2019年10月31日

今日は6冊。

 10月も終わるというのに、昼間はまだ暑い! 夜もそんなに涼しくない! しかし季節柄夏の色の服は着られない、ストール巻いたらやっぱり暑い。 毎日服装に悩む・・・これはいつまで? 重ね着を楽しめるようになるのはいつ?

  なごみクラブ10.jpg なごみクラブ 10/遠藤淑子
 『なごみクラブ』が帰ってきました!
 相変わらずゆるゆるの空気感にちょっといい話。 だんだんホストクラブでの時間が少なくなっているような・・・それもまた、『なごみクラブ』か。

  だめっこどうぶつ10.jpg だめっこどうぶつ 10/桑田乃梨子
 なんと『だめっこどうぶつ』も10巻! 同じ出版社から同じ日に発売ということで・・・<遠藤淑子が描く『だめっこどうぶつ』世界と、桑田乃梨子が描く『なごみクラブ』世界>が表裏一枚のチラシになってて両方に差し込まれてる。 このお二人、仲が良いというのは出版社公式か。

  運命のコイン1 ジェフリー・アーチャー.jpg運命のコイン2 ジェフリー・アーチャー.jpg 運命のコイン/ジェフリー・アーチャー
 かなりいいお年なのにまったく筆の衰えないジェフリー・アーチャー、とはいえ基本は同じ話なんですけど・・・複雑な幼少期を経て勉学にのめり込み、いろいろあるけど立身出世をするってやつですよね。 メインキャラがどんなにひどい目に遭わされるのか、それに対してどういう復讐(仕返し)をするのかが楽しみで。

  生者と死者に告ぐ ノイハウス.jpg 生者と死者に告ぐ/ネレ・ノイハウス
 <刑事オリヴァー&ピア>シリーズ第7弾。 だいぶ進んできましたよ! 本国では第9弾まで刊行されているそうで・・・邦訳、かなり早いペースで追い上げてます。 『特捜部Q』みたいに人気があるのね!

  深夜の散歩 福永武彦.jpg 深夜の散歩 ミステリの愉しみ/福永武彦・中村真一郎・丸谷才一
 あの時代、海外推理小説を読みまくっていた三人による読書エッセイ、だそうな。
 あの名著『夜明けの睡魔』はこれからタイトルのヒントをもらったのかな?

ラベル:マンガ 新刊
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2019年10月28日

クロール −凶暴領域−/CRAWL

 今年はサメ映画が来ないな・・・と思っていたら・・・やってきたのはワニ映画。 サム・ライミがプロデュースだしなぁ、とうっすら期待。

  クロール凶暴領域P.jpg 思い出の我が家はヤツらのテリトリー

 フロリダにカテゴリー5のハリケーンが迫っている。 大学の競泳選手であるヘイリー(カヤ・スコデラーリオ)は、実家の父親(バリー・ペッパー)と連絡が取れないことが姉に告げられ、心配で、嵐が迫る中強引に家に戻る。 どうにか地下で倒れている父を発見して救出しようとするものの、その場には巨大なワニがおり、ハリケーンも迫ってきていた・・・という話。
 台風19号の被害を髣髴とさせる光景は全然笑えない・・・タイミングによっては上映中止の声が出ても不思議のないレベルで、もの悲しくなる。 娯楽映画に集中できないもどかしさがありました。

  クロール凶暴領域2.jpg とにかく水がきれいなのよ。
 バリー・ペッパー、すっかりおじさんになっちゃったなぁとしみじみ。 『グリーンマイル』はいったい何年前なんだ・・・と回想に浸りそうになる(『メルキアス・エストラーダの三度目の埋葬』のあたりからヒゲのワイルド系に寄ってはいたけど)。
 物語はそんな父親にビシビシ水泳を鍛えられた娘(でも娘はあるとき試合で結果を出せず父の期待にこたえられなかったと思い、父は娘に入れ込みすぎて母ともう一人の娘との関係性に失敗、そのこともまた末の娘を追い込む)との長年の複雑な関係を軸に、このトラブルを共に乗り越えようとすることで関係を修復できるかも、というアメリカの家族関係にしては珍しい、どちらかといえば日本にありがちな父と娘っぽいところが親近感あふれるが、近しい故に「おい、それはない!」とつっこみたいところもあり・・・。
 いや、こういう映画にリアリティを求めるのはお門違いであるとわかっているが。

  クロール凶暴領域1.jpg ワニのサイズがわからない。
 ワニ、初登場のシーンはやたら巨大に見えた。 人間の脚を片方丸ごと口にくわえこめるアリゲーターのサイズって何m? でも場合によっては小さく見えることもあり・・・陸上を闊歩するアリゲーターはある種の恐竜、水の中ではほぼサメと、水陸両用の襲撃者として大活躍!
 そしてなんというか・・・はっきり説明できないのだが、そこはかとなく漂う悪趣味感に見覚えが・・・『ピラニア3D』のアレクサンドル・アジャ監督だった! すごく納得した!

  クロール凶暴領域3.jpg こんなでも水がきれい。
 こんな極限状況にならないと腹を割って話し合えない父娘ってなんなの!、ではあるが、それを言ったら話が成立しないよね・・・。 心配はするけど特に何か行動を起こさないお姉ちゃんのほうにあたしは共感してしまったが、父とともに目指した一体感を知ってしまったら、すべてを忘れることはできないのね・・・(二人の行動のおバカさ加減の理由がここに)。
 とりあえず、ワニ描写は迫力。
 そしてこんな悪天候でも助けに来ようとするレスキューのみなさんに、「あぁ、なんて大変な仕事なの!」と胸が熱くなる。

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2019年10月27日

今日は2冊。

 ふと気がつけば、今日は10月最後の日曜日ではないか・・・あぁ、またあっという間に10月が終わっていく。

  短編ミステリの二百年1.jpg 短編ミステリの二百年 1/モーム、フォークナー他 小森収編
 江戸川乱歩編の『世界推理短編傑作集』に入っていない作品から、21世紀視点で新たに編み直されたアンソロジー第一弾。 全部が新訳なのも売り、全6巻予定。 アンソロジーはあまり得意ではないあたしですが、こういう古典なら話は別。
 個人的に、ロバート・ルイス・スティーヴンソンの『自殺クラブ』第一話が入っているのがうれしい!
 12編収録のわりにめちゃ分厚くないか、と思ったら小森収の評論も収録。 これって<Webミステリーズ!>にずっと連載していたやつが元ですかね。

  チャイルドファインダー 雪の少女.jpg チャイルド・ファインダー 雪の少女/レネ・デンフェルト
 作者の名前から北欧かと思ったが、カナダだった。
 チャイルド・ファインダーとは子供専門の探し屋のこと。 舞台はオレゴン州。
 本国では続編も出ているようなので、楽しみ。

ラベル:新刊
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2019年10月26日

ジョン・ウィック パラベラム/JOHN WICK:CHAPTER 3-PARABELLUM

 そろそろジョン・ウィックの物語も終わってあげてもいいんじゃないですか。 彼に平穏な生活を、と望むのであるが、そうはいかないようで・・・でもシリーズ進むにつれて日本での上映館が減っているんですけど! なんだかつらい・・・。

  ジョン・ウィック:パラベラムP.jpg 世界はお前を許さない
   伝説の殺し屋は、復讐の果てに逃亡者となる

 ニューヨークコンチネンタルホテルにて、裏社会の掟を破ってしまったためにお尋ね者となってしまった元殺し屋のジョン・ウィック(キアヌ・リーヴス)。 巨額の賞金目当ての刺客たちの追撃をかわしながら、指令を止めてもらうためジョンは昔なじみの人びとを尋ねるが・・・という話。
 『チャプター2』のラストのすぐ続きから始まる本作、一作目から時間的にはずっと続いているわけで・・・ジョン・ウィックの体力と精神力ってどうなってるの?、なのだが、そういうことを言うのは野暮である。 これはそういう映画なのだ!

  ジョン・ウィック:パラベラム1.jpg 馬に乗ってバイクを振り払う!
 いきなり厩舎で銃をぶっ放すとか、追手のみなさんも無茶なことをするわけだが・・・馬がおびえて暴れるし、そもそも馬に当たったらどうするの!、という観客の心の叫びを別の形で解放してくれる爽快さ。 そう、『ジョーカー』よりもはるかにかなり残酷にバンバン人が死ぬというのに、爽快なのである。
 もうこの映画は、対人アクションにおけるバリエーションをどれだけ増やせるかに力点を置いているかのようだ(実際、アクションの連打だが飽きない)。 「わぁ、無茶するなぁ」と感嘆するのみである。
 そして何故かアンジェリカ・ヒューストンやハリー・ベリーといった豪華なゲストが出ているんですが、これってキアヌの人徳? それとも<ジョン・ウィック>シリーズはビッグヒット作品なのか?
 毎回、ジョンの好敵手となる相手が出てくるけど、今回は普段は寿司バーのカウンターに立つが忍者の奥義を身につけて殺し屋集団のトップに立つ男ゼロ(マーク・ダカスコス)。 興奮すると日本語が出るのだが、それがすごくあやしい・・・てことはこのシリーズに出てくる外国要素はすべてあやしいのかもしれない、と思う。

  ジョン・ウィック:パラベラム2.jpg あ、そうだった!
 ニューヨークコンチネンタルのコンシェルジュ、シャロンとして現れるランス・レディックは、他のどの作品とも違って“いい人オーラ”が出てるのよねぇ、不思議。 犬の世話をしてくれるから? 実はジョンを気遣っているから?
 多分、裏社会に生きる者たちにとってジョンは憧れの存在なのだ。 超一流の殺し屋と呼ばれながら愛する人のために引退した男(この世界から足を洗うことがものすごく難しいことがこれまでの流れからもわかる)。 そんな伝説の存在を自分の手で殺りたいという気持ち、なんでこの世界に帰ってきちゃったんだという憤りが混ざり合ったみたいな、愛憎の対象。

  ジョン・ウィック:パラベラム3.jpg 二頭会談。
 ニューヨークコンチネンタルホテルの支配人ウィンストン(イアン・マクシェーン)と地下の犯罪組織の王バワリー・キング(ローレンス・フィッシュバーン)の関係も複雑。 おじさん好きだからこの二人のシーンはニヤニヤしちゃうけど、ローレンス・フィッシュバーンは『マトリックス』のモーフィアスなんだよね・・・もはや忘れそうになってしまっているけど。 これ見てるとキアヌのネオとともに、どちらも思い出せない。
 というか、今回裏社会のヒエラルキーとかかなり大風呂敷広げて説明しちゃいましたよね、終わる気あるのか、終わらせる気はあるのか!

  ジョン・ウィック:パラベラム4.jpg 前作は鏡張りの部屋だったが、今回はガラス張り。
 『四季』の『冬』第二楽章のいちばんいいところをバックに銃に装填するところ、すごくカッコいい!
 ジョン・ウィックの不死身っぷりにはもう笑うしかなくて。 いや、かなりよろよろなんだけど、ジョンも相当やられながら相手の力を利用して戦う省エネなところもあるし、とはいえそれでも立ち上がるのねという驚き。
 彼はどこまで行くのだろう、いや、行かされてしまうのだろう? まだ続くんだね! こうなったら最後まで見届けたいよ!
 エンドロールにさりげなく、「ミカエル・ニクヴィストの思い出に」と挟み込まれてあって(日本語字幕もついてなかった)、ぐっと胸が熱くなった(彼は一作目でロシアンマフィアのボスの役であった)。 思い出させてくれて、ありがとう。

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2019年10月25日

強風のさなかのその後

 今朝も雨である。
 この前ほどの風はないが、昨夜からは結構荒れていた。 こっちはこれから収まっていく方向のようであるが、東日本はそうはいくまい。
 仕事場へ行く途中のルート、この前見たときに「おや?」と感じてはいたがしっかり確かめていなかった。
 例の終齢幼虫のことである。
 確かこのへんだったよなぁ、とあらためて見ると。

  20191025幼虫のいたあと.JPG なんだかごっそり。
 枝・葉っぱごとなくなっている!
 これはどういうことだ・・・。

【仮定】
  1.周囲の葉っぱをちぎって地中に潜り、ねぐらにしている。
   (調べたらガの幼虫は地中でサナギになるらしい)
  2.鳥(カラス)に食べられた。
  3.管理してる人に伐採された。

 ま、いちばんありそうなのは【仮定3】ですかね・・・。

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2019年10月23日

メインテーマは殺人/アンソニー・ホロヴィッツ

 『カササギ殺人事件』の作者による邦訳最新刊!、となればこれまた否が応でも期待しちゃいますよね・・・。
 期待しすぎて(?)、読みに入るのをちょっと待ってしまった。 まぁ、図書館の急ぎの本があったせいもあるのだが、落ち着いたので取り掛かったら、あっという間に読み終わってしまった。 ここ何年も暑くて「10月を楽しみたい!」というあたしの願いはしっかりかなえられないのだが、これのおかげでその気持ちを取り戻したような気がする。

   メインテーマは殺人.jpg 原題:“THE WORD IS MURDER”
 <わたし>こと作家のアンソニー・ホロヴィッツは、脚本を担当している警察ドラマの監修にかかわった元刑事のホーソーンから、自分の葬儀の手配に行った老婦人がその日のうちに殺されたという奇妙な事件について聞かされる。 しかもこの事件を解決する自分を本にしないかという。 <わたし>はこの愛想のない変わり者に反感を抱きながらも、彼の優れた推理能力にはひかれ、いつしか行動を共にする・・・という話。
 まさにシャーロック・ホームズとジョン・ワトソンの関係へのオマージュ!
 ワトソンやヘイスティングさんが「名探偵と親しくなったことで、自ら記録係をかって出る」という立場なのに対して、ホロヴィッツとホーソーンは最初から契約の関係ってのがちょっとひねっていますが、信頼関係が深まり友情が・・・という過程は一緒? でもワトソンさんたちと違ってホロヴィッツはすでに作家だから、エゴとか自己顕示欲が強い! そういうのも全部書いちゃうから面白い!
 で、勿論オマージュやパスティーシュで終わるわけがなく、きちんと正統派ミステリです!
 大上段から振りかぶってないけど、きちんとフェアプレイ。
 『カササギ殺人事件』のインパクトよりは少々ゆるめですが、ホロヴィッツが携わっているテレビドラマや映画の仕事など、いわゆる業界裏話的なものがなかなか楽しい(特に『刑事フォイル』!、それもこれも海外ドラマがいっぱい観られるようになっているおかげ)。 ホロヴィッツだけじゃなく、実在の人物がゴロゴロ出てくるのも楽しい。 ただ主要人物ダミアン・クーパーのモデルが明らかにダミアン・ルイスなんだけど・・・『アレックス・ライダー』にも出てるからきっと友人でお断りを入れてるよね・・・と思うけどドキドキしちゃった。
 <著者あとがき(謝辞)>までも作品と同じ世界観で書かれている手の込み具合。 これは絶対シリーズ化だね!

ラベル:海外ミステリ
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2019年10月21日

JOKER ジョーカー/JOKER

 やっと、比較的すいている回にて。 それでも通常のレイトショーよりは人が多い。 ブームというかヒットしているのは本当なのね、と実感する。 実は予告の段階ではあまり率先して観たいほうではなかったのだが(内容がなんだか鬱になりそうだったから、あとジョーカーが特に好きというわけではないので)、最初の頃のこのポスターを見て気が変わる。

  ジョーカーP2.jpg 笑いの仮面をかぶれ

 1980年代のゴッサム・シティ。 ピエロメイクの大道芸でかせぎ、母ペニー・フレック(フランシス・コンロイ)の世話をするアーサー・フレック(ホアキン・フェニックス)は、「どんなときも笑顔で人々を楽しませなさい」という母の言葉を支えにコメディアンを目指している。 しかし彼は精神疾患で入院したことがあり、現在も薬をのんで福祉のカウンセリングに通っている。 ギリギリの生活で余裕を失いそうになる中、アーサーのなぐさめはエレベーターで一緒になった同じアパートに住むソフィーとその小さな娘。
 だが、街を支配する大富豪のトーマス・ウェイン(ブレット・カレン)は結果として格差をさらに広げる計画を立てていて・・・という話。

  ジョーカー1.jpg 顔色の悪さに衝撃を受ける。
 ホアキン、“激ヤセ”と言われているけれど役づくりでこれくらいはありだろう・・・と思っていたけど、服を脱いだときの背中の骨の動きに驚愕した。 もうここにジョーカーがいるんじゃないか、ぐらいの“別な生き物”感。 そして妄想でアーサーは自分を慰めているとわかる最初の場面でうっかり涙ぐんでしまう。 そうしないとやっていられない彼の状況に胸が痛んだ。 病気だとはいえ母親の無神経度もひどいし(『シックス・フィート・アンダー』のあのお母さん役の人だよ・・・こういう役、うますぎるんだよなぁと思っていたら、想像以上の役でした)。
 アーサーの笑い声はまるで泣き声だ。 そして泣き声は笑い声、それがアーサーの悲劇。

  ジョーカー3.jpg スタンダップコメディアンとしてステージにも。
 ピエロをひどい目に遭わせる不良少年たちの質の悪さに気分が悪くなるが、よく考えればこの街はゴッサム・シティなのだ(特にテロップは出ない)、ひどい奴らがいっぱいいておかしくない。 だが特に<悪徳の街>であるという描かれ方もしていなくて、どの場所でも起こりうる可能性を示唆しているが、決してアーサーを、ジョーカーを擁護するような描き方はしていない。 アメリカでの厳重警戒は過剰反応ではないかと思うが、何がきっかけで暴発するかわからないから対処するしかないのであろうか。

  ジョーカー2.jpg この階段、歩きたくなる。
 そんなわけでホアキン・フェニックス、ほぼ出ずっぱり、場合によってはずっと一人芝居を続けているようにも見える。 なるほど、「主演男優賞に!」と言われちゃうのわかる、まさに魂を削った演技ってやつで、観ていて胸が痛くなるよ。 映画でずっと鳴っている効果音や音楽は、アーサーの頭の中で常に聞こえているもので、観客もアーサーの視点で世界を見ていると気づかされるときは、もう引き返せないところまで来ている。 彼をかわいそうだとは思わない、同情もしない、でもただやるせない。

  ジョーカー4.jpg デ・ニーロ・・・あなたも場合によってはジョーカーを演じる側の人ですよね。
 マレー・フランクリン(ロバート・デ・ニーロ)はアーサーが敬愛するコメディアン。 多分、アーサーは彼に父親的なものを見ているだろうし、彼の終盤のふるまいも道徳的な父性の象徴のよう。 だから・・・ジョーカーとして生きることを決めてすべてを振り切ったはずの彼が心に秘めていた行動、「それすらも、うまくいかない」と思い知ったときの笑い声が悲しすぎる(しかしあたしの中では、このときの一瞬の表情がホアキンのベストアクトだ)。

  ジョーカー5.jpg put on a happy face:笑いの仮面をかぶれ
 『バットマン』シリーズへの言及は最小限だが、ブルース・ウェインのことは知っているほうがより楽しめることは間違いない。 バットマン=ブルースから見た世界ではすごくいい人なトーマス・ウェインや執事のアルフレッドが、こちら側ではとんでもなくイヤな奴に見えるのが・・・ゴッサム・シティを悪が栄える街にしていったのはジョーカーではなくトーマス・ウェインなのでは?、と思えたりもする。
 更に、「誰もがアーサー=ジョーカーになりうる」という話なのかと思ったら・・・「誰もが、ジョーカーを祭り上げる側になりうる」ほうがぐさりと刺さる内容だった。 極端な少数意見が広まることで大多数のように見えてしまうことがある、まさに現代のネット社会でより起こりやすいこと。 匿名の無責任な言動が大きな流れをつくってしまう。 名もなき一市民はすべて被害者じゃない、社会に参加していることで責任は生じているのだ、社会に参加している自覚がないとしても(だからこそ<持たざる者>たちは余計に不満を抱えるのか)。
 そうか、ジョーカーに触発されるのではなくて、ジョーカーの本質に触れることなく現象に熱狂する人々のほうが危険なのか。 現実が危惧するのはそういう存在なのか。
 ただ、哀しい。 ひたすらに、かなしい。

  ジョーカーP1.jpg 本当の悪は笑顔の中にある
 すっかりポスターはこっちのほうになった。
 <本当の悪>ってなんだろう。 自覚のない、無知さだろうか。

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2019年10月20日

今日は5冊。

 気づけば10月も後半、年末のランキングに向けてだともう締め切りが間に合わなくなるので、そろそろ新刊出版も落ち着くかなと思ったのだが・・・まだ出てくれますよ。 うれしいけど、お金と本を置く場所がない(涙)。

  ベル・カント文庫.jpg ベル・カント/アン・バチェット
 やっと文庫になった! 単行本が出たのは2003年ぐらいだったのでもうならないのかと思っていたが・・・映画化の恩恵にあずかり文庫化された模様。 しかしその映画も2017年発表のものが今になって日本公開なのだから・・・興行成績的にコケたのか?、疑惑が。
 かつてのペルー日本大使館襲撃事件をモデルに描かれたとのこと、気になりますよね。

  パードレはもういない1.jpgパードレはもういない2.jpg パードレはもういないサンドローネ・ダツィエーリ
 『パードレはそこにいる』・『死の天使ギルティネ』に続く<パードレ三部作>の完結編。 引き続き帯にはジェフリー・ディーヴァーからの賛辞が。 イタリアのミステリも独特な味があるというか、クセになっちゃうなぁ。

  終の航路 ハーパー.jpg 終の航路/カサンドラ・モンターグ
 ハーパーブックスより、また気になるやつが出た。 2130年、海面がはるかに上昇して陸がかなり海中に沈んでしまった世界を舞台に繰り広げられる人間模様、というだけで現時点でリアルを感じる、これも一種のディストピアものだろうか。 “AFTER THE FLOOD”という原題が、よくありがちだけどずしっと心に響く気がする。

  最も危険なアメリカ映画 町山智浩.jpg 最も危険なアメリカ映画/町山智浩
 あたしもだんだん、「映画に込められた意味」がいくつもあることが当たり前だということを理解してきた。 特に実話がベースの映画が多いから、「これが今、映画にされる意味は?」はよく考えさせられる。 やはりトランプ以後、ハリウッドの反トランプ姿勢、分断からの融和を目指すことが表向き強く感じる。
 しかし本書ではもっと古い時代のことを語ってくれるようだ。

ラベル:新刊
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2019年10月19日

蜜蜂と遠雷

 『ジョーカー』がめっちゃ込んでいたので、こちらを先に観ることに。

  蜜蜂と遠雷 映画P.jpg 私はまだ、音楽の神様に愛されているだろうか?

 近年世界的に注目を浴びる芳ヶ江国際ピアノコンクールに今回出場するのは、かつて天才少女として騒がれながら姿を消していた栄伝亜夜(松岡茉優)、サラリーマンとして働いているが年齢制限ギリギリで最後のチャンスにかける高島明石(松坂桃李)、ジュリアード在学中の期待の“王子”マサル・カルロス・レヴィ・アナトール(森崎ウィン)、まったくのダークホース風間塵(鈴鹿央士)たち。 コンクールを誰が勝ち上がっていけるのか。

  蜜蜂と遠雷 映画3.jpg マサル、想像より大人!
 原作通りにはならないこと、かなりスリムコンパクト化されているだろうことは想像していたが・・・かなり刈り込んだなぁ! 登場人物も人間関係もかなり絞った、という印象。 だから2時間強とはいえ一本の映画に収まったわけだが・・・原作を読んでいない人にはどう映ったのだろう、とつい考えてしまう。

  蜜蜂と遠雷 映画1.jpg 新曲『春と修羅』の作曲者(光石研)は日本語で、シルヴァーバーグ先生は英語で会話する感じがシュールで面白かった。 予算のなさも感じられたが、前半は日本映画にしては字幕が多いからちょっとでも減らそうという工夫か。
 原作では当然ながら全部日本語だが、本来審査員のみなさんは英語で会話してるんだよな・・・と妙に納得。 斉藤由貴の英語にも違和感なしで、むしろ日本語のほうがツンケン度が出ていて彼女もまた“元天才少女”であることを感じさせられます。

  蜜蜂と遠雷 映画4.jpg 二人の連弾はこんなふうか・・・。
 光と影の使い方、特に影になった部分の陰影にも何種類かあって、暗くても表情とかちゃんと見えるんだよなぁ! そこが石川慶作品の真骨頂というか、映画館のスクリーンでものすごく映えるところ(『愚行録』も素晴らしかったが、WOWOWドラマ『イノセント・デイズ』ではそこまで実感できなかった)。
 ただやっぱりピアノのシーンはプロの方が吹き替えているので、撮影の角度がある程度決まってしまっているのが悲しい。 長袖シャツの男性はともかく、女性のドレスは腕が出ているから違う人だとわかってしまう(そのあたり敏感ではないあたしが気づくぐらいなので、気になる人はかなり気になると思う)。

  蜜蜂と遠雷 映画2.jpg 海にはこの4人で行きます。
 この4人が主役ではあるが・・・栄伝亜夜さんによりフォーカスされがちなのはまとめるために仕方がないのか。 というか、栄伝さんの心理描写部分はほぼホラーで・・・本人にはその自覚がないだけにこちらがぞわっとする。 才能と狂気は紙一重なのかみたいな。 石川監督にはいつかしっかりモダンホラーを撮っていただきたいものだ。
 主要人物それぞれが若干原作のイメージとは違っているが、まぁこれはこれでよいかと。
 明石くんは「生活者の音楽」について言い過ぎかな。 4人の中でいちばん練習している感があるのが風間塵だという不思議。 彼の“厄災”らしさはあえてしっかり表現しなかったのかな(それをしたら話がまとまらない)。

  蜜蜂と遠雷 映画5.jpg 世界的指揮者(鹿賀丈史)の行動が謎すぎるが・・・彼もまたホフマン先生の意向を受けてのことなのかなということで(そうじゃないのなら単に意地悪というか、あまりに性格悪い)。
 もしくはマサルの見せ場のために。
 あとはやはりピアノ曲。 もっと聴きたかった!
 コンクールで課題曲が一曲だけっておかしいよねと思いつつ、『春と修羅』の解釈の違いでそれぞれの個性の違いを表現と最小の時間で最大限の効果を出す工夫は認めるしかなく。 プロコフィエフまでがすごく短かった!
 そして個人的なクラシックにまつわる記憶が自分の中から湧き上がってきた。 匂いが記憶につながっているとよく聞くが、あたしはそれがよくわからなくて・・・でも音や音楽があたしにはその引き金なのかもしれないと思わされた。
 音楽を奏でる高揚感、それは確かにここにある。

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2019年10月18日

強風のさなか

 えっ、また台風来てるのか、というくらいの強風。
 先日の台風19号の前日と同じくらいのような気がする。 夕方から雨と言っていたし、また荒れるのか・・・いろいろまた大変なことにならないといいが。
 つい気持ちが落ち込みがちになるが、あまりの風の強さに髪の毛が乱れまくりなのもどうしようもなく、仕事場まで歩いて行っておりましたらば、ふと視界に妙な違和感。

  20191018アゲハの幼虫.JPG 葉っぱがぶんぶんしなっている。
 なんか、いる!
 しかもでっかい。 10cmぐらいあるんじゃないだろうか。
 緑色だからアゲハ系かと思ったけれど、いま10月だからそれはないな。 ガか・・・ちょっとここにいるのは危険なんじゃないの、どっか移動してもらえないかなとよくよく見たら・・・ちっとも動く気配がない。 そもそも生命としての気配が。
 もしかして、サナギになろうとしてる?!
 確かに、終齢幼虫だからこのサイズなのだろうけど、なんでこんな細っこいところで止まるかな〜。
 どうにもできないので仕事に向かいましたが・・・帰る頃は風もあり結構雨も降っていて、真っ暗な中気にして見たら、同じ場所に同じ態勢でいた。 これからしばらく、通りかかったら見てしまうんだろうな・・・。

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2019年10月17日

シンクロ・ダンディーズ!/SWIMMING WITH MEN

 スウェーデンの実話をもとにした映画2本、フランス版は先日観た『シンク・オア・スイム』だったが、満を持してイギリス版登場!

  シンクロ・ダンディーズP.jpg はだか一貫、花咲かす!
  さえない日々に二度目の青春を輝かす、抱腹絶倒のスポ根ブリティッシュ・コメディ!

 すっかり妻との折り合いが悪くなり、息子とも意思疎通ができなくなった(はっきり言えばバカにされている)会計士のエリック(ロブ・ブライドン)は、ひたすら泳ぐことで現実逃避をしていた。 妻は図書館廃止反対の代表に選ばれ、充実した日々を送っていて(しかもその仲間には彼女に色目を使う男性がいるような)、自分が役立たずだと感じているためだ。 すっかりなじみとなった公営プールで、中年男性ばかりで構成されたアーティスティックスイミング(旧シンクロナイズドスウィミング)チームと顔みしりになったエリックは「数字に強い」という特性を生かしメンバーの練習の仕方にアドバイス。 それがもっともだと身をもって知ったルーク(ルパート・グレイブス)らメンバーたちは、エリックに加わってもらうように説得する。 断り切れないエリックは、次第に練習に楽しさを見出していく。
 そしていつしか、イギリス代表チームの一員として世界選手権に出場することになって・・・という話。

  シンクロ・ダンディーズ1.jpg 『シンク・オア・スイム』より練習過程は多め。
 だからエリックがアーティスティックスウィミングにはまっていく過程は丹念に追っていたような気がする。
 しかしこのチームには<鉄の掟>があって・・・個人的な悩みや弱音ははかないとか、プライバシーに踏み込まないとか、プールの中の出来事はプールだけの秘密、とか。 出会ったその日から個人的な悩みを吐露しまくった『シンク・オア・スイム』と全然違う! これって国民性なのか?
 また元祖ご本家(モデルとなったスウェーデンチームの今のキャプテン−本人)が出演したり、彼らへの「負けてたまるか」の気持ちでメンバーが一致団結するとか、フランス版とは違う展開多し。  群像劇としては少し弱め、エリックがほぼ主役で、他の人たちのバックボーンはあまり語られないのがちょっと物足りない。

  シンクロ・ダンディーズ2.jpg その分、プールのシーンが多めになっております。
 チーム最高齢のテッド(ジム・カーター)は『ダウントン・アビー』のカーソンさんで、ルーク(ルパート・グレイブス)はBBCの『シャーロック』でのレストレード警部、なによりエリックは『イタリアが呼んでいる』のロブなのでその3人の親しみ具合というか、安定感は抜群なれども、それ以外の人たちが掘り下げられてない・・・まぁ、水の中に入っちゃえば誰が誰かよくわからなくなっちゃうけどさ。

  シンクロ・ダンディーズ4.jpg ルパート・グレイブス、ちょっとかっこいい役!
 レストレード警部ではカッコ悪めではあるが、本作では意外と“いい男”パート担当。 家を出て来たエリック(被害妄想から本人は追い出されたと思っている)を自分のところに泊めたりとか、なし崩しになっていく<鉄の掟>に対しても「いいじゃないか」的すべてを受け入れる・更に新しいチャレンジを恐れない人物で。 彼のキュートさがこの作品の収穫かな!(とはいえルークは離婚歴があり、子供たちに会えないという孤独を抱えた本質的にはダメ男なのだが)

  シンクロ・ダンディーズ3.jpg 非公式世界選手権にて。
 音楽の盛り上がりが個人的にいまいち・・・時代設定を現在に持ってきたから? みんなが知ってる!、という曲を使っていないため盛り上がり切れませんでしたが、水中での技など大胆に表現・描写! そこはダイナミック!
 同じ題材でもこんなに変わるのか・・・国民性というか、その国での今のトレンドが見えるようで面白い!
 イギリスでは奥様によろこんでもらうことがいちばん大事なのね、と実感するも、フランス版の個人主義故のお互いを尊重する関係のほうが今のあたしは好きだなぁ。 ということで個人的には『シンク・オア・スイム』に軍配!

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2019年10月15日

Rのつく月には生牡蠣を!@ガンボ&オイスターバー

 カキが好きな仲間内で、「10月に牡蠣を食べよう!」が習慣化しつつある。
 それはあたしのところに「赤か白のワイン・デキャンタ一本分プレゼント」のご案内が来るからだ・・・アルコールを受け付けないあたしにとっては無用の長物だが、飲める人がいるならば話は別。 呑める者二人・呑めない者二人で牡蠣を食べまくる!
 場所は、間をとってNU茶屋町だ! ミント神戸店より働く人の感じがいいし〜(ミントの店長さんが頑張っているのはわかっているが)。

  20191010ガンボ&オイスターバー1.JPG 生牡蠣3種&オイスターカクテル
 あっという間にぺろりといただきます!
 生で出てくるやつはでっかい! それでもすぐ食べちゃう! 殻の器に残るスープ(?)も飲んじゃう!
 この後サラダが来たのですが(それもカキ入り)、写真撮るの忘れました・・・。

  20191010ガンボ&オイスターバー2.JPG 焼きガキ3種
 素焼き・バター焼き・香草焼き。 このあとカキフライも来たが写真を撮るのを忘れた・・・。
 生牡蠣とはまた違うおいしさよね〜。

  20191010ガンボ&オイスターバー3.JPG カキの昆布はさみ蒸し
 これで二人分。
 おろし醤油、ポン酢、青唐辛子のなにかなどつけて食べるものが出てきましたが、そのまま食べても十分おいしかったです。 途中で味を変える必要はなかったけど・・・残るのもあれなので、おろしをちょっともらいました。
 このあとにカキごはんとカキの出汁スープが出て、満腹満腹。

  20191010ガンボ&オイスターバー4.JPG 誕生日じゃなかったのですが、バースデープレートが出て来た!
 お酒呑む人に予約をお願いしたら、そういう手配をしてくれたらしい。 ありがとうございます。
 「よかったらお写真撮りましょうか?」と明るく店員さんに言われたが・・・あまりそういうノリの4人じゃなかった・・・すみません。

posted by かしこん at 23:59| Comment(0) | ごはん・お茶の時間 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年10月14日

殺人鬼ゾディアック 犯罪史上最悪の猟奇事件、その隠された真実/ゲーリー・L・スチュワート スーザン・ムスタファ

 「あぁ、そういえば邦訳が出たから読みたいと思っていたのにすっかり忘れてたなぁ」とその本の実物を見て思い出す。 確か、発売時期になんかの書評で取り上げられていたのです。 奥付の発行は2015年9月ですよ・・・4年以上も忘れていたとは。 でも、逆に言えばその後、話題に出なかった(新事実が判明していない)ということでは。
 犯罪ノンフィクションを結構好んで読んでしまうほうですが、ゾディアック事件に関しては未解決なのと専門の邦訳書が少ないこともあり、あたしの知識は映画『ゾディアック』(デヴィッド・フィンチャー監督)に上書きされてしまいました。 映画の原作であるロバート・グレイスミスの『ゾディアック』邦訳を読んでも「映画と固有名詞のカタカナのふり方が違う(トースキーがタースキーになっている、など)、なにより最有力容疑者の名前が全然違う」とパニくるほど。 本書でもかなり違うので(トースキーはトスチに、ヴァレーホがヴァエホーに、など)、どれがどれなのか納得するのに時間がかかって。
 でもある程度わかってきたら、本書の主張は映画ともグレイスミスの主張とも符合すると感じられて「おぉ!」となる。
 しかし本書の読みどころはゾディアック事件の真実というよりも、親に捨てられた子が過去を振り切ることのほうだった。

  殺人鬼ゾディアック単行本.jpg 表紙は著者の父親の写真。
 2002年5月、39歳であった“私”(筆者)は初めて実の母親の名を知る。 素晴らしい養父母に育てられ愛情を感じてはいたが、実の親には見捨てられたという感覚からずっと逃れられない著者は、母親に実の父親のことを尋ねるが、母はあまり覚えていないという。 それならば、と自力で調べ始めたら・・・父親はゾディアックだったのではないかと考えに至った。

 何故、そんなにも自分の生物学上の両親のことを知りたがるのか不思議でたまらなかった。
 養父母がいて関係が円満なのだからそれでいいではないか。 知ったからっていいことばかりじゃないのに、とあたしは思ってしまったが、筆者は信心深い養父母から愛と赦しの大切さを学んでしまったので、生物学上の両親のことも愛して赦したくてたまらないらしい。
 遺伝上の父親と別の母親との間に生まれた子供(筆者にとっては義妹弟になる)に、自分が見つけ出した手掛かり(父親はゾディアックらしい)を突きつけて「兄妹だから(一緒に受け止めよう)」みたいに迫るのは・・・すげー迷惑だと思うんですけど、筆者はなかなか気づかないし(自分の妹だというだけで通じ合えると思っていた、と書いている)、「実の親に捨てられた悲しみは一生付きまとって離れない」と自分のことだけでなく妹弟のことも含めて断言している。 彼とは違う形で対処している可能性を考えに入れてない・・・「すべてを赦し、受け入れる」という筆者の想いは素晴らしいと思うが、それをすべての人に強要しないでほしいな、と感じてしまった。 彼はそうしなければならなかったのだろうけど、誰もがそうではないのに。
 とはいえ、父親の親族との交流が描かれると、「なるほど、そうやって縁が続く・親戚の輪が増えていくのは面白いかも」と思わされるけれど・・・もし自分だったらそこまでしたいだろうか、したくないとしたらそれは何故なのか、と考える。
 筆者は「愛されたい」という渇望に忠実に行動している。 愛されたいから自分も愛していく、という感じ? それでやっと自由になった。
 あたしは、自分が愛していない人に愛されることを求めない。 その気持ちに至ってようやく自由になった。
 多分、到達した気分は似ているけど、その過程は千差万別なのだ。 筆者の心の平穏に祝福あれ。

posted by かしこん at 15:19| Comment(0) | ☆ 読んじゃいました | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年10月13日

ホテル・ムンバイ/HOTEL MUMBAI

 これもまた以前、『ハリウッド・エクスプレス』で紹介されて知ったのだが、「あれ、この映画の予告、前に見たことがあるような・・・でもキャストが違うなぁ」と思っていた。 で、それはシネマ神戸のレイトショーでやってた『ジェノサイド・ホテル』だったのである(期間が短かったので観に行くことはできず)。
 これはそのハリウッドリメイクなのか、たまたま同じ事件を題材に描いたものなのか不明だが、デヴ・パテルくんが出るなら観たいよね、となんとか駆けつける。

  ホテル・ムンバイP.jpg 彼らは<信念>だけで、銃に立ち向かった。
  2008年、五つ星ホテルで起きたテロからの、奇跡の救出劇

 インドのムンバイにある五つ星ホテルのタージマハル・ホテルで、敬虔なシーク教徒のアルジュン(デヴ・パテル)は給仕として働いている。 オベロイ料理長(アヌパム・カー)はとても厳しい人だが、公正なのでみな尊敬している。 「お客様は神様です」の心情のもと、タージマハル・ホテルの従業員たちはハイレベルのサービスを行うことが誇りだった。
 しかし2008年11月26日、ムンバイで起こった同時多発テロの舞台のひとつとしてこのホテルが選ばれた。 その日、ホテルには富豪の娘ザーラ(ナザニン・ボニアディ)が夫であるアメリカ人の建築家デヴィッド(アーミー・ハマー)、ベビーシッターのサリー(ティルダ・コバン=ハーヴィー)と乳児の娘、盛大なパーティーを主催するロシア人の実業家のワシリー(ジェイソン・アイザックス)など世界各地からの宿泊客が多くいて・・・という話。

  ホテル・ムンバイ1.jpg デヴ・パテルくん大人になったなぁ。
 と思ってしまうのは、やはり『スラムドッグ・ミリオネア』の印象が強くその後も定期的に観ているからでしょうか。 今回もイメージそのままの役(実直で、誠実で頑張り屋)なので安心して観ていられる・・・のだけれど、テロ実行犯たちが動き出してからは誰がどうなるかわからない緊迫感に満ち、最後までずっと続くのだった。

  ホテル・ムンバイ3.jpg アメリカ人が安易にヒーローにならないところもリアル。
 アーミー・ハマーの役柄が、見ているこっちの顔色が変わりそうなほど無神経なアメリカ人で・・・妻と子供は愛しているけど妻の生まれた国の文化に敬意を払っていないというか。 妻のザーラ側にも先進的な考えがあって不合理な因習を批判しているんだろうけど、外国人である夫がそのへんに無関心なのはどうなの?、と。 そのあたりにもインドが抱えている問題が見える。

  ホテル・ムンバイ4.jpg 実行犯たちは「あんな子供が」と言われてましたが、あたしには年齢がよくわからず。
 子供っぽい一面も描かれてますが、ためらいもなくその場にいる人を撃ち殺せる冷酷さというか異教徒は人と思ってない感じがビシビシ伝わり、その場に居合わせたら誰もが殺されておかしくない恐怖が。 相手が少人数でもカラシニコフ撃ちまくってこられたら誰も対応できない無力感がただごとでない。 しかし実行犯たちも何者かの指示で動いているだけに過ぎず、神の名のもとに利用されているだけ。
 教育って大事だなぁ、何か一面だけではなく幅広い視野を持つための、ということしか思えない・・・。

  ホテル・ムンバイ2.jpg 料理長、かっこいい。
 そんな中、誰も責めない、オベロイ料理長がこの映画の良心だった。
 同時多発テロが大ニュースなのはわかるが、実況生中継をすることでテロリスト側に情報を提供してしまうことをマスコミはどう考えるのか。 大きな事件が起こるたびに問題になるが、その答えは出されてないように思う(そもそもどう考えているのかがまったく見えない)。
 実行犯テロリスト側を理解不能な化け物として描かない、被害者側も一方的に描かない、とかなりバランスがとられているというか配慮が感じられるけど(だからホテルマン視点なのかも)、R15+なだけあって流血すさまじい。
 ムンバイ同時多発テロってこんなに大規模だったのか!、とまたしてもちゃんと知らない自分が情けない。
 日本でこういうことが起きないのは銃規制がなされているからだけなのでは、と考えてしまう。 広く公開されてないけど、もっと多くの人が観るべき、知るべき内容じゃないだろうか。

posted by かしこん at 18:57| Comment(0) | 映画 movie | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年10月12日

プライベート・ウォー/A PRIVATE WAR

 <秋のパイクまつり>ということで、ロザムンド・パイク主演映画が日本続けて公開となる。 その一本目が『プライベート・ウォー』。
 ロザムンド・パイク大好き! 『ゴーン・ガール』以降、多分役を選べるようになってから“強い女”を意図的に演じている気がするのが彼女の主義主張であるように感じられる。 というか、あたしがそういう役をやってほしいと思ってたのかな、『アウトロー』の彼女はなんか居心地よくなかった。

  プライベート・ウォーP.jpg 挑む女は美しい

 メリー・コルヴィン(ロザムンド・パイク)はUPI通信を経てサンデー・タイムスの特派員として世界中の戦地に赴いて自ら取材しているジャーナリスト。 2001年のスリランカで銃撃戦に巻き込まれ被弾、左目の視力を失う。 その後も黒い眼帯をトレードマークとして戦地へ出る。 それは戦争や紛争がいかに民間人を苦しめているかを世界中に知らせるため。 しかしメリーは重度のPTSDに苦しんでいて、悪夢と幻覚に襲われていた。 そして2012年のシリアへ・・・という話。
 『バハールの涙』に出て来た戦場ジャーナリストってこの人だったのか! でも微妙に名前とか設定が違うような・・・(メリー・コルヴィンをモデルにしたということなのだろう)。 それだけ、伝説の存在なのね。
 「ロザムンド・パイク、キャリア最高の演技」との声も上がってますが、頷ける。 勿論現時点で、このあと、彼女はもっとすごいの演じると思う。

  プライベート・ウォー2.jpg 報道賞の授賞式。
 必要ならばドレスも着こなし、紛争地に入ってもピアスをつけフランスの高級下着を身につける。 それは女としてのお洒落心ではなく、死体になったとき自分だとわかるための手がかりなのだ。 その覚悟を持っていても現実の悲惨さは、彼女の精神をこれでもかと蝕む。 日常生活の延長が悪夢や幻覚につながっていく描写が、メリーの抱えているものをダイレクトに現わしていてこちらもドキッとする。 戦場から戻ってきてもこんな感じなら、戦場にいたほうがましではないかと思えるほど。 でもPTSDを自覚しないまままた戦場に向かってしまうのはあまりに危険で、メリーの言動にハラハラし通し。 それもまた彼女のまわりにいた人の気持ちだったのかもしれない。
 マシュー・ハイネマン監督はずっとドキュメンタリーを撮っていた人だそうで・・・わかりやすい物語性に落とし込まないところがよかった。

  プライベート・ウォー1.jpg この表情、すごくきれい。
 酒とたばこで焼けたようにひずんだ声と喋り方は多分ご本人に似せたんだろう。
 ロザムンド・パイクほぼ出ずっぱりですが、サンデー・タイムスの編集長がトム・ホランダー(『ボヘミアン・ラプソディ』のジム・ビーチ!)、その後相棒のようになるカメラマンのポール・コンロイがジェイミー・ドーナン、メリーを癒すのちの結婚相手がスタンリー・トゥッチ、他にもどこかで見たことのある人たちぞろぞろと、なかなかに豪華キャストなのが意外でした。 特にスタンリー・トゥッチ、『プラダを着た悪魔』の頃とあまり変わっていないような気がして(もっと老け込んだ役を他で見たこともあったので)・・・実年齢いくつだ!

  プライベート・ウォー4.jpg メリーを支えようとするポール、すごくいいやつ。
 ポールにとってメリーは出会ったときからすでに伝説の存在で、でも憧れに臆することなく一緒に仕事をして信頼を勝ち取り自分も成長した。 だからメリーに「ちょっと休め、ちゃんと治療しろ」と言えるのだ。 メリーの記者人生の中で最も過酷な2012年のシリア・ホムス地区への潜入にも同行している。 虐げられている女性や子供たちの現状を、個人の物語を伝えたい、という情熱に突っ走りすぎるメリーに対するポールの存在は観客にとっても心のよりどころ。
 なのに「2012年のシリアにこんなことあったんだっけ?」と記憶を掘り起こさなきゃいけない情けない自分・・・(ホムス包囲戦は2011年から2017年にわたったし、シリア内戦はまだ続いているのでその一年だけで考えても意味がないのであるが)、すみません、もっとちゃんと世界のことを知ります。
 エンディングの歌がこれまた心をえぐる声で。 元ユーリズミックスのアリー・レノックスで・・・ずっと耳に残る。

posted by かしこん at 23:59| Comment(0) | 映画 movie | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする