<秋のパイクまつり>ということで、ロザムンド・パイク主演映画が日本続けて公開となる。 その一本目が『プライベート・ウォー』。
ロザムンド・パイク大好き! 『ゴーン・ガール』以降、多分役を選べるようになってから“強い女”を意図的に演じている気がするのが彼女の主義主張であるように感じられる。 というか、あたしがそういう役をやってほしいと思ってたのかな、『アウトロー』の彼女はなんか居心地よくなかった。
ロザムンド・パイク大好き! 『ゴーン・ガール』以降、多分役を選べるようになってから“強い女”を意図的に演じている気がするのが彼女の主義主張であるように感じられる。 というか、あたしがそういう役をやってほしいと思ってたのかな、『アウトロー』の彼女はなんか居心地よくなかった。
メリー・コルヴィン(ロザムンド・パイク)はUPI通信を経てサンデー・タイムスの特派員として世界中の戦地に赴いて自ら取材しているジャーナリスト。 2001年のスリランカで銃撃戦に巻き込まれ被弾、左目の視力を失う。 その後も黒い眼帯をトレードマークとして戦地へ出る。 それは戦争や紛争がいかに民間人を苦しめているかを世界中に知らせるため。 しかしメリーは重度のPTSDに苦しんでいて、悪夢と幻覚に襲われていた。 そして2012年のシリアへ・・・という話。
『バハールの涙』に出て来た戦場ジャーナリストってこの人だったのか! でも微妙に名前とか設定が違うような・・・(メリー・コルヴィンをモデルにしたということなのだろう)。 それだけ、伝説の存在なのね。
「ロザムンド・パイク、キャリア最高の演技」との声も上がってますが、頷ける。 勿論現時点で、このあと、彼女はもっとすごいの演じると思う。
必要ならばドレスも着こなし、紛争地に入ってもピアスをつけフランスの高級下着を身につける。 それは女としてのお洒落心ではなく、死体になったとき自分だとわかるための手がかりなのだ。 その覚悟を持っていても現実の悲惨さは、彼女の精神をこれでもかと蝕む。 日常生活の延長が悪夢や幻覚につながっていく描写が、メリーの抱えているものをダイレクトに現わしていてこちらもドキッとする。 戦場から戻ってきてもこんな感じなら、戦場にいたほうがましではないかと思えるほど。 でもPTSDを自覚しないまままた戦場に向かってしまうのはあまりに危険で、メリーの言動にハラハラし通し。 それもまた彼女のまわりにいた人の気持ちだったのかもしれない。
マシュー・ハイネマン監督はずっとドキュメンタリーを撮っていた人だそうで・・・わかりやすい物語性に落とし込まないところがよかった。
酒とたばこで焼けたようにひずんだ声と喋り方は多分ご本人に似せたんだろう。
ロザムンド・パイクほぼ出ずっぱりですが、サンデー・タイムスの編集長がトム・ホランダー(『ボヘミアン・ラプソディ』のジム・ビーチ!)、その後相棒のようになるカメラマンのポール・コンロイがジェイミー・ドーナン、メリーを癒すのちの結婚相手がスタンリー・トゥッチ、他にもどこかで見たことのある人たちぞろぞろと、なかなかに豪華キャストなのが意外でした。 特にスタンリー・トゥッチ、『プラダを着た悪魔』の頃とあまり変わっていないような気がして(もっと老け込んだ役を他で見たこともあったので)・・・実年齢いくつだ!
ポールにとってメリーは出会ったときからすでに伝説の存在で、でも憧れに臆することなく一緒に仕事をして信頼を勝ち取り自分も成長した。 だからメリーに「ちょっと休め、ちゃんと治療しろ」と言えるのだ。 メリーの記者人生の中で最も過酷な2012年のシリア・ホムス地区への潜入にも同行している。 虐げられている女性や子供たちの現状を、個人の物語を伝えたい、という情熱に突っ走りすぎるメリーに対するポールの存在は観客にとっても心のよりどころ。
なのに「2012年のシリアにこんなことあったんだっけ?」と記憶を掘り起こさなきゃいけない情けない自分・・・(ホムス包囲戦は2011年から2017年にわたったし、シリア内戦はまだ続いているのでその一年だけで考えても意味がないのであるが)、すみません、もっとちゃんと世界のことを知ります。
エンディングの歌がこれまた心をえぐる声で。 元ユーリズミックスのアリー・レノックスで・・・ずっと耳に残る。