「あ、これは!」とポスターを見ておののく。
「これって、アントン・イェルチンの遺作になったやつでは?!」
本国で完成したという話は聞いていたのだが、日本公開の見通しが立ってなくて・・・やっと公開になったのか、しかもこんなひっそりと。
何らかの問題を抱えているらしいアマンダ(オリヴィア・クック)は、母親から言われてリリー(アニャ・テイラー=ジョイ)の家を訪れる。 彼女とともに勉強するーリリーに家庭教師役を依頼したということらしい。 見た目から優等生なリリーに対し、アマンダは個性的すぎて誰ともうまくやれないらしい。 しかし、アマンダはリリーが押し殺しながら抱えている義父への憎しみに気づき、二人は次第に心を許し合っていく・・・という話。
わかりやすい説明ゼロ、音楽も心理的効果音っぽい現代音楽系、限られた場所中心とかなり演劇的で・・・これが映画長編デビューとなるコリー・フィンリー監督はもともと舞台の演出で活躍している人らしいと聞いてとても納得。
アメリカにおける上流社会の富豪ってこんな感じなのかな・・・とどこかで見たことあるビジュアル強し。 何故か日本刀が飾ってあるのが微妙なところだが・・・アメリカはスタートが一緒だから同じように見えるのであろうか。
まぁそういうことよりも、見どころは若手実力派女優二人のガチのやり取りである。
特に大きな動きがあるわけではないので、ほぼ二人の会話劇。 一歩間違えれば退屈になってしまいそうなところをきちんと最後まで引っ張るところがよい。 いささか強引なまでの省略法も好みだ。 ギリギリ悪趣味な不愉快さのようなものはあるけれど、『ゴーストランドの惨劇』に比べると全然許容範囲だし。
独善的な潔癖さとか、大人を受け入れないところとか、その時期独特のものが映ってる。
ミア・ワシコウスカの『イノセント・ガーデン』に通じるところもあるけど、ザック・スナイダー監督の『エンジェル・ウォーズ』なんかも思い出すし・・・でもミヒャエル・ハネケ的な居心地の悪さもあるのだ。
オリヴィア・クックとアニャ・テイラー=ジョイ、二人の若き才能ある女優をこんなにも堪能できるうれしさ!
子供相手のドラッグの売人というやさぐれた役、しかも出番も多くはないが、彼がいることで物語がきっちり締まるんだよなぁ。
あぁ、なんでこんなにいい役者がもういないんだろう。 悲しいより先に、唖然となる。
この映画も彼が出ていなかったら観ていなかったかもしれないし・・・そういう出会いもありますよね。