2019年10月02日

ゴーストランドの惨劇/INCIDENT IN A GHOSTLAND

 かなりトリッキーなホラーということでいやがうえにも期待大のこちら、シネ・リーブル神戸で上映してくれてありがたい。 梅田に比べて神戸はサスペンス・ホラー系が少なめ・・・その傾向の中で公開されるわけだから、作品としての質もよいのでは!、と感じてしまうわけですよ。

  ゴーストランドの惨劇P.jpg 観はじめた瞬間から、あなたは“悪夢の家”の罠にはまる――。

 シングルマザーのポリーン(ミレーヌ・ファルメール)は片田舎にある古い叔母の家を相続することになり、ティーンの娘二人、双子の姉ヴェラ(テイラー・ヒックソン)と妹ベス(エミリア・ジョーンズ)とともに車で移動していた。 ベスはラヴクラフトを信奉し、ホラー小説を書きたいと願う内気な少女で、ヴェラはそんな妹にあきれながらも母が妹ばかりをかまうことにイライラしていた。 古い人形や仕掛けでいっぱいの引っ越し先に到着し、文句を言いながら荷物を片付けていたら、謎の二人組が侵入してきて三人を襲う。
 それから16年後、妹のベス(クリスタル・リード)はホラー小説家として成功、夫と子供にも恵まれた。 しかし姉のヴェラ(アナスタシア・リップス)は心を病んでしまい、母は姉の世話でずっとあの家で暮らしている。 ある日、ベスはヴェラからかかってきた電話で、あの家に戻らなくてはと感じ・・・という話。
 しかし予告ナレーションでは、「姉妹がその家で再会した時、あの惨劇が再び幕を開ける――などという、ありきたりのホラーでは終わらない――」とすでに言われていた。

  ゴーストランドの惨劇2.jpg はじめ双子だとは気づかなかった。
 姉と妹のキャラが逆ではないかと最初は混乱した。 内気で争いごとを避けたがるのは姉、ズバズバと言いたいことをいうのは妹のほうでは?、と。 でも「おねえちゃんなんだから」と放置されたり責任を押し付けられたりするが故の理不尽さからくる怒りがヴェラを突き動かしているのがわかると納得。 年齢もこちらが思っていたより若かったのだ、思春期ですよ。
 そうなるとあたしも姉側の人間なので、ヴェラの気持ちにだんだん寄っていってしまう。 それ故に、この映画の<仕掛け>に気づくことができたような気がする。 はじめのほうから伏線をいろいろ張ってくれているので、仕掛けの存在に気づいていても、更に驚かされる構成力の素晴らしさ。

  ゴーストランドの惨劇3.jpg 大人になったベス、家では奇怪な出来事が。
 過去のホラー映画のオマージュがそこここに。 それが最近のホラーの傾向なのか、それともジャンルとして歴史を刻んできたからなのか。 パスカル・ロジェ監督の<ホラーへの愛情>をひしひしと感じるものの・・・「見るものを不愉快に感じさせる、耐えがたい不快感にも平気でさらす」度合いには途中から「やめてくれー!」と叫んで頭を抱えたくなるほど。

  ゴーストランドの惨劇4.jpg 恐ろしげなビジュアルの中にも時折美しさがあり、それがまた絶望感を強める。
 確かに「ありきたりのホラー」ではなかった。
 犯人の描き方があまりに類型的だが、犯人側の事情など汲む必要はないということなのかも。 どんな奴であろうが関係ない、何故彼女たちが襲われたのかの原因も彼女たちにはない。 ただ<災厄>が襲ってきただけ、奴らは人間じゃないということなら、あの不快さにも意味があったのかも。

  ゴーストランドの惨劇1.jpg 怯えと強さが同時に宿る目。
 あぁ、これはサヴァイヴァーの物語なのだ。
 とてつもない困難からなんとか逃れた、けれどその傷と一生付き合わねばならない、生き残り。
 終盤、涙が抑えられなかった。
 ホラーという枠組みで語るからこそこのテーマを、文芸ジャンル以上に深く抉り取れる。
 でも本当に不愉快だった、もう一度観られるかどうか自信はない。

posted by かしこん at 23:59| Comment(0) | 映画 movie | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする