2019年08月07日

ワイルドライフ/WILDLIFE

 なんとあのポール・ダノの初監督作品だそうである。 子役から見てきた彼が映画を撮るようになったのだね・・・としみじみする。 ジェイク・ギレンホールが気になって仕方がないあたしとしても、このコンビは願ったりかなったりである。
 同じくジェイク・ギレンホールが出ているにしても『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』はそこまで観たい感が強くないのは新しいスパイダーマンを観ていないせいであろうか(トビー・マグアイア版でいいと思ってるから?)。 シリーズ物の中途参入はやはり難しいわ・・・。

  ワイルドライフP.jpg 僕は二人から、人生のすべてを学んだ。

 アメリカ・モンタナ州の田舎町、1960年代。 14歳のジョー(エド・オクセンボールド)は最近ここに引っ越してきたが、父ジェリー(ジェイク・ギレンホール)と母ジャネット(キャリー・マリガン)が穏やかに会話するのを見て、この生活はしばらく続くだろう、と安心した気持ちになる。 だが翌日、父の言動からほころびを感じ、母の態度にも危険な何かが見えた。
 ある日、ジェリーは仕事をクビになる。 後日、「あれは間違いだったので戻ってきてほしい」という仕事場からの申し出を、自分のプライドのために拒絶する。 しかし仕事はすぐに決まらないので、ジャネットが働きに出ることにする。 静かに入っていく日常生活のヒビは、ジェリーが「山火事消火隊に入る」と言い出したことで決定的になる。
 ジャネットはジェリーが家を出たことで寂しさからか精神のバランスを崩していき、その負担はジョーの肩にのしかかっていく・・・という話。

  ワイルドライフ2.jpg この頃は幸せな日々が続くと思っていたのに。
 最初のシークエンスではこの三人家族が仲良しであることを十分に示唆するのだけれども・・・ある場面から急に、「え、この家族、というか両親、ヤバい?」と感じ・・・そのあとはすぐにガラガラと崩れていくばかりに。
 ジェイク・ギレンホールが、息子にアメフトを勧めるなどいかにもアメリカンな価値観の父親をやっていて・・・「あぁ、かつては文科系の王子様だったのに」とまたどうしようもないことを考える(ということは実はあたしはその時期の彼が好きだったのか?)。 そんな父親だから生活を守りたい母親との間の溝がどんどん深まっていくのが悲しい・・・お金持ちでなくていいけど、常に金策に困るような生活は気持ちにゆとりがなくてやはりつらいよな、と感じるけど・・・だからって母の変貌ぶりはあまりに急すぎて(息子目線で描かれているから突然の変わりように映るのだろうか)、「それは息子がかわいそうすぎるだろ!」とドキドキする。

  ワイルドライフ3.jpg 激変する父と母の関係。
 ジョーは14歳にしては声が父親より低い。 それが最初からこの三人の関係性を示していたのかもしれない。 ジェリーとジャネットはどういうどういう交際を経て結婚し、ジョーが生まれるまではどういう暮らしをしていたのか詳細はわからないのだが、ジャネットは誰かに依存していないと自分を保てないタイプ(期待される姿に自分を合わせていくタイプ)なことをジェリーは気づいていなかったのではないか。 その人に自分が見える以外の姿があるとは想像しにくいよね、近い存在であれば尚更。
 台詞やナレーションで多く説明せず、映像や間、役者の表情などで様々なことを掬い取っていくポール・ダノは、すでにインディペンデント映画のお手本を自分のものにしてしまっている。

  ワイルドライフ5.jpg お母さん、マジヤバい。
 ジャネットはすごく損な役だと思うけど・・・それを堂々とやってしまったキャリー・マリガン、すごい。 最初は美しく理解のある母親だけど、すぐに人生の疲れが表情に出る。 深々とした口元のしわとか、毒々しさを感じさせる厚化粧とか、痛々しさと不快さとのぎりぎりのところにいながら息子を追い詰める。 時代が違うから「精神的に自立できていない女」と責められないけど、あまりにも・・・でした。 毒親、と呼ぶのは簡単だけれども、そこに至る過程があるわけで。 でもそれを全部息子がフォローするのは間違いだよ。
 ジョー役の人、どこかで観たことがあると思っていたら・・・『ヴィジット』のラッパーを目指していた弟くんだった! 絶対14歳じゃないじゃん(撮影時、16歳だったらしい)。

  ワイルドライフ4.jpg 父は父なりに息子を愛しているのだが。
 伝わってはいるからジョーは父を思うし気遣うんだろうけど・・・でもどうして大人って子供の視点を忘れてしまうんだろう、って悲しくなる。 子供を介して会話をするのはやめてください、自分たちで直接話し合えばいいじゃないか。 いや、結局それは彼らが大人ではないからだ。 人は決して大人にはなれないのだと、子供が感じてしまうことが悲しい。 だからジョーは子供でいることをやめ、<親>への絶対的な期待を持つことをやめる。
 それが成長だということなんでしょうね・・・あぁ、せつない。

  ワイルドライフ1.jpg そういうラストシーンになるだろうことは想像できたが。
 実際、その場面になったら・・・自分でも驚くぐらい涙が込み上げた。
 家族の中の不幸、というのはどの家もそれなりにあるのだろうし、ジョーの不幸も<よくある話>に含まれるのかもしれない。 でもジョーが感じたものは、彼の中ではなによりも強くてどうしようもない体験だったのだ。 それでも彼は、きっと乗り越える。
 ごく普通の家庭でごく普通に育った、という人は実は少数派なのだろうか。 そりゃ社会の閉塞感は強くなるよなぁ。 自分がつらい目に遭ったから他の人にはそうしてほしくない、と全員が思うわけではないというのが・・・。
 年齢的にはジェリーとジャネットのほうに感情移入できておかしくないのだが(彼らの気持ちもわかりましたが)、結局ジョー目線で見てしまった・・・あたしはまだ子供なのだろうか、それとも「大人になり切れない大人」に対してあきらめることを選ぶ道をとったのだろうか。 とりあえずあまり他の人に迷惑をかけない存在でありたいと考えている。

posted by かしこん at 23:59| Comment(0) | 映画 movie | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする