ピータールー? ウォータールーはあるけど他にそんな地名があるの?、というのがポスターを見たときの第一印象。 しかもその地名からはモネの橋の絵しか出てこないあたし。 実は<ワーテルローの戦い>のワーテルローがウォータールーのフランス語読みだと知る・・・カタカナって許容範囲が広すぎるわ〜。
マイク・リー新作ということで・・・大作の予感。
マイク・リー新作ということで・・・大作の予感。
1819年、イギリス・マンチェスター。 ヨーロッパ全土を巻き込んだナポレオン戦争が1815年のウォータールーの戦いで終結したものの、経済は回復せずに労働者階級の人々は苦しんでいた。 が、彼らには選挙権もなく、代表権もないので議会に人を送ることもできない。 成人男子一人一票と議会への代表権を求めて抗議活動が起こってきた。 彼らは有名な活動家ヘンリー・ハント(ロリー・キニア)を招聘し、演説の場を持つことに。
しかしマンチェスターの治安判事たちはそんな労働者たちの動きを苦々しく思っており、ハントとその仲間を逮捕しようと考えるが・・・。
あの時代を生きる人々の群像劇・・・なのだけれど、一時間を過ぎても何か事件が起こるわけではない・・・特に説明もないし、誰かにフォーカスされるわけでもないので基礎知識のない身にはどう観ていいのかいまいちわからない。 「えーっと、この人って誰だっけ?」と考えちゃうと止まるし。 観客席の空気が重くなってくるのも感じた。 よくわからないが、マンチェスターの労働者側・治安判事側・ロンドンの体制側など、ざっくりと判断できればいいのか、と割り切ってからは気持ちが楽になった。
よく考えれば人物紹介もなく、字幕もなく、ナレーションもなく、登場人物の会話だけで状況を浮かび上がらせるのだからすごい。
どこかで見たことがあるような気がするんだけど思い出せない役者さんたちが多く出演する中、ヘンリー・ハントは演説の名手として登場するだけあってすごく声がいい! でも誰か一人がヒーローになるという話でもないので・・・。
200年前がどんな感じかよくわからないのですが、みんなの服装がすごくリアルで、着倒しているボロボロ感がよく出ているのにはびっくり。 しかも服のスタイルとか重ね着のセンス、結構好みです!
あと、前半は多くのカットの構図が明度の高いネーデルラント絵画(特にレンブラント、じゃあバロック絵画になるのか)などを思わせるのですよ。 そこを見ていたら意味のわからなさも乗り越えられた気がする。
労働者側も一枚板というわけではなくて。 武器を持って国王を倒そうと叫ぶ過激派もいれば、資本家に逆らうなんて後が怖いからと活動に参加しない人も。 男性一人に一票と盛り上がる婦人会のみなさまには、「えっ、女性にも参政権を!、はないのか!」と驚愕しつつ、まだそういう時代ではないのかと悲しくなり・・・。
あくまで非武装で、平和的な集まりでなくてはならないと主張するハントに最後まで対立し続けた地元の活動家が、集会当日に会場に向かう人々に「武器は何も持つな!」と棍棒やらなんやらを捨てさせる場面には、うっかり涙ぐむ・・・。
よくわからないなりに、登場人物たちに思い入れができていたようです。
こいつらは大体にくたらしいのであるが(見ていて額に五寸釘を打ちつけたくなる感じ)・・・中には労働者側の主張をくみ取る人もいる。 でも感情的に反応している(労働者のくせに逆らうのはけしからん、的な)やつのほうが声も態度も大きいから、そっちが主流になってしまうのよね。 まぁ摂政王太子側も腹立たしいけどさ。
この終盤のためにこれまでの点描はあったんだなぁと感じるけれど・・・理不尽さに胸がつぶれそうだ。
しかもすっきりした終わり方でもないし・・・もやっとする、すごくもやもやする。 でもそれがこの映画の目的なんだろうなぁとも思う。 この映画を観てわかった気になってはいけない、この先に思いをはせ、考えろってことで(この事件の後で民主化の声が高まったのだろうなと想像できるし)。 でも今に続くための犠牲だったと思うのもつらい。
それにしても、こういう何かの映画祭で賞は獲りそうだが、世界的に興行収入が期待できそうにない映画に資金を出すのはアマゾンスタジオかネットフリックスなのだな、というのもなんだかせつないわ・・・。