし!
 出会い系で知り合った人と初めて会うなんてヤバい、とは思わない。 そんな遅くない時間で、不特定多数の人がそこそこいる場所ならばそう危険とかではないだろうし。 ただ知らない相手と「本をすすめる」まで会話をするってのがハードル高い! 話が通じる人ばかりではないし。 でもそこがこの本の読みどころでもあるわけで。
 ただし、本のセレクトは「いかにも書店員」って感じの直球が多い感じ。 王道、ベストセラー、話題になった本を中心に、サブカル系に自分の好みを入れ込んでくるところとかまさにあたしのイメージする書店員そのものです(その割にご本人は自分をいわゆるカリスマ書店員みたいな存在とは縁遠いと思っている)。
 こういう方にはありがちだが、「そこそこ読んでます」という人にはおすすめ本が出てこないという・・・。 あまり普段読まない、何を読んだかよくわからないという相手には有効なんだな、と。 あたしもですが、ジャンル小説を主に読んでいる場合は「それ知ってます」になっちゃう(だからマニア寄りはマニア寄り同士で会話したくなるのかも)。
 でも、「本の話ができるのは楽しい」っていうのは確かだ。

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2020年02月15日

法月綸太郎の消息/法月綸太郎

 なんとなくお久し振りの法月綸太郎、比較的リアルタイム。
 単行本ですが特に厚いわけでもなく・・・中は四つの短編。 うち二つは法月警視が困った事件に遭遇したのを綸太郎くんが話し合いでとりあえず解決の途を示す、いわゆる“安楽椅子探偵もの”。 残りの二編はシャーロックホームズ譚とポワロ譚から導き出される<新しい仮定>について。 ミステリ黄金時代に思いをはせる、ほっこり系短編集。

  法月綸太郎の消息.jpg のりりん、名探偵としてよりも生存確認的短編集。

 シャーロック・ホームズの視点で描かれた二作の短編『白面の兵士』と『ライオンのたてがみ』に秘められた作者サー・アー・サー・コナン・ドイルの意図を読み込む『白面のたてがみ』。 エルキュール・ポアロ最後の事件とされる『カーテン』に仕込まれた作者アガサ・クリスティーの大胆すぎるたくらみを読み解こうとする『カーテンコール』。 作者法月綸太郎によるちょっとしたコナン・ドイルとアガサ・クリスティーの作家論でもあり、シャーロキアン的「原典の内容を深読みして違う世界を導く知的遊戯。
 うーむ、またクリスティを読み返したくなってきちゃうじゃないか。

 『あべこべの遺書』・『殺さぬ先の自首』は都筑道夫的というか泡坂妻夫的というか。
 法月警視の奥さんのことがさらりと書かれていて(綸太郎の母がそんなことになっていたとは・・・『雪密室』読んでいるのですがきれいさっぱり忘れていた・・・)、ドキドキする。 つくづくあたしはキャラ重視だ。 今が比較的安定していれば、その人の過去は関係ないと考える。


ラベル:国内ミステリ
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2020年02月13日

緋色の霞み

 今日はなんだか暖かかった。 冬用のコートらしきものに、ウール100%のマフラーを巻いていたが暑くて帰り道はカバンの中にしまった。
 今日も明るいうちに帰れなかった、と、とぼとぼと家路を辿る。 途中にある桜の木の皮に街灯の明かりが反射して、枝全体をまとうようにぼうっと霞が出ているみたいに見えた。 もしくはオーラ的な。
 あれ、これ昨日見たっけ? いやいや、昨日は暗かったけど雨だった、見えなかった(見てなかった)。 その前の週は・・・覚えていない。
 桜色の染料は樹皮から採ると聞いたことがある。 あれは20年以上前の仙山線だったか、車窓から枝ばかりの樹でいっぱいの山が緋色にけむって見えたことがあった。 今も覚えているどこか幻想的な光景だった(あとでそれが桜の群生と知る)。
 それ以来、あたしは確信している。
 花をつける準備に入った桜は、その樹皮にエネルギーをため込み、ある程度になると周囲の空気をも染める。
 だからあたしが見たいつもの桜の木は、これから花を咲かせるための準備に入ったのだ。
 なんてこった、もう春はすぐそこじゃないか。

 家に帰ってきてびっくりする。 マッキー・・・。
 かつてあんなに泣いて後悔したのではなかったか。 どれだけ多くの人を苦しめ傷つけ、どれだけ多くのことを失ったのかわかったと言っていなかったか。
 覚せい剤、ヤク、ドラッグその他は、やってしまえば過去の苦しみや後悔や恥辱など、そんなこともどうでもよくなってしまうものなんですかね・・・。

 新型コロナウィルス、こうなればもはや日本国内にある程度蔓延していると見たほうがいいのではないでしょうか。
 大きく変異せず、季節性の風邪としておとなしく定着するならそれもそれでありかもしれない。 大きく変異しないでいてくれれば・・・しかしレトロウィルスにそれを祈るのは野暮ってものよね〜。 どうせなら弱毒性の方向に変異してほしいものだわ。

ラベル:季節もの
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