『ジョーカー』がめっちゃ込んでいたので、こちらを先に観ることに。
近年世界的に注目を浴びる芳ヶ江国際ピアノコンクールに今回出場するのは、かつて天才少女として騒がれながら姿を消していた栄伝亜夜(松岡茉優)、サラリーマンとして働いているが年齢制限ギリギリで最後のチャンスにかける高島明石(松坂桃李)、ジュリアード在学中の期待の“王子”マサル・カルロス・レヴィ・アナトール(森崎ウィン)、まったくのダークホース風間塵(鈴鹿央士)たち。 コンクールを誰が勝ち上がっていけるのか。
原作通りにはならないこと、かなりスリムコンパクト化されているだろうことは想像していたが・・・かなり刈り込んだなぁ! 登場人物も人間関係もかなり絞った、という印象。 だから2時間強とはいえ一本の映画に収まったわけだが・・・原作を読んでいない人にはどう映ったのだろう、とつい考えてしまう。

原作では当然ながら全部日本語だが、本来審査員のみなさんは英語で会話してるんだよな・・・と妙に納得。 斉藤由貴の英語にも違和感なしで、むしろ日本語のほうがツンケン度が出ていて彼女もまた“元天才少女”であることを感じさせられます。
光と影の使い方、特に影になった部分の陰影にも何種類かあって、暗くても表情とかちゃんと見えるんだよなぁ! そこが石川慶作品の真骨頂というか、映画館のスクリーンでものすごく映えるところ(『愚行録』も素晴らしかったが、WOWOWドラマ『イノセント・デイズ』ではそこまで実感できなかった)。
ただやっぱりピアノのシーンはプロの方が吹き替えているので、撮影の角度がある程度決まってしまっているのが悲しい。 長袖シャツの男性はともかく、女性のドレスは腕が出ているから違う人だとわかってしまう(そのあたり敏感ではないあたしが気づくぐらいなので、気になる人はかなり気になると思う)。
この4人が主役ではあるが・・・栄伝亜夜さんによりフォーカスされがちなのはまとめるために仕方がないのか。 というか、栄伝さんの心理描写部分はほぼホラーで・・・本人にはその自覚がないだけにこちらがぞわっとする。 才能と狂気は紙一重なのかみたいな。 石川監督にはいつかしっかりモダンホラーを撮っていただきたいものだ。
主要人物それぞれが若干原作のイメージとは違っているが、まぁこれはこれでよいかと。
明石くんは「生活者の音楽」について言い過ぎかな。 4人の中でいちばん練習している感があるのが風間塵だという不思議。 彼の“厄災”らしさはあえてしっかり表現しなかったのかな(それをしたら話がまとまらない)。
もしくはマサルの見せ場のために。
あとはやはりピアノ曲。 もっと聴きたかった!
コンクールで課題曲が一曲だけっておかしいよねと思いつつ、『春と修羅』の解釈の違いでそれぞれの個性の違いを表現と最小の時間で最大限の効果を出す工夫は認めるしかなく。 プロコフィエフまでがすごく短かった!
そして個人的なクラシックにまつわる記憶が自分の中から湧き上がってきた。 匂いが記憶につながっているとよく聞くが、あたしはそれがよくわからなくて・・・でも音や音楽があたしにはその引き金なのかもしれないと思わされた。
音楽を奏でる高揚感、それは確かにここにある。