2019年12月01日

ドクター・スリープ/DOCTOR SLEEP

 小説『ドクター・スリープ』は映画ではなくあくまで原作小説『シャイニング』の続編である、スティーヴン・キングはキューブリックの映画『シャイニング』を気に入っていない、というのはある程度のキング読者にとって常識である。 で、『ドクター・スリープ』が映画になるという・・・そりゃもちろん原作小説に即してですよね、と思ってたら、予告編では明らかに映画『シャイニング』にかぶるイメージショットが・・・どういうこと? それでキングのお許しはもらえたの?、と気になって、確認に。

  ドクター・スリープ映画P.jpg 『シャイニング』の40年後――呪われたホテルが、目を覚ます。

 <オーバールックホテル(眺望ホテル)>の出来事から逃げ出してきたダニーと母親のウェンディだが、ダニーにはホテルに巣くっていた悪霊たちがまだ見えた。 それから30年以上たってもダニーはトラウマに苦しめられ、アルコール依存症に。 そんな中でも自分がしてしまったひどいことに良心が痛んだダン・トランス(ユアン・マクレガー)は心機一転、ニューハンプシャー州へ、親切なビリー(クリフ・カーティス)と知り合いAAの会に出て、ホスピスでの仕事をもらう。 それから8年、静かな生活が続くかと思われたが、ダニーは自分以上の“シャイン(かがやき=特殊な能力)”を持つ少女アブラ(カイリー・カラン)が、ローズ・ザ・ハット(レベッカ・ファーガソン)率いる<真結族(トゥルー・ノット)>に狙われていることを知り・・・という話。
 冒頭から映画『シャイニング』の音楽が流れ・・・やはり映画を意識しているとわかる。

  ドクター・スリープ映画3.jpg おう、あのホテルじゃん!
 マイク・フラナガン監督はスティーヴン・キングの大ファンだそうである・・・でも映画的にはやはり『シャイニング』を無視はできないのか、原作『ドクター・スリープ』の基本に忠実を守りながら、映画『シャイニング』のその後の物語としても機能するように、という全方向にいい顔をすることを選んだようである。
 それにしてもまず音がいい! 森の場面で小枝を足で踏みつぶす音が背後で聴こえ・・・思わず振り返ってしまいそうになるほど。 効果音がこの映画館の中の音のように聞こえるのは臨場感たっぷりで、特にホラー系の映画には効果的。 なんで日本映画にはこういう音作りができないのか不思議でならない。

  ドクター・スリープ映画4.jpg 邪悪な目を持つトゥルー・ノットのみなさん。
 彼らは“かがやき”を持つ少年少女の生気を吸って生きながらえてきたので、時折狩りが必要になるのだが・・・ロージーの子供を引き付けて取り込もうとする技はほぼ『イット/IT』のペニーワイズと一緒! そう思うと物語の大きな枠組みも一緒だなぁと思えてしまう悲しさよ・・・。
 でもロージーにレベッカ・ファーガソンを持ってきてしまうことに驚きつつ、あまりひどい人に見えない感じがしてちょっと困る(個人的な好みの問題)。 ビリーの人のよさっぷりには癒されたし、ちょい役ながら明らかにいい人なブルース・グリーンウッドの登場はうれしかった。

  ドクター・スリープ映画2.jpg “REDRUM”=“MURDER”も登場。
 ダン・トランスとしてはユアン・マクレガーはかっこよすぎなのだが、ユアンとしてはヒゲぼうぼうのヤバい時期は一気に十歳ぐらい老け込んだ感じでダニーに寄せているとは思えるものの・・・ダニーの苦悩は必要最小限にしか描かれていないので『ドクター・スリープ』の意味さえ付け足しになっている。 そこも映画『シャイニング』と一緒だわ。 ユアンは静かな受けの演技で最初から最後まで。

  ドクター・スリープ映画5.jpg アブラを守ることが過去との清算にもなる。
 ダニーから見たらアブラは恐れを知らない少女。 能力の高さ故にローズ・ザ・ハットとも渡り合えると挑戦してしまう場面は重力も視点も世界も飛び越えるやり取りで、ハラハラドキドキ、映像独自の表現で盛り上がる! しかしアブラは無事だろうと感じてしまうので、心底ハラハラはしないという・・・このへんのバランスは難しいなぁ。 トゥルー・ノットは敵なのだが、小者はあっさり死んだりするので(しかも死んで消えるパターンが『ポーの一族』のバンパネラと一緒)、彼らも哀しい存在なのだと同情心が起こってしまい、追い詰めても爽快感がないという。

  ドクター・スリープ映画1.jpg そして再びあのホテルへ。
 最終決戦の場がオーバールックで、映画『シャイニング』と同じビジュアルが出現・・・『シャイニング』を観直してなかったのでかなり同じように感じた(映像的にはこちらのほうが鮮明だが)。 小説『ドクター・スリープ』の記憶もよみがえり、いろんな誤差に揺さぶられているようだ。 えっ、ラスト、こんなんだったっけ?!、と衝撃で打ちのめされてしまった。
 あぁ、最近忘れてたけど、この理不尽な後味の悪さがスティーヴン・キングなんだよ。
 この映画ではいろんな場所を移動する、ちょっとロードムービー的な要素があるので、映画『シャイニング』の全編にわたる緊張感はない。 でも上映時間は152分あったけど、そこまで長いとは感じなかったかなぁ。 むしろ話を端折りすぎてて駆け足に思えたけど、『ドクター・スリープ』の原作を読んでいない、映画『シャイニング』しか観ていないという人には受け入れてもらえるだろうかと心配になった。

posted by かしこん at 18:51| Comment(0) | 映画 movie | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする