2019年07月04日

僕たちは自由という名の列車に乗った/DAS SCHWEIGENDE KLASSENZIMMER

 予告を観て気になっていて・・・でも上映時間のタイミングがなかなか合わず。 最終週が朝10時からの一回のみとなり、「あ、もう無理だ」と思ったけど、「午前休みにすればなんとかなるのでは?!」と日程調整した結果、最終日に滑り込み。 普段自分が行くのと違う時間帯のため、客層の違いにびっくり。 意外と人数も多かったし。 この時間のほうがお客が入るのだから、なかなかレイトショーには回してもらえないのかもしれない・・・(『ハウス・ジャック・ビルト』はがっちり夜の時間帯でした)。

  僕たちは希望という名の列車に乗ったP.jpg なぜ、越えなければならなかったのか――

 1956年、東ドイツの工業都市スターリンシュタット。 クルト・ヴェヒター(トム・グラメンツ)は親友のテオ・レムケ(レオナルド・シャイヒャー)とともに、祖父の墓参りのために西ベルリン行きの列車に乗る。 帰りの電車までの時間、西側の雰囲気を楽しむ二人は映画館でハンガリーで起こった蜂起と武装衝突についてのニュース映像を見て衝撃を受ける。 スターリンシュタットに戻ってから地元の新聞を見ると、すぐに鎮圧されたと小さな記事にしかなっていなかったことにも驚く。 翌日、学校のクラスでこのことを話し、「犠牲になったハンガリー市民に哀悼を捧げよう」と2分間の目標を提案する。 エリック・バビンスキー(ヨナス・ダスラー)は「なんでそんなこと」と反対するが、多数決により可決されてしまう。 2分間、黙っているだけだった。 しかしそれを問題視した教師により事態はおおごとになり、<社会主義国家への反逆>だとみなされてしまうことに・・・という話。
 あぁ、体制や組織を守ろうとする、その中で自分の地位や力を最も重要と考える大人って、なんて汚いんだろう!、としみじみ思った。 いや、あたしも大人なんだけど、そんな大人にはならないでいよう!、と固く心に誓うのですよ。 それくらい、高校生たちがかわいそうで。 なんでそんなことにならないといけないのか、と。

  僕たちは希望という名の列車に乗った4.jpg 素朴な青春を送っていたのに。
 いや、彼らもちょっとおバカなところはあったけど、それが若さというものでしょう。 黙祷だってものすごい主義主張があったわけではなく、ノリと勢いと、「ちょっと先生を困らせてやれ」ぐらいの遊び半分ですよ。 そりゃ不真面目かもしれませんよ、だからってそこまで追い込まれるほどのことをしたか? いや、してないでしょ。 事を大きくして利用しようとした醜い大人たちのせいですよ。
 彼らは社会主義・共産主義の申し子としてエリート教育の入口に立つ若者たち。 親の職業はそれぞれ、知識階級も労働者階級もいて、高い教育レベルにいながらライフル狙撃の授業もある! その銃はいざというとき誰に向けられるものなのか考えたことはあるのか? 教える側は何を想定しているのか? 教育の怖さも感じつつ、だからこそ彼らはよく学びよく考え、行動に移せる人材なのに。

  僕たちは希望という名の列車に乗った2.jpg 仲間は大切だとも学んだはずなのに、「首謀者を告発すれば他の者の罪は問わない」と密告を強要される。
 そんなやり方を責めれば「ゲシュタポだと!」と激昂する大人もいますが、「いや、やってることはゲシュタポと一緒、もしくはそれ以上ですよ」と言いたくて仕方がない。 やりかたがひどい、ほんとにえげつない。 言葉尻をとらえて追い込む怖さに、彼らも正直に言おうとしていてもどう取られるかわからないと言動が不自然になり、余計に追い込まれるという悪循環。 やるせなかった。 学務局の役人も大臣も、高校の校長以外の教師たちもひどい大人ばっかり。 こんなやつらがえらそうな顔をする社会主義・共産主義には将来はないぞ、民主主義が勝利したわけではなくて彼らが自滅しただけでは。
 あぁ、この時代にあたしが生きていたら・・・口の禍いできっと死んでると思う。
 多数決の意味を、現代のあたしたちはしっかりわかっているのだろうか。
 高校生たちは「本人役ですか!」というくらいのリアリズムあり。 対して、大人たちは“どこかで絶対観たことがある、キャリアのしっかりした実力派俳優”を揃えているのが素晴らしい。

  僕たちは希望という名の列車に乗った1.jpg テオとお父さんの感じもよかった。
 親世代にはナチス時代はそんなに遠いものではなかったのね〜。 しかもこの時代の30年後が『善き人のためのソナタ』なのだと思うと、これがターニングポイントな出来事だったのではと感じる。 ベルリンの壁ができるのもこの後だし。
 いやいや、新聞やラジオをそのまま信じるな・・・と思うけど、当時の彼らには「ニュースソースを疑え」という発想はない。 実話だし、個人の名誉の問題があるせいか、クラスメイト全員の問題なのに中心に描かれる5人の比重が高すぎたのがちょっと残念(他の人のことも知りたかった)。 でもそうすると話としてとり散らかってしまうかな・・・その後のことが原作本には書かれているようなので、読んでみようと思う(図書館に予約を入れて待機中)。
 高校生たち若者重視で描かれていて、親世代については間接的にだんだんわかっていく、という構成もよかった。 18歳のあぶなっかしさに終始ドキドキさせられたけど、彼らは決して非難されていないのでその決断を応援したくなる。 むしろ、大人であってもこういうまっすぐさ、持つべきではないのかと。 最後の方、ちょっと泣いてしまった。
 そういう時代の話ではあるけれど、いまにも通じてしまうところが悲しい。 実話ベースの歴史もの、有名な人物もいなくて説明は最小限、2時間に満たない上映時間にドイツ映画らしい生真面目さと彼らの青春がぎっしりつまった映画。
 あぁ、今年のベストテンに入るかも。

posted by かしこん at 23:59| Comment(0) | 映画 movie | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする