2019年07月12日

パールとスターシャ/アフィニティ・コナー

 先日読んだ『ヨーゼフ・メンゲレの逃亡』からのつながりで、これを。
 あっちは<ノンフィクション・ノベル>だったが、こっちはフィクション。 とはいえ事実を下書きにしてある。
 あぁ、今更近現代史を学んでいるよなぁ・・・。

  パールとスターシャ.jpg 一面のヒナゲシ。
 1944年、12歳の双子パールとスターシャは家族とともにアウシュヴィッツ絶滅収容所に送られたが、“死の天使”ヨーゼフ・メンゲレに目を付けられ<メンゲレの動物園>に二人だけ入れられる。 殺される危険は遠のいたが、双子という存在にとりつかれた医師の実験対象としての日々が待っていた。 パールとスターシャ、それぞれの視点から交互に描かれた恐るべき世界と、少女たちの純粋さの記録。

 これもまたつらい話だが、パールとスターシャの強さと双子故の違いの大きさが牽引力となって一気に読了。 現在進行形ではなく、ある時点から過去を振り返っているのだろうと冒頭から確信できたので、途中で二人が非業の死を遂げることはないと思えたのも大きかった。
 少女独特の想像力と潔癖さって最強だな・・・と改めて感じさせる一作。 何度も目から涙がこぼれそうに。
 メンゲレは実在の人物ではあるが、悪魔のようなキャラにもなっているな、と。 今回は二人の目から見たものだから余計に、ただ気まぐれに残酷なだけのイカレたやつでしかなく、腹立たしいことこの上ない。 だから、人間性を失わない数少ない大人たちが尊く思えてしまう悲しさ。 そんなことではダメなのに。
 パール、スターシャ、それぞれの言葉に何度も胸を突かれたが、最も刺さったのはこれだった。

> でも、わたしとしては――自分が許したがっているとわかった。わたしを苦しめた者は決して許しを乞うまい――これは確かだ――それでも、許すのが自分に残された唯一の本物の力かもしれないと知った。
 復讐するのが生きる糧だったのに、あるときそう考えるのだ。 13歳で! あたしにはそう思えるかどうかわからない・・・。
 原題の“MISCHLING”、本文中では「混血児(ミシュリング)」として出てきた。 ミシュリングはルビとして。 混血とは・・・ユダヤ人の血が流れている、という意味か? ナチス時代に制定された法的な定義らしいが(勿論、勝手な差別だが)、パールとスターシャが大好きな学者のおじいちゃんからは「すべての生きものの多様性」の素晴らしさとして教えられていて・・・。
 赤いヒナゲシは流された血、倒れた人々の象徴なのだろう。 ヒナゲシの可憐さや美しさはそのままなのに・・・。

ラベル:海外文学
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2019年07月10日

朝からカラス

 朝、家を出たとき、夜中のうちに雨が降った気配はあった。
 しかし今は蒸し暑い。 駅まで歩いているから余計に。 曇っているが紫外線は関係ないので日傘をさしてだらだらと歩く。 「暑いよー」とつい口に出てしまうのは許してください。
 ふと、何か気配を感じた。 すぐそばのフェンスに、カラスが留まってる!

  20190709子供のカラス.JPG なんでこんな近くに!
 1mも離れてなかったと思うんだけど・・・このカラスには警戒の色がかけらもなかった。 ケータイをカバンから出す間も堂々と周囲を見渡している。 なんなんだ、このへんのカラスは間違って出されたごみ袋を狙うときなど、周囲への警戒は怠らないし威圧感さえあるのに。
 よくよく見れば・・・胸のあたりの羽がもこもこと盛り上がっている。 もしかして、独り立ちしたばかりのヒナ(子供)か!
 そう考えれば、この警戒心のなさ・どことなく感じる余裕(実はボーっとしているだけかも)、納得。
 夏は巣立ちの、成長の季節ですね。

ラベル:季節もの
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2019年07月09日

いつかの夏 名古屋闇サイト殺人事件/大崎善生

 買ってすぐに読み始めたのだが・・・前半で一回止めてから、長いことほったらかしにしてしまっていた。 悲劇に至ることをわかっていながら描かれる幸福な日々に、なんかこう・・・つらくなってしまったというか。
 カバーをかけた状態で置きっぱなしにしていた。 「あれ、これってなんだっけ」とふと気づいて取り上げ、「あ」と気づく。 それをまた戻すのも、なんとなく不誠実のような気がして、最後まで読み通すことに。

  いつかの夏.jpg タイトルはGRAYの曲から。
 2007年8月に起こった、ありえないほど残酷な<名古屋闇サイト殺人事件>。
 本書は徹底的に被害者側の視点で、彼女の生涯を描き出す。 母と母の姉、彼女の恋人の視点も踏まえつつ、ほぼ「娘と母の物語」。

 結末を並走させる前半のほうが、読んでいてつらかった。
 読むのを再開させたのがちょうど大学に進学するあたりで、「このままではこの娘と母の関係、ヤバくない?」と別の視点が入ったので最後まで読むことができたかも。 親のために自分の希望をあきらめる・妥協する子供って地方都市にはいっぱいいるが、名古屋という大都市でもあるのだなぁ、という。 いや、そこそこ大都市だからそれなりのものがある程度手に入るから、かもしれない。
 しかし、彼女の大学選びはあまりにも短絡的すぎる・・・特に興味がない学部に入って講義がわからない・つまらないはさすがに(彼女の言葉は聞けないから推測でしかないのだけれど)。 これがある種の<大学全入時代>の実情なのか、もはや大学はモラトリアムとも呼べなくなっているということなのか、ということを考えてみて少しつらさから離れてみた。
 犯罪のルポルタージュは加害者側に重点を置くものが多いが、本作は徹頭徹尾被害者側である。 加害者たちのことは書く価値もないからだそうだが、完全に筆者の思い入れで成立しているので、これを犯罪ルポルタージュと分類するのが間違い。 たまたま悲劇的な死を遂げてしまった、ある女性の伝記である、と考えるべきでしょう。
 この筆者の作品は以前、『パイロットフィッシュ』と『アジアンタムブルー』を読んで「・・・同じ話じゃないか!」と本を床にたたきつけたくなって以来小説は読んでいないんだけど、ノンフィクション系の『ドナウよ。静かに流れよ』・『聖の青春』のほうがまだ読めた。 それでもどこか小説っぽいのだが、事実がベースだからロマンティズムが過度になりすぎないのがまだいいのかもしれない。
 被害者側である辛さについて、加害者側のプライバシーが保護されすぎている点について何度も言及があるが、2019年7月時点においてそれらは普通の人たちの共通認識になっていると思う。 だから若干の時間のずれを感じるが、それもまたおかあさんの努力の結果だと知る。 「つらい経験は人を成長させる」というけれど、それは結果論で、そこまでつらい目に誰も遭う必要なんてないのだ。

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2019年07月08日

島はぼくらと/辻村深月

 なんとなく勝手に「離島を舞台にした青春もの」だと思っていましたが・・・全然違った。 いや、島に住む高校生4人が主要人物なのでそういう意味では“青春もの”で間違いないのだが、離島じゃなかった。 買ってから2年以上も放置して何を言ってるんだって感じですが・・・フェリーで20分の瀬戸内海の島、しかもIターンを積極的に誘致しているという若干トリッキーな設定で、読み始めちょっと焦る。 これは思っていたものと違うかもしれない。
 いや、違ってていいんだけどさ・・・。

  島はぼくらと.jpg 表紙のイメージはそういう少女マンガっぽいじゃん。
 瀬戸内海に浮かぶ冴島。 朱里、衣花、源樹、新の四人は島の同級生だからフェリーに乗って一緒に高校に通っている。 島の若者たちは高校卒業と同時にほぼ島を出ることになるのだが・・・という話。

 高校生4人が主人公なのかと思っていたら・・・大人の女性たちも思いのほかクローズアップされて、「女たちの物語」になっていた。
 「シングルマザーの島」と一部で冴島が呼ばれたように、「親」と「娘」の関係性に重きが置かれている。 彼女らを描くために、4人が狂言回しになっているときもある。 だったら最初から群像劇でよかったのに(完全なる三人称にした方が。 途中での視点のブレが気になった)。 男子2名が割と便利な存在になっており、そんなことなら最初から女子二人をメインにした方がよかったのでは・・・という気もしたり。 全体的に<女の友情>が描かれているので、男性が割を食っている感じがしてしまうからかもしれない。
 とはいえ、「地方で生きることを肯定する物語」なのはすがすがしい。
 地方は生きづらい、という話が多いから・・・まぁ、それも事実ではあるのだが、地方は地方なりにいいところはある。 結局は自分がどう生きるかという話になってしまうのだが。 その分、冴島のとっている人集め・島おこしの内容が「突拍子もない」と「いい話だけど裏がある」の間みたいな感じなので・・・リアリティは「?」だけど、これはこういう設定だと割り切れば。
 あたしはずっと人口30万行くか行かないかぐらいの地方都市で暮らしてきたが、不便はあってもそれはそれでやってきたし、十分だったと思う。 むしろ情報や知識しかなくて実物を見たことがなかったから、都会に行くときはいろいろ見ようと思ったし、神戸市で暮らすようになってからもいちいちいろんなものが新鮮である。 生まれた時から大都市が身近にある人たちは、そして歴史的な事柄もちょっと見回せばたくさんあるのに、意外と興味を持っていないのを見ると、「なんてもったいない」と思っちゃうけど、そんなもんなのかなぁ、とむしろ自分の貪欲さが一般的ではないことにおののくから。
 勿論、島にも厄介なところはありますが・・・それとどう折り合っていくのか、自分がずっと住むのならどう変えていきたいのか。 そこです! 人が多いと「誰かがやってくれるだろう」に流されがちだけど、人が少なければ「やってくれる人はいない・自分がやるしかない」と思うようになるもの。 そこがいいなぁ、と。
 おさななじみとの別れはつらいと思うけど、「大人になってからだってまた違う友達はできるよ」ということも言っておきたい。
 本作での蕗子とヨシノがそうだったように、あたしもそうだし! 昔からの友達は特別だけれど、それ以外存在しないわけじゃない。 17歳では想像しにくいとは思うけど、時間がたてばわかる。
 まぁ、いろいろあっても、切なくもすがすがしい気持ちになりましたよ。

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2019年07月07日

ハッピー・デス・デイ/HAPPY DEATH DAY

 例によって2年くらい前に『ハリウッド・エクスプレス』で大ヒットと紹介されてて・・・でも日本公開のめどが立ってないなぁ、と思っていた。 そしたら続編が本国で公開となり、1・2作続けて日本公開が決定。 なるほど、こういう売り方もあるのね(一作目のヒットの途中で続編制作が決まったと言っていたなぁ)。

  ハッピー・デス・デイP.jpg 誕生日に殺されるなんて―― え? しかも何度も?! プレゼントは永遠に繰り返す<殺される誕生日>

 大学生のトゥリー(ジェシカ・ローズ)は、どこから見ても立派なビッチ。 誕生日の朝も見知らぬ場所で目が覚める。 大学寮のカーター(イズラエル・ブルサード)が前夜酔っぱらったトゥリーを介抱してくれていたのだが、彼女は何も覚えていない。 自分の部屋に帰り、講義に遅刻すると慌てて出ていく。 既婚者である教師と付き合い、忠告してくれる友人にも「余計なお世話」と言い放つ彼女は、夜になりパーティーに向かう途中で、ベビーマスクをかぶった謎の人物に襲われ、刺される。 次に気が付いた瞬間、カーターの部屋で目覚めていた・・・死ぬたびに朝に戻るタイムループにはまり込んでしまったトゥリーの運命は!、という話。
 <ベビーマスク>という、新たな殺人鬼、登場。

  ハッピー・デス・デイ1.jpg 絶叫!
 とにかくトゥリーのビッチぶりが強烈。 誰かに殺されるとしたらと考えたとき、「心当たりがありすぎる」なところは爆笑。 自覚あるんだ、でも直す気ないんだ。
 しかもアイメイクが濃い!、ので、寝起きの彼女はかなりヤバめの顔・・・老けて見えますけど!、と別の意味でドキドキする(俳優さんの実年齢が結構いっているようなので、それをごまかす意味もあり?)。 そんな感じでもモテモテなのか、「誰とでも寝る女」と見られているからモテモテなのか、若い男の好みはわからん・・・と昔からわからなかったことを改めて感じる。
 しかしトゥリーがビッチなのには理由がある、ということがじわじわとわかってくる感じは彼女への同情や感情移入をさせる意味でも重要だけど、それをしてしまうのも安易かなと思わないでもなく。 いや、青春ホラーとしてはそうあるべきではあるんだけどさ。

  ハッピー・デス・デイ2.jpg 誠実なカーターの存在に、トゥリーの心は癒される。
 スラッシャーホラーではあるが、「どうせ死んでも生き返るというか、時間が戻るんですよね」と観客だけでなく本人もそう思っているから悲壮感があまりなく、コメディの比重が高いくせに最後までハラハラドキドキさせる流れ、素晴らしい。 ワンアイディアで突っ走るだけじゃなくて、細部まで工夫を凝らしてある。 それでこそホラー、若い俳優さんたちが活躍する映画って感じ。
 「犯人が誰か」はあぁ、やっぱりね、ではあったけど、そこに至るまでの「えっ、そう来る?!」という振れ幅が広くて楽しかった。
 タイムループする理由は解明されてないけど、「もしかしてこういうことかな」とぼやっと想像することはできる(科学的根拠はないので、あくまであたしの気持ちであるが)。
 エンドロール終了後、続編『ハッピー・デス・デイ2U』の予告が流れ・・・一気に客席から「えっ、続きあるの?」という空気に。
 でも映画前の予告編上映に入れなかったのは映画館側の良心だな、と思いました(先にやったらネタバレだよね)。
 そうされると続編も観たくなりますよね、抱き合わせ商法としても完璧です。 多分、観に行きますわ。

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2019年07月06日

今日は5冊。

 蒸し暑さに振り回されているうちに7月になってしまった。

  沈黙の少女.jpg 沈黙の少女/ゾラン・ドヴェンカー
 久し振りに扶桑社ミステリーから。 ドイツ、<予想を超える展開の果てに待ち受ける驚愕の真相>と言われたら手を出さずにはいられないですよ。

  プラスマイナスゼロ 若竹七海.jpg プラスマイナスゼロ/若竹七海
 だいぶ前の本だが買いそびれていたやつ、今回描き下ろし短編付きで新装版としてリリース。 あ、ここがタイミングかな、と。
 葉崎シリーズなので最近のブラック加減は抑えめかな・・・と期待して。 『殺人犯がもう一人』のヘヴィさが思いのほかキてたようです。

  青い海の宇宙港 春夏編.jpg青い海の宇宙港 秋冬編.jpg 青い海の宇宙港 春夏篇・秋冬篇/川端裕人
 『夏のロケット』と同じ世界の未来の話、とのこと。
 解説を小川一水が書いている、ということにすごく納得。 この二人の印象、ちょっとかぶるところがあったのよね。 しかも帯文を毛利衛さんが書いている。 表紙はジュブナイル風だけど、宇宙へ行くことをテーマにした作品として装置は完璧!

  秘密0−08.jpg 秘密 season0 8/清水玲子
 新章『悪戯 ‐ゲーム‐』スタート、次巻へ続いている・・・(汗)。
 『恐るべき子供たち』的な路線と思いきや、なんとも・・・。
 青木くんの根本的な人の好さに、ほんとイライラします。

ラベル:マンガ 新刊
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2019年07月04日

僕たちは自由という名の列車に乗った/DAS SCHWEIGENDE KLASSENZIMMER

 予告を観て気になっていて・・・でも上映時間のタイミングがなかなか合わず。 最終週が朝10時からの一回のみとなり、「あ、もう無理だ」と思ったけど、「午前休みにすればなんとかなるのでは?!」と日程調整した結果、最終日に滑り込み。 普段自分が行くのと違う時間帯のため、客層の違いにびっくり。 意外と人数も多かったし。 この時間のほうがお客が入るのだから、なかなかレイトショーには回してもらえないのかもしれない・・・(『ハウス・ジャック・ビルト』はがっちり夜の時間帯でした)。

  僕たちは希望という名の列車に乗ったP.jpg なぜ、越えなければならなかったのか――

 1956年、東ドイツの工業都市スターリンシュタット。 クルト・ヴェヒター(トム・グラメンツ)は親友のテオ・レムケ(レオナルド・シャイヒャー)とともに、祖父の墓参りのために西ベルリン行きの列車に乗る。 帰りの電車までの時間、西側の雰囲気を楽しむ二人は映画館でハンガリーで起こった蜂起と武装衝突についてのニュース映像を見て衝撃を受ける。 スターリンシュタットに戻ってから地元の新聞を見ると、すぐに鎮圧されたと小さな記事にしかなっていなかったことにも驚く。 翌日、学校のクラスでこのことを話し、「犠牲になったハンガリー市民に哀悼を捧げよう」と2分間の目標を提案する。 エリック・バビンスキー(ヨナス・ダスラー)は「なんでそんなこと」と反対するが、多数決により可決されてしまう。 2分間、黙っているだけだった。 しかしそれを問題視した教師により事態はおおごとになり、<社会主義国家への反逆>だとみなされてしまうことに・・・という話。
 あぁ、体制や組織を守ろうとする、その中で自分の地位や力を最も重要と考える大人って、なんて汚いんだろう!、としみじみ思った。 いや、あたしも大人なんだけど、そんな大人にはならないでいよう!、と固く心に誓うのですよ。 それくらい、高校生たちがかわいそうで。 なんでそんなことにならないといけないのか、と。

  僕たちは希望という名の列車に乗った4.jpg 素朴な青春を送っていたのに。
 いや、彼らもちょっとおバカなところはあったけど、それが若さというものでしょう。 黙祷だってものすごい主義主張があったわけではなく、ノリと勢いと、「ちょっと先生を困らせてやれ」ぐらいの遊び半分ですよ。 そりゃ不真面目かもしれませんよ、だからってそこまで追い込まれるほどのことをしたか? いや、してないでしょ。 事を大きくして利用しようとした醜い大人たちのせいですよ。
 彼らは社会主義・共産主義の申し子としてエリート教育の入口に立つ若者たち。 親の職業はそれぞれ、知識階級も労働者階級もいて、高い教育レベルにいながらライフル狙撃の授業もある! その銃はいざというとき誰に向けられるものなのか考えたことはあるのか? 教える側は何を想定しているのか? 教育の怖さも感じつつ、だからこそ彼らはよく学びよく考え、行動に移せる人材なのに。

  僕たちは希望という名の列車に乗った2.jpg 仲間は大切だとも学んだはずなのに、「首謀者を告発すれば他の者の罪は問わない」と密告を強要される。
 そんなやり方を責めれば「ゲシュタポだと!」と激昂する大人もいますが、「いや、やってることはゲシュタポと一緒、もしくはそれ以上ですよ」と言いたくて仕方がない。 やりかたがひどい、ほんとにえげつない。 言葉尻をとらえて追い込む怖さに、彼らも正直に言おうとしていてもどう取られるかわからないと言動が不自然になり、余計に追い込まれるという悪循環。 やるせなかった。 学務局の役人も大臣も、高校の校長以外の教師たちもひどい大人ばっかり。 こんなやつらがえらそうな顔をする社会主義・共産主義には将来はないぞ、民主主義が勝利したわけではなくて彼らが自滅しただけでは。
 あぁ、この時代にあたしが生きていたら・・・口の禍いできっと死んでると思う。
 多数決の意味を、現代のあたしたちはしっかりわかっているのだろうか。
 高校生たちは「本人役ですか!」というくらいのリアリズムあり。 対して、大人たちは“どこかで絶対観たことがある、キャリアのしっかりした実力派俳優”を揃えているのが素晴らしい。

  僕たちは希望という名の列車に乗った1.jpg テオとお父さんの感じもよかった。
 親世代にはナチス時代はそんなに遠いものではなかったのね〜。 しかもこの時代の30年後が『善き人のためのソナタ』なのだと思うと、これがターニングポイントな出来事だったのではと感じる。 ベルリンの壁ができるのもこの後だし。
 いやいや、新聞やラジオをそのまま信じるな・・・と思うけど、当時の彼らには「ニュースソースを疑え」という発想はない。 実話だし、個人の名誉の問題があるせいか、クラスメイト全員の問題なのに中心に描かれる5人の比重が高すぎたのがちょっと残念(他の人のことも知りたかった)。 でもそうすると話としてとり散らかってしまうかな・・・その後のことが原作本には書かれているようなので、読んでみようと思う(図書館に予約を入れて待機中)。
 高校生たち若者重視で描かれていて、親世代については間接的にだんだんわかっていく、という構成もよかった。 18歳のあぶなっかしさに終始ドキドキさせられたけど、彼らは決して非難されていないのでその決断を応援したくなる。 むしろ、大人であってもこういうまっすぐさ、持つべきではないのかと。 最後の方、ちょっと泣いてしまった。
 そういう時代の話ではあるけれど、いまにも通じてしまうところが悲しい。 実話ベースの歴史もの、有名な人物もいなくて説明は最小限、2時間に満たない上映時間にドイツ映画らしい生真面目さと彼らの青春がぎっしりつまった映画。
 あぁ、今年のベストテンに入るかも。

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2019年07月03日

ハウス・ジャック・ビルト/THE HOUSE THAT JACK BUILT

 ラース・フォン・トリアーの映画を観ると気分的に不愉快になるのはわかっているのに、何故それをわざわざ確認したくなるのだろう? なんだかんだ言ってあの画ヂカラはすごいと思っているからだろうか。 題材がシリアルキラーというのもはまりすぎ。

  ハウス・ジャック・ビルトP.jpg ゾッとするほど、魅力的

 これは連続殺人犯ジャックの12年間を振り返る告白。
 ジャック(マット・ディロン)は順不同で、自分にとって印象深い5つの出来事をヴァージ(ブルーノ・ガンツ)に語る。
 たとえばジャックが赤いワゴン車で雪の季節に林の中の道を通ったとき、立ち往生している女性(ユマ・サーマン)に助けを求められる。 車が故障したらしい。 ジャックは彼女に押し切られて修理工場まで送ることにするが、彼女の失礼すぎる言動に腹を立て・・・。

  ハウス・ジャック・ビルト3.jpg ユマ・サーマン、強烈な役。
 5つの出来事+エピローグという構成が見やすいけど、これって上映時間が長いパターンだわ(152分でした)。 トリアー映画では出演者はみんなひどい目に遭うのがお約束(?)だけど、これもひどい目に遭っている。
 「カンヌ映画祭で退席者続出の問題作、日本では無修正ノーカット版を公開!」とのことですが・・・トリアー作品が問題になるのはキリスト教圏だからで、宗教的タブー感の薄い日本では問題にならないというだけのことでは。 R+18だし血みどろも残虐な場面も多々ありますが、作り物だなぁとわかるからそこまでではないなぁと思っちゃうけど、ただあたしの感覚がマヒしているだけかもしれない。 唯一ヤバいと思ったのは、少年時代のジャックの回想でアヒルの足を片方切っちゃうところ(エンドロールで「動物に傷をつけていません」的な注意書きが大きめに出るのもギャグなのか皮肉なのか)。
 やはり、人を不愉快にさせる映像が満載なのは間違いない。

  ハウス・ジャック・ビルト2.jpg マット・ディロン、この役をよく引き受けましたね。
 ほぼ出ずっぱりの彼はすごい好演で、賞にノミネートされてもいいのに。
 ほんとにイヤなヤツで、1ミリも同情できない(むしろ地獄に落ちてほしい)存在を観客に「見たくない」と思わせないで最後まで引っ張るってすごいと思う。 場面ごとに顔が変わって見えるのもなんだか面白かった。 あるときはジム・キャリー、あるときはイーサン・ホーク、みたいな。 今まで似ていると思ったことはなかったけど、役作りの結果?
 非常に不愉快で残酷な話がずっと続くのに、シュールでちょっと笑っちゃうような描写もあり・・・「鎌で草を刈るシーン、『白いリボン』にも出てきたけど深い意味があるのか?」などヨーロッパの価値観について考えたりもできる。
 ジャックは強迫神経症で、人を殺せば殺すほど(後片付けを含めて経験値が上がるほど)症状が落ち着いてくるというのは・・・さすがに「現実のシリアルキラーではない」と思った。 ジャックの衝動は、映画を作り続けるトリアー自身が重ねられたものなのだろう。

  ハウス・ジャック・ビルト4.jpg ブルーノ・ガンツが登場するのはほぼエピローグ。 冒頭から声だけはずっと登場しているのだが。
 果てはダンテの『神曲』、地獄めぐりとてんこもり。
 トリアー映画では撮影中にいちばんひどい目に遭うのはヒロイン演じる女優さんというイメージだが、実はベテラン男優さんもひどい目に遭うほうがあたしは気になっていた。 そしたらブルーノ・ガンツもとんでもない目に遭わされており、「あぁ、彼にそんなことさせるなんて!」と何度か現実に戻ってしまった。 「役者はそれが仕事なんで」と言われてしまったらそれまでなんですが、だとしてもこんな過酷な撮影に付き合わせる必要ある? 相手はご高齢、結果的に去年亡くなっている方なんですよ! ハラハラしましたわ。
 <ジャックが建てた家>とは? 拍子抜けするほど予想通りでしたが・・・「なにを・どこで・どうやって」を逡巡する過程が必要だったのですよね、わかります。
 賛否両論というか、途中で席を立つ人の気持ちもわかります。 でもあたしは最後まで観てしまった(ブルーノ・ガンツが出てきたから余計に)。
 そしたら、最後まで観たご褒美ですか? エンディングに流れた『旅立てジャック』には大笑いしそうになった。
 ・・・あぁ、なんて壮大な悪ふざけ。
 というか、監督の悪ふざけにあたしもつきあってしまったよ、な感覚。

  ハウス・ジャック・ビルトP2.jpg 前売券特典のポストカード。
 こんなものをもらってどうしろと・・・だからあたしはいつも通りに(前売券を買わずに)メンバーズ特典で観ましたよ。 初日の入場特典は、縛られて転がっている(?)トリアー監督のポストカードだったらしい・・・やっぱ、悪ふざけじゃん。

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2019年07月02日

「いただきます」の効用

 『きのう何食べた?』の最終回を観る。 驚くのはもう三か月たってしまったのか、ということだ。
 しかしその間、このドラマの話をあたしは何人かとしており・・・他のドラマよりも明らかに多いのである。 まぁ相手はあたしの友人だというバイアスがかかっているせいもあるだろうが、こんなに周囲と盛り上がるのは、やはり珍しい。

  きのう何食べた?ドラマ7.jpg 相手の実家へのご挨拶なんて・・・緊張するよねぇ。 ケンジ、トレンチコート似合ってない!、というのも衝撃(内野さんなら着こなせるのに、そこはケンジだ!)。
 原作を読んでいる身からだと、「きっと最終回はあのエピソードだよねぇ」というのはわかっていたけど・・・「前言撤回」を使わなかったんだ!、と驚く。 まぁ、あのドラマ世界の空間に罵詈雑言を浴びせる若者の存在は似つかわしくないから、そこは原作通りにしなくていいところなのかもしれない(原作発表時とは時間がたっているし、ということもあり)。 むしろシロさんにああ答えさせたことで、ケンジへのプロポーズにも聞こえる!
 原作はずっと続いているものだから淡々と、非ドラマティックを貫いているが、ドラマはやはり終わりがあるので、もともとのキャラよりも全体的に熱量が高い。 だから物語も盛り上がりができてしまう。 それはやはり二次元と三次元の違いだし、どんなに原作に寄せようとしても違いは出てしまうのだから、その違いをどう面白くして盛り上げるかに力を入れた方がいい。
 それがわかるから、視聴者はこんなに熱狂したのではないだろうか。 前半はケンジの、内野さんのキュートさにどうしても目が行ってしまうが、後半になるにつれシロさん、西島さんのうまさがじわじわ染みてきた。 むしろ、こういう西島さんが観たかった!、という感じ。ちょっと間が抜けているというか、「ハンサムなのに残念なキャラ」のほうが似合うのに!、と前々から思っていたのだ(なのに『MOZU』とかのイメージが・・・)。 シロさんにはまるのが西島さんというよりも、西島さんに合う役がちょうどシロさんだった、という感じか。 だからあたしの中では原作とドラマは微妙に切り離されているのかもしれない。
 それにしても西島さんは何きっかけでブレイクした人なのか。 あたしは2000年前後のインディ映画に3〜6番手ぐらいで出ていたイメージがあり、世間的には「顔は見たことがあるが名前は知らない」感じらしいと思っていた・・・『サヨナライツカ』にはひそかに西島ファンが行ってたという噂は聞いてたけど、世間的にそこまでではなかったような(今だったらどれだけ評判になったことか)。 『ストロベリーナイト』なのかしら?(そういえば菊やんもちょっとかわいいところがあった)

  きのう何食べた?ドラマ6.jpg 4人の食卓、楽しすぎ。
 小日向さんとジルベールのカップルも減殺の基本を踏襲しながら独自変化を遂げている。 これはこれであり!、と思えるのは原作(というか演じる人物本人への)敬意、リスペクトがあるからだろう。 特にジルベール・ワタル、育てがいのありそうなキャラだし。
 あぁ、これは是非、定期的に帰ってきてもらって、「リアルタイムに生きているシロさんとケンジ、その他のみなさま」を見せていただかないと!、と切に感じるのであります。

ラベル:ドラマ
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2019年07月01日

NEW CONSTELLATION/Toad The Wet Sprocket

 注文をしてから3週間ほどして、「ただいま在庫確保に努めております」というメールがきたけどそれ以降音沙汰がない。
 うむ、これは「結局、見つかりませんでした」と向こうからキャンセルされるパターンだろうか、と過去の幾度かの経験から感じていましたが・・・突如、「出荷しました」とのメールが届いた。 えっ、見つかったんですか?!、と、あきらめかけていたのでうれしさよりも先に驚きが。
 You TubeのToad公式チャンネルでアルバム全曲公開されているので、聴けないことはないんだけどさ、曲と曲の間にCMがはいったり、アルバムとして聞くよりも間が長いからそれが気になって・・・やはり<アルバム>という形で聴きたいのでございますよ。

  Toad the Wet Sprocket ニュー・コンセレーション.jpg 紙ジャケット仕様。
 でも歌詞カードがなかった・・・残念。 ネット上で検索はできるので、それで見ろということか。

 全11曲、約45分といういつも通りの収録時間。 だいたい3分台の曲が多いのですが、今回4分台が4曲あり、しかもラストナンバー“Enough”は6分13秒という彼らにしては大作!
 グレンのソロ作と違って、やはりベースとドラムが入るとバンドの音になる。 特にベースって大事だな!、としみじみ思うようになりましたよ・・・。 あたしはバンドとしてのToad The Wet Sprocketが好きなんだよなぁということも。 ロックだけどメロディアスで、詩も含めて美しさがある。
 一曲目“New Constellation”は幕開けにふさわしくアップなナンバー。 かつての曲にはすごく疾走感があると思っていたのだけれど、それは何かに追われている・どこかに逃げるみたいな要素があったのかな、というくらいこの曲は余裕がある。 なんだろう、やはりいい意味で年を重ねたのかな。
 そしてあの“California Wasted”、「いかにもトード!」な“The Moment”と・・・いわゆる「全曲捨て曲なし」のやつなんですけど!
 特に10曲目“The Eye”は、「これ、『コールドケース』のクロージングナンバーに使いたくなる」感じの、ミディアムテンポから始まってサビがすごくエモーショナルな刺さる曲。

  

 で、その次が大バラードの“Enough”ですよ。 なに、この流れ! 刺さりまくりなんですけど!
 そんなわけでずっとリピートで聴いてしまっています。 このアルバム、今後一生聴き続けちゃうんだろうな、という気がしています。

ラベル:洋楽
posted by かしこん at 23:59| Comment(0) | Music! | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする